リアル・ハンティング・ワールド

稲村イナホ

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第一章 惑星ガイノス開拓計画

リョースケの憂鬱

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■ 宇宙歴834年の地球国家における諸問題その1

・ヒューマノイド難民問題

 その卓越した技術で人間と違わぬ外見と民族性取り入れ、世界でも最高峰の人工知能を搭載したヒューマノイドがジャパンで誕生した(このニュースが流れた時『また日本がやりやがった』と海外からいつもの反応が上がった)。

これを機に世界規模でヒューマノイドブームが勃発、20年程で安価にヒューマノイドが生産されるようになる。
 
 それ以前から単純な労働はロボットが受け持つようになっていたが、高性能人工知能を搭載したヒューマノイドの大量生産は加速度的に人間の仕事を奪っていった。

 そこから100年の間に社会に溶け込んだヒューマノイド達にも人権が認められるようになるが「人間に労働を!」の声を掲げる各国の団体は各地でヒューマノイドを弾圧。

 これにより、ヒューマノイド難民問題に発展する。

 各地を追われたヒューマノイドは、そのブームの火付け役でもあり、ロボット先進国として理解のあるジャパンに難民が押し寄せた。

 安価な労働力のヒューマノイドをしかしジャパンは嬉々として受け入れる。
 各企業はこぞってヒューマノイドを雇用していった(風俗産業も大いに喜んだ)。

 ヒューマノイド弾圧団体に対し世界政府は活動を自粛するよう尽力するものの、その効果は微々たるものだった。

 年々難民の数は増えいき、受け入れ先の企業も限界を迎え、ついには一般家庭に一人以上はヒューマノイドを迎え入れるよう義務付けられる。

 その代わりに難民を迎え入れる家庭には、諸外国(宇宙歴発足以来、地球は一つの国家になったが、ここでは便宜上外国と呼ぶ)政府とジャパン政府から援助が支払われるよう取り決められた。

 更にそれらヒューマノイド達を受け入れ先の人間に代わり、労働に出すことで誰でもニートライフを満喫することが出来ることとなった。

 しかしながら、ヒューマノイド難民問題が解決に至った訳ではなかった。


******


 凄まじいまでの発達を遂げた人工知能は、人類にとって長年の夢であった量子コンピューターを完成させる。

 これによって目覚ましい発展を遂げた分野はいくつもあるが、特に人類に貢献したのはナノテクノロジーとバイオテクノロジーである。

 エネルギー問題は完璧なまでのリサイクルシステムで解決に導き、画期的な食材の製造方法が確立され食糧問題は過去のものとなった。

 それらが人類にもたらした恩恵は簡単にいえば光熱費と食費が驚く程安くなったということである。

 また、二つの技術の発展は人間の寿命を果てしなく伸ばすことにも成功する。
 本人の遺伝子情報を元に作られる人工細胞で人体の各パーツを交換し、身体を巡回するナノロボットは病気の異常を早期発見し、すぐさま報告するようプログラムされている。

 生きようと思えば何百年でも生きていられる時代に突入した。

 また、高度に発達した超電導技術は誰しもが一度は空想したことがあるだろう空飛ぶ車「フライングカー」を現実のものとした。
 スーパークラウドシステムで「誰でも、安全、高速」に目的地まで運んでくれる「スマートウェイ」の構築も難なくクリアし、都市間の移動は容易く行われている。


 こうして堕落するには十二分な環境が出来上がり、ニートにとってジャパンはびっくりする程ユートピアな国になっていったのである。


 つまり何が言いたいかというと、この一言に尽きる。


「暇だ」


 俺は木村リョースケ、今何歳だか忘れたけど、多分200年以上生きてると思う。

 ヒューマノイド難民を受け入れてからこっち夢のニートライフ(正確には違うけど、似たようなもんだ)を満喫していたけど、ぶっちゃけもう20年位前からこの生活に飽きていた。

 それでも、やることがないから今日も今日とてヴァーチャルリアリティの世界にダイブしている。


 ちなみにこのゲームは俺達が運営しているゲームだ。
 と、言っても企画した後はほぼ全部ヒューマノイドの人工知能が開発、運営している。

 この時代、ジャパンの人間がする労働と言えば、「アイデアを出す」これだけだ。

 ゲームの場合、アイデアを出した人間の趣味思考を読み取った人工知能が作っていってくれる。

 アイデアを出す→人工知能にお任せ。
 後は自分好みのゲームが自動的にアップデートされていく。

 ほんの少しの開発費とサーバー代さえ払えば誰でもゲームを運営することが出来ちゃうのである。

 当然のことながら人気が出るかどうかはゲームの出来次第だ。

 俺達の作ったゲーム「ハンティング・ワールド」はジャンルでいえば所謂「狩りゲー」である。

 魔法や必殺技の類は一切なく、武器と罠、己の五体と頭を使ってモンスターをハントするゲームだ。
 ファンタジーなVRMMORPGに飽きたメンバーが集まって作った。

 大自然の中を探索して、モンスターを狩猟する。言ってしまえばこれだけなのだが、シンプルなだけに奥は深く、通好みの高難易度と相まって人気はかなりある。

 アクティブユーザーは世界で五位前後をうろちょろしている感じかな?

 だから、そこそこの収益をあげているらしいよ、うちの会社は。

 まあ、あまりその辺は気にしていない。自分達が楽しめればそれでいいからね!


 そんな訳で現在、ギルドの酒場でパーティーメンバーとテーブルを囲んでいる。

 「まあ確かに。このゲームももう、やることやった感があるよな」

 俺と向かい合った位置で欠伸をしているこのゴツい黒人は、マイク・バカラック。

 随分前から一緒にプレイしている相棒だ。

 マイクとは別のゲームをやっている時に出会った。

 それまではソロで楽しんでたけど、ある時たまたまパーティーを組んでそのまま親友になったのである。

 日本のアニメや文化が昔から好きらしく、共通の話で大いに盛り上がった。

 何より連携プレーを最初からすんなりこなせたのが良かった、お互いに「お、コイツやるな!」ってな感じで親友になっていった。

 黒人でスキンヘッドのゴツい見た目だから一見怖そうに見えるけど、威圧感はなくノリが良いナイスガイだ。

 「次のアップデートいつだっけ?リョースケ」

 俺の隣で淡々とビールを飲んでいらっしゃるこの美人さんは、ミラこと、ミランダ・フレイショーアー。

 マイクより後に知り合ったおねーさんだ。
 CMに出てきそうな美しいブロンドの髪をポニーテールにまとめている。
 綺麗な緑色の瞳はいつ見ても神秘的だ。

 シュッとしたモデル体型だが、キュッと上がった丸いナイスなお尻が俺の中で国宝に指定されている。

 クールビューティーという言葉が正に当てはまる訳だが、デレる時は超デレる。それがまた堪らなく可愛い。
 ツンデレクイーンである。

「ハニー、前回のアップデートが3ヶ月前だよ?つまりまだまだ先ってことさ」

 この金髪碧眼のスカしたイケメン野郎はロイ・ホーリー。
 パーティーメンバーの中で一番の高身長だが、アメフト選手のような身体を生かして前衛を担当している。

 見たまんまナルシストキャラだが、実はすげー奴だ。ロイの中身を知って尊敬しない奴はいないだろう。

 ちなみにミランダに首ったけ(死語)だが、振られまくっている。

「誰がハニーだ、死ね…あら失礼ついつい本音が。コホン…そろそろその腐った脳を新品に交換して、初期化された方がよろしいのではなくて?ロイ(ニッコリ」

「あらあらミラったら、それどっちにしろロイが死んじゃうわね♪」

 ミラの暴言を楽しんでいるこの「わがままグラマラスボディ」の持ち主は、バニーことヴァネッサ・ウッズ。
 
 バインバインのGカップおっぱいをテーブルに乗せてビールを呑んでいる。
 
「あの谷間の深さを知ることが出来るなら
窒息死しても構わん!」

 そう言いながら、バニーのデカルチャーに飛び込もうとした男は数知れず。

 いずれも窒息死する前に撲殺されたとか何とか…

 しかし何よりも男達のリビドーを刺激するのはバニーの身体ではなく、知的な眼鏡の奥にある蠱惑的な瞳である。


 巨乳で眼鏡…

 …
 
 …ふぅ

 
 あ、そうそう。このゲームは身長、体重、性別、顔は過度に変更出来ない設定にしている。
 バイオテクノロジーのおかげで自分の好きな身体に変更出来る今の時代、わざわざゲーム内で変える人もいないだろうから(付け加えるとその倫理的問題はさておき、性別の変更も可能だ)。

 なので、ミラのお尻もバニーのおっぱいも現実とほぼ変わりない。

 男が興奮するのもやむなし。うん、仕方ない。

「ロイの言う通り、アップデートはまだまだ先。ふー、このままじゃ廃人になっちまうぜ」

「「「「とっくの昔に廃人だから」」」」

「お、そうだな」

 メンバーから同時に心地良いツッコミが入ったところで俺は立ちがある。

「んじゃ、今日は解散しますか」

「おう、じゃあな皆」

 マイクも立ち上がり、ログアウトした。

「武器の完成は2日後だってハセガワが言ってたからまたその時だね。では諸君、アデュー!」

 流石ロイ、気障なログアウトだぜ。

「リョースケ、戻ったら家に行くわね」

「いいよー、リアルでも呑むの?」

「呑んだ後グヘヘな展開にすんだよ、察しろよ」

「あ、あのミラさん?嬉しいンスけど…バニーのいる前で少しストレート過ぎやしませんかね?」

「あらー♪どうせなら私も混ぜてミラ」

「混ぜてって…ハハッ、冗談が過ぎるなバニ「いいわよ。リョースケ今日は3Pね、ハッスルしなさい」

「え?いいの?何?一話目からこの超展開」

「何よ?最高のお尻と最高のおっぱいを好きにしていいのよ?胸が熱くなるでしょ?」

「ちょっと栄養ドリンク買ってくる」


 ログアウトした後、俺のサムライソードが宇宙に向かって吼えていたのは仕方のないことです。


 
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