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11.10代目の記録

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翌日、祝詞の雰囲気が一変した。理人に対して放たれる祝詞の殺気は、昨日とは比べものにならないほど強烈だった。目に見えない冷たい圧力が場を包み込み、空気が張り詰める。

理人はその殺気を感じ取りながらも、冷静に微笑んでいた。

「良い殺気です。」

その言葉に祝詞はさらに殺意を高めた。心の底から湧き上がる憎しみと嫉妬を解放し、全力で立ち向かう覚悟を決めた。理人の空気を凍らせる技に対処するため、祝詞は自身が氷の神とさらに同化する必要があることを悟った。神は人間とは違い、呼吸をしない。神を人間と同じように考えることが間違いだったのだ。

祝詞は深く息を吸い込み、心を落ち着けて神の力と一体化する感覚を意識した。神の本質を理解することで、理人の技を防げることがわかってきた。氷の神だからといって氷だけが使えるわけではない。氷柱を飛ばす時には、何らかの運動エネルギーが発生しており、そのエネルギーも神自身が持つものだと理解した。

祝詞は構えを取り、理人に向かって突進した。彼の目には鋭い光が宿り、全身が神の力に満たされているのを感じた。彼は手をかざし、特定の範囲内の時間を一時的に凍結させる技、「時凍結の領域」を発動した。

次の瞬間、部屋の中の空気が一変した。祝詞の手から冷気が広がり、その範囲内がまるで時間が止まったかのように凍りついた。理人は動きを止められ、体温が急速に低下していった。領域内のすべてが絶対零度に近い温度に凍りつき、動きを封じられた理人は、その凍結の影響を全身で感じ取っていた。

理人の体は動かなくなり、凍結によってその場に固定された。祝詞はその様子を見逃さず、手を挙げて次の技を発動した。

「永久氷槍!」

彼の手から放たれた無数の氷の槍が、一斉に理人に向かって飛び出した。

氷の槍が理人に突き刺さった瞬間、全てが凍りつき、理人は動かなくなった。しかし、その瞬間、時間が巻き戻り、祝詞は試合開始前の状態に戻されていた。彼は息を整えながら、驚きと達成感を感じていた。

「見事です。とうとう私を倒せましたね。ですが、まぐれかもしれません。連勝できるまで続けましょう。」

祝詞は無言で頷き、再び構えを取った。

戦いが再び始まった。祝詞は冷静に「時凍結の領域」を発動し、冷気が広がる。理人の動きを封じようとするが、彼はさらに鋭い動きで対抗してきた。

祝詞は冷気を操り、理人の動きを封じようとする。その冷気はまるで時間を凍結させるかのように広がり、理人先生の動きが一瞬止まる。その瞬間を見逃さず、祝詞は「永久氷槍」を放ち、無数の氷の槍が理人先生に向かって飛び出した。

理人は冷静に防御態勢を整え、氷槍の一部を避けることに成功した。祝詞はその動きに驚きながらも、さらに集中力を高めた。

祝詞は次の技を準備し、「絶対零度の氷檻」を発動させた。理人の周囲に絶対零度の氷の檻が現れ、彼を閉じ込めた。檻の内部は急激に温度が下がり、理人先生は動きを封じられた。しかし、理人先生はその檻を破壊する術を持っており、一瞬のうちに脱出した。

次に祝詞は「氷の迷宮」を生成した。地面が震え、巨大な氷の迷宮が出現した。理人は迷宮内を歩き回り、祝詞の攻撃を避けながら進んでいたが、迷宮の壁は移動し続け、彼を混乱させた。

祝詞は迷宮の中で次の技、「氷結大津波」を発動した。巨大な氷の津波が迷宮内を押し寄せ、理人を包み込んだ。津波は圧倒的な速さと冷気を伴い、理人を凍結させた。

最後に、祝詞は「永久氷槍」を再び放ち、無数の氷の槍が理人に向かって飛び出した。理人はその攻撃を受け止めることができず、凍結された。

「見事だ。試合開始直後、弱い技で様子を見ようと思ってはいけないよ。圧倒的な力で最初からねじ伏せたほうがいい。」

理人は祝詞の勝利を称え、10代目のプレイヤーの記録の本を手渡した。その本は他の記録よりも遥かに分厚かった。祝詞は少し中を開き、理人について書かれている箇所を見つけた。

「これ…は…。どういうことですか?」

「そういうことだよ。もうお気づきかと思いますが、私が10代目のプレイヤーでした。」

「そんな…はず。だってこれは平安時代に書かれたものですよ?」

「あぁ、そうだね。」

「もしかして、生き残った人は不老不死にでもなるんですか?」

「そんな、まさか。私が望んだんです。不老不死を。」

祝詞はその言葉に驚愕し、理人先生の顔を見つめた。彼の穏やかな表情と共に、その背後に隠された深い歴史と秘密が垣間見えた。

「あなたが…不老不死を…?」

祝詞はその事実を受け止めるのに時間がかかった。

「そうです。九神本懐で勝利した者には、一つだけ願いを叶える権利が与えられる。その時、私は不老不死を望みました。」

祝詞はその言葉に深く考え込んだ。

「それがあなたの望みだったんですね…。」

理人先生は静かに頷いた。

「当時はそうでした。この先のことは祝詞君が本懐を遂げた後にお話しします。それまでどうか、死なないで下さいね。」

彼の目には、深い切なさが宿っていた。

祝詞はその表情に驚きとともに、理人先生が背負っている重荷の大きさを感じた。

「わかりました。約束します。」

「君ならきっと、本懐を遂げることができる。」

その日、祝詞は理人の過去とその願いを知り、自分の使命の重さを改めて感じた。理人から渡された10代目の記録を手に取り、ページをめくるたびに驚愕と畏怖が募った。そこには残虐な人の命の奪い方が詳細に記されていた。あんなに優しそうな理人先生が本当にこれをやってのけてきたのか、不思議でならなかった。

記録を読み進めるうちに、祝詞は一つの恐るべき事実に気付いた。全ての記録の中で、雷の神が一番厄介だということだった。雷の速さは目で見てからでは避けることができず、理人の記録にも雷を避けることがどれほど困難かが詳述されていた。雷の攻撃を回避するためには、常に動き続けることが求められ、その速さは「既にそこにいるのと同じ」と記されていた。

祝詞はその記述に驚きとともに焦燥感を覚えた。まさか雷の速さに適応する速さを身につけなければならないなんて、思いもしなかった。しかし、それが現実であり、彼が勝利するためには避けられない試練だった。

祝詞は記録を閉じ、深く息を吸い込んだ。

――まだまだ修行がいりそうだ。

彼は心の中で誓いを新たにし、さらなる修行に身を投じる決意を固めた。雷の速さに適応するために、今まで以上の努力を惜しまない覚悟を決めた。

その日から、祝詞の修行は一段と厳しくなり、身体と精神は次第に鍛えられていった。彼は雷の速さに適応するための訓練を始め、常に動き続けることを意識して技術を磨いた。

理人先生はその修行に付き合ってくれた。悔しいことに、彼の知識と経験は圧倒的であり、雷について熱心に教えてくれた。

祝詞は息を切らしながらも、一心不乱に理人の指導に従った。汗が滴り落ち、筋肉が悲鳴を上げる中で、ひたすら動き続けた。理人は無言で祝詞の動きを観察し、時折示す手の動きや視線だけで指導を続けた。

少しずつ、祝詞は速さと正確さを身につけていった。雷の速さに対応するための技術は、瞬間的な反応と持続的な動きを必要とした。祝詞はそれを体に染み込ませるように練習を重ねた。

時折、理人は祝詞に模擬戦を挑んだ。理人の攻撃は速く、祝詞はそれを避けることに全神経を集中させた。何度も倒れ、何度も立ち上がりながら、祝詞は理人の攻撃に対応する術を学んでいった。
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