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第十二話【い、色々危険ですわぁ~~~~~~~~~!!!】
しおりを挟む月明りに照らされながらヒスイとエルメラルダはベッドの上に座っていた。
「ヒスイとお兄様が同級生で友達だっただなんて知らなかったなぁ。」とニコニコしながら呟くエルメラルダ。
「まぁ…ロイは世界で唯一借りのある人間ですね。」
「借り?お兄様に何か借りがあるの?」
「そこそこ大きな借りがあります。学生の頃はまだ、自分が時期皇帝になる可能性が少しだけ残っていて、ロイは自分の宰相として働く予定でした。それを自分が踏みにじるかのように潰してしまいました。自分の為にもロイの為にも愚かだと思ったんです。ですが、宰相になるべくして育てあげられたロイには悪い事をしてしまったなと思っています。なのに、とても大切にしている妹まで取ろうとしてしまって。あ、なんだか自分がクズ男な気がしてきました。」と無気力に笑うヒスイ。
「あっはは。超最難関攻略不可能な天才王子が自分がクズ男だっていってるの面白すぎる。」とケタケタお腹を抱えて笑うエルメラルダ。
「ははっ。なんです?その変な異名は。」
「ふふっ。ヒスイルートは色んな人が全パターン試してBADエンドになってるから多分実装されてないんだと思う。どうしてヒスイは死んでしまうの?」
「生に喜びを見出せませんでしたね。ヒトもムシも動物も生き物である以上全て一緒なんです。寿命が短いか長いか…やってる事は一緒です。だから…動物やムシで人生の縮図を見てしまってやる気が失せました。だから…タイミングがあれば死んでしまおうって少し思ってたところもあるので。死は未体験ですし。」と怖いくらい真顔で人差し指を立てて力説するヒスイ。
「とんでもなく恐ろしい事を考えてるね。」と呆れるエルメラルダ。
「さ、夜更かしはお肌に悪そうなので、お暇します。ゆっくり寝て下さい。」と言ってヒスイは立ち上がる。
「うん、おやすみ!今日はありがとね。」と言って微笑むエルメラルダ。
「いえ、此方こそ。今はそれなりに生きてて楽しいですよ。」と言って部屋を出るヒスイ。
ヒスイは自室に入った。
「何処へ行かれてたんですか!お妃様にバレたらどうするおつもりで!?」と執事のオミドーはオドオドしていた。
「バレるわけがない。こんなに巧妙に作った人形がいるんですから。最高傑作ですよ。」と言ってヒスイは椅子に座る自分にそっくりな人形の肩に手をかける。
ヒスイの身勝手な行動にやれやれと思うオミドー。
コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
ヒスイは魔法で自分そっくりな人形を素早く隠してから「どうぞ。」と返事をする。
するとドアが開いて第三王子のミロードが入ってきた。ミロードは長いキラキラした金髪を左側に集めてくくり、前に垂らしている。そして碧眼…この碧眼は若干紫がかっていた。
「え?兄上?」とヒスイは驚いてしまった。一番ヒスイに会いに来ないのが第三王子ミロードだからだ。
「なんだい?そのお化けでも見るかのような目で僕を見て。お母様からの伝言だ。明日、早朝に部屋までくるようにだとさ。お前門限破ったんだって?サルバトーレ侯爵家の坊ちゃんからのタレコミだそうだ。」と壁にもたれかかって楽な姿勢をとるミロード。
(やっぱ、もっとこき使っておくべきだったなぁー…)と心の中で呟くヒスイ。
「了解しました。」
「ヒスイが起きてるなんてねぇ。珍しいもんだねぇ。」と溜息をつくかのような話し方をするミロード。
「そうですね。幸せにしたい人ができてしまったので、当たり前です。」
「カッコイイ事いうねぇ。」
「こんなところで暇を潰してて良いんですか?キャサリンの仕事が終わる時間ですよ。」と時計を見ながら話すヒスイ。
「相変わらずの情報網で恐いな。的確に僕が知りたい事を言って部屋から追い出す。」と冷や汗をかくミロード。
「別に。それでは良い夜を。」とヒスイが言えばミロードは「わかったよ。おやすみ。」と言って部屋を出た。
翌朝、皇后の部屋を訪ねるヒスイ。
コンコンとノックし「母上、ヒスイです。」と言えば「入りなさい。」と返事が返ってきて部屋の中へ入った。
(昔から…昔から母上の事が苦手だった。この咽かえるような魅惑の香が嫌いで嫌いで仕方がない。自分にだけ聖属性の魅了の力を使ってくる。気を抜くと意識を持っていかれそうになる。)
「母上。お呼びでしょうか。」とヒスイは挑戦的な笑みを浮かべて皇后の前で膝まづく。
一方エルメラルダは。
絶賛、鬼の社交練習をさせられていた。今日のエルメラルダはツインテールをやめて、ツヤツヤの黒髪をおろしていて、代わりにエメラルドで作られたカチューシャをかけている。ドレスは淡い緑色の花柄。全てヒスイセレクトだ。
「よろしいですか?目上の相手に対し、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままあいさつをする。」と言って実演してみせる女性は風属性の名門、エレイン・リンバルド公爵令嬢だ。灰色の綺麗な長い髪に灰色の瞳。可愛らしい淡いピンク色の花がいっぱいついたカチューシャに桃色のドレス。姿勢からしても、とても淑女らしい女性だ。
エルメラルダは教えられた通り実演してみる。とてもカチコチでどこかぎこちない。
「あら、高熱で倒れられて一部記憶喪失になったとお聞きしていましたが…ここまで酷いなんて。」とエレインに心底心配そうに見つめられるエルメラルダ。
(悪かったわねぇ…。酷くて。記憶は全部あるけれども!!)
「今日は滑らかに挨拶ができるように練習を致しましょう。」
「よろしくお願いします。」と申し訳なさそうに頭を下げるエルメラルダ。
「まぁ……本当に記憶を無くされて…。」と涙ぐむエレイン。
(悪かったわねぇ!!今まで癇癪持ってて!!)と自然に心の中で呟いてしまうエルメラルダ。
練習はお昼頃まで続き、なんとか滑らかに挨拶できるようになった。
「ごきげんよう。エレイン様。」と見事に綺麗な挨拶をしてみせるエルメラルダ。
「まぁ!素敵ですわ。丁度ランチの時間ですし、今日の授業はここまでに致しましょう。」と美しく微笑むエレイン。それに眩しさを感じるエルメラルダは(がんばろう…)と決意するのであった。
エレインが帰った後、昼食をとろうと部屋のドアノブに手をかければ影に手首を掴まれて、強制的に厨房にワープした。
「うわっ!びっくりしたぁ。!」と言えば、それはこっちのセリフですと厨房にいるコックやメイドにいわれてしまう。
「ですよねぇ…お昼をもらいにきました。」とエルメラルダが言えば「ヒスイ様は一緒じゃないのですか?」と聞かれた。
「そういえばそうだね。ヒスイ大丈夫かな?王妃様に呼ばれたみたいだけど…。」
厨房のドアがガチャリ音をして開かれて第三王子のミロードが入ってきた。
「あ。いたいた。ちょっと借りていくよ。」とツカツカとエルメラルダの前まで来てお姫様抱っこをする。
「え?ちょっ!?」と焦るエルメラルダだが、一瞬のうちにワープを使われてしまう。
「うわぁ!!びっくりしたぁ!!」と風景が変わり、本日二度目のビックリをかますエルメラルダ。
「驚いたねぇ。本当に中身が変わってしまったのかな?」と少し戸惑うミロード。
エルメラルダはゆっくりと地面に降ろされた。
「どこですか?ここ。」と辺りを見渡すエルメラルダ。ドレスを着た女性や家門の正装を着た人達が賑わっており、近くに城が見えた。
「ここは城下町だよ。デートしませんか?エルメラルダ嬢。」と丁寧にエスコートのポーズをとるミロード。
「いいえ、帰ります。影が…ってあれ!?」といつもピッタリくっついてくれている影が側にいなかった。
「ワープってのは基本的に雷の属性を使うんだけど、一瞬だけ死角が生まれるんだ。僕は影がついてくるのを見越して2、3度別の地へワープして巻いたからね。全属性の中でも雷属性が大得意なんだ。」と丁寧に説明するミロード。
「…仕方ありませんね。私は魔法も使えませんし。影が追い付くまでですよ?」と言い、ミロードの手を取るエルメラルダ。
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