4 / 31
第四話【お料理ですわぁ~~~~~~!!】
しおりを挟む
コソコソ、ヒソヒソとメイドや執事達、騎士達の間で噂になっていた。
「そうなのよ!あの第四王子が!」
「サルバトーレ侯爵令嬢に微笑むんですって!」
「とっても幸せそうなのよ!」
「今日は何をしてるのかしら。」
「今日は確かサルバトーレ侯爵令嬢がヒスイ殿下に料理を振る舞う日なんですって!!」
とメイド達が立ち話していると、遠くから新たなメイドが一人走ってきた。
「たたた、大変よ!!厨房から嗅いだこともないくらい、とんでもなく良い匂いが!!今大騒ぎになってて!」と立ち話をしている噂好きのメイド達に告げる。
「なんですって!!!」
メイドの団体は急いで厨房へ向かうのだった。
さて、厨房ではさっそくエルメラルダが取り寄せた材料で調味料を作ってから料理を作っていた。
「すみませんねぇ。大鍋で作らせてしまって。」とヒスイは少しだけ申し訳なさそうにしつつも新たに作られた調味料に興味津々といった感じでじっくり調味料が入った小瓶を見つめる。
ヒスイは超天才だ。だからこそ料理だって自分でできる。だけど調味料という発想は一切なかった。天才なのに。だけど、エルメラルダは超天才のヒスイを上回る発想を提示してくる。自分は世界をクリアしていると思っていたからこそ刺激的すぎてたまらないようだった。
「いえ、ここの食事では満足できなかったんで、ありがたいです。」と前世を思い出してしまってからというもの食事が喉を通り辛くなっていたエルメラルダは少し痩せていた。エルメラルダの記憶もあるからこそ塩だけの味付けの食事に飽きてしまっていた。
「うう。。ずみ゛ま゛ぜん゛・・・。」と涙を流すのはコックのエドウィル。程よいマッチョに金髪碧眼のイケメンコック。必死にメモをとりながらエルメラルダの調理法を我が物にしようとしていた。
「まぁ、まぁ。泣かないで下さい。この国は発展途中なんです。これから学んでいけばいいんです。自分もつい最近まで国を発展させようなんて微塵も考えてなかったもので。」とヒスイは一応エドウィルを慰めた。
「どうして急に発展させようと思ったんです?」とエドウィルは涙を拭きながら問う。
「どうしてって…エルの為に・・・。」と口が勝手に動いて喋るのを止めたヒスイ。ふと口元を抑えた。
(自分はどうしてしまった?何で他人の為に。それは何千、何万回と考えて愚行という答えがでてたはずなのに。今自分はエルの為にって言った。どうして…どうして、いつものように寝ていられないのだろうか。それにエルの側を片時も離れたくない…これって…。)
「王子?」
ヒスイは早くも自分がエルメラルダに恋をしているかもしれないという事に気が付いた。エルメラルダには何不自由なく過ごしてほしいという気持ちから今の行動に繋がっているのかもしれないと瞬時に答えまでたどり着いた。そしてそれは出会ってエルメラルダが前世の記憶を取り戻した確信を持ったあの時から、本能的に独占欲が勝ち、素早く婚約までした。
座っていたヒスイは立ち上がってエルメラルダが立っているコンロ前へ行き、エルメラルダの肩に手をおいた。
「・・・エル、少し確認しても良いですか?」
「んー?」と味見をしながら味付けしていくエルメラルダ。
「自分は攻略最難関の不可能なキャラなんですよね?」
「うん。だって攻略サイトでも未実装?って書かれてたくらいだから誰も攻略できなかったはず。」
(ヒスイ王子って、どうしてそんな事気にするんだろ。)と考えてつつも作っていた牛乳で作ったスープが出来上がった。
「よし、できたよ!座って座って!」と笑みを浮かべるエルメラルダに少しキュンとしてしまうヒスイ。
ヒスイは少し顔を赤らめながら「あ、はい。」と返事をして席につく。
コックのエドウィル、それから廊下で覗いていたメイドや騎士や執事達も呼んで全員に料理を出すエルメラルダ。とても慣れた手際の良さだ。もともと大勢に食べさせる為につくったのか、お皿に料理を盛る時もルーティン作業のような速さで盛り付けていった。
「白いスープがシチューです。タマゴで包んであるのはオムライスです。ケチャップを上にかけてどうぞ!」と言ってオムライスと呼ばれるものの皿の隣に赤いドロっとした液体が小さなカップに入っていた。
皆はシチューからスプーンですくって一口。まるで着ている服がはじけ飛んでしまうかのようなくらいの爆発的な旨さが口の中に広がったようだ。ガツガツと食べ始めるみんな。
「お゛でい゛ぎでる゛意味あ゛り゛ま゛ずが?」と鼻水を垂らし泣きながら話すエドウィル。せっかくのイケメンが台無しだ。
「あります、あります。次からはこれをアンタが作るんです。」とヒスイが再び慰める。これは流石にかわいそうだと超天才であるヒスイは悟り、心のケアをする。
「王子~~~!!」と泣きじゃくるエドウィル。
「沢山できるだけレシピをお渡ししますから頑張ってください。」と言ってエルメラルダは羊皮紙で作られたレシピノートをエドウィルに渡した。
「エルメラルダ様は・・・女神ですね。」と瞳をうるわせるエドウィル。
ガタンと影を落とした顔のヒスイが立ち上がった。そしてエルメラルダの胸倉を掴んで引き寄せ、強引にエルメラルダの唇に自分の唇を押し当てた。
周りから「キャーーーー!!」という悲鳴が聞こえた。
ゆっくりと唇を離したが、名残惜しく思い、もう一当てしようとすれば手が挟まった。
「王子・・・人前です。」と声を震わせながら真っ赤な顔をして言うエルメラルダ。
パッと手を離して、椅子に座り、再びシチューをすすった。
「すみません、あまりの美味しさについ・・・。」と目元に影を落とすヒスイ。
「え?あぁ!海外の挨拶みたいなものね!なるほど!」と手で顔を仰ぎながら座るエルメラルダ。
ヒスイは完食した後、公務を理由に早めに部屋に帰った。公務などここ数年まともにやった事等なかった。
何事にもやる気がなく、何を食べても興味が湧かず、今日まで何もしてこなかった。
ところが一人の元第一王子のストーカーと出会って人生が180度変わって・・・山ってこんなに綺麗だっけ・・・空ってこんなに青かったっけ・・・人に色ってついてたっけ・・・といった具合に全てに色を持ち出した。こんな表現は主に恋愛小説に多くて、つまり間違えなくこれは恋。
早々に攻略されてしまった?…でも、あの様子じゃエルメラルダはそこまで自分の事が好きじゃない・・・どうすればエルメラルダを落とせる?等とヒスイは悶々と一人、自室で考えていた。
一方、厨房に取り残されているエルメラルダはメイドや執事や騎士等から質問攻めにあっていた。
「エルメラルダ様!!あの第四王子様とはどのようにして婚約まで至ったのでしょう?」とメイドが興奮気味にエルメラルダに寄っていた。
「こら!そんな聞き方エルメルダ様に無礼です!」と怒りつつもチラリとエルメラルダを横目でみるメイド長。
「たまたま・・・第一王子様の開くお茶会へ行こうとした時に、倒れてしまって…、そこに偶然通りかかった第四王子様に助けて頂きました。そこからでしょうか…。」とエルメラルダ。
「きっと殿下の一目惚れだったのね!!」とメイド達が騒ぐ。
「そんな事より、料理についてもっと教えてくれ!!納品された食材の使い方も!!」とメイド達を押しのけてコックのエドウィルが目を輝かせて入ってきた。
「はい!」
エルメラルダはしばらくエドウィルに料理をみっちりと教えるのだった。
コンコンと第四王子の部屋がノックされる。
「どうぞ。」と返事が来たので中に入るエルメラルダ。
明かりもつけずに端っこの窓際で力なくうなだれているヒスイを見てギョッとするエルメラルダ。
「ディナーをお持ちしました。一緒にどうですか?」
「頂きます。」と力なくうなだれたままのヒスイ。
「どうしたんですか?昼間の口付けを後悔なさっているのですか?」
「いえ、それに関してむしろ・・・。エル、こっちへ。」と力なくエルメラルダを見るヒスイ。
エルメラルダは心配になってヒスイに近寄った。するとエルメラルダはまた胸倉を掴まれて後頭部を抑え込まれてキスをされてしまう。
「んんっ!!///…んっ…んふっ…んんっ///…ぷはっ!!!長いわっ!!!」とツッコミを入れて離れるエルメラルダ。ここが乙女ゲームの中だと思って行動しているエルメラルダにとってキスとかあって当たり前の存在で心臓はもちろんドキドキしているが、そこまで気にする事でもなかった。
「もう逃がさない…。」といってエルメラルダの肩をガシっと掴むヒスイ。
「こっ・・・こわっ!!第四王子まさかのメンヘラ!?いや、ヤンデレ?」と言ってオロオロしているとヒスイはエルメラルダを掴んでいた手を離してから、スッと立ち上がって、部屋の隅にある箱をガサガサと漁りだした。
「イテッ。」と一声あげて一瞬親指をみつめるが、すぐにガサガサと何かを探す事を続行し、ようやく探し終えたようでエルメラルダの元へ帰ってきた。
「何を探して…。」と言葉を発すればガチャンと音がして同時にエルメラルダは手首に冷たく重いものがかせられた事に気が付いた。
「あーあー…血がでちゃった。エル、口をあけて。」
「は?」とあまりの現状に頭が理解できずポカンと口をあけてしまうエルメラルダの口に先程切れてしまった右手親指の血を舌に塗る。
「あ゛・・・。」と女性らしからぬ声を出してしまうエルメラルダ。
「あぁ…///自分の血を…飲んでください…///」と怪しくも恍惚に笑うヒスイ。口の中に入れた親指でエルメラルダの口内を愛おしくなぞる。口を閉じるわけにもいかないエルメラルダの口からダラリと涎が垂れてしまいそれをベロリとヒスイは舐め上げる。
親指を口から抜けばプルプルと小刻みに震え、俯くエルメラルダ。
「どうしました?」
「どうしました?…じゃないでしょうが!!ご飯が冷めるってば!!逃げも隠れもしないから食べて!」
「…え、あ…え?あ、はい。」と同様するヒスイ。それもそのはずだ、今さっきキスをして手錠をかけ口の中に指を突っ込んだのだ。そこまでしたのにご飯が冷めると怒られた。通常人間がとるであろう行動からかけ離れた返しに自分がひるんでしまった。
「明かりもつけて。」と言われれば「はい。」と返事をして魔法で明かりを灯して部屋を明るくする。
エルメラルダはとても怒っていた。それに何故か脅えてしまうヒスイ。
メイドに食事の用意を整えさせて、手錠付きのエルメラルダとヒスイは席に座った。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」と冷静に真顔で質問をするエルメラルダ。
「はい。」
「何故手錠を?」
「…もう誰の目にも触れさせたくなくて…閉じ込めてしまおうかと。」
「はぁ……一体私のどこにそんな魅力が…あ…現代チート…。なるほど。王子は監禁が趣味なのですか?」
「…いえ、そんなはずは…。」
「なら、この手錠はなんですか?…頑張って答えてください。天才でしょう?」
「それは…もう逃がしたくなくて…ずっと隣に置いておきたくて…。」
「まさか…第四王子がこんな感じだなんて…。」と目を閉じてヤレヤレといった感じで左右に首をふるエルメラルダ。
「すみません…。」ヒスイはエルメラルダをガッカリさせてしまったかと思いシュンとしてしまう。
「ヒスイ王子、もっと面白い景色みたくないですか?」とエルメラルダに言われて、幻滅されたと思い落ち込んでいたヒスイは目を大きく見開いた。
「はい?」
「私ならお見せできます。最初はせっかく転生したし別の人を攻略してやろうかと思ってましたけど、バッドエンドしかクリアできなかったヒスイ王子をとことん攻略してやりたくなりました。」と、とても挑戦的な目でヒスイを見つめるエルメラルダ。
「そうなのよ!あの第四王子が!」
「サルバトーレ侯爵令嬢に微笑むんですって!」
「とっても幸せそうなのよ!」
「今日は何をしてるのかしら。」
「今日は確かサルバトーレ侯爵令嬢がヒスイ殿下に料理を振る舞う日なんですって!!」
とメイド達が立ち話していると、遠くから新たなメイドが一人走ってきた。
「たたた、大変よ!!厨房から嗅いだこともないくらい、とんでもなく良い匂いが!!今大騒ぎになってて!」と立ち話をしている噂好きのメイド達に告げる。
「なんですって!!!」
メイドの団体は急いで厨房へ向かうのだった。
さて、厨房ではさっそくエルメラルダが取り寄せた材料で調味料を作ってから料理を作っていた。
「すみませんねぇ。大鍋で作らせてしまって。」とヒスイは少しだけ申し訳なさそうにしつつも新たに作られた調味料に興味津々といった感じでじっくり調味料が入った小瓶を見つめる。
ヒスイは超天才だ。だからこそ料理だって自分でできる。だけど調味料という発想は一切なかった。天才なのに。だけど、エルメラルダは超天才のヒスイを上回る発想を提示してくる。自分は世界をクリアしていると思っていたからこそ刺激的すぎてたまらないようだった。
「いえ、ここの食事では満足できなかったんで、ありがたいです。」と前世を思い出してしまってからというもの食事が喉を通り辛くなっていたエルメラルダは少し痩せていた。エルメラルダの記憶もあるからこそ塩だけの味付けの食事に飽きてしまっていた。
「うう。。ずみ゛ま゛ぜん゛・・・。」と涙を流すのはコックのエドウィル。程よいマッチョに金髪碧眼のイケメンコック。必死にメモをとりながらエルメラルダの調理法を我が物にしようとしていた。
「まぁ、まぁ。泣かないで下さい。この国は発展途中なんです。これから学んでいけばいいんです。自分もつい最近まで国を発展させようなんて微塵も考えてなかったもので。」とヒスイは一応エドウィルを慰めた。
「どうして急に発展させようと思ったんです?」とエドウィルは涙を拭きながら問う。
「どうしてって…エルの為に・・・。」と口が勝手に動いて喋るのを止めたヒスイ。ふと口元を抑えた。
(自分はどうしてしまった?何で他人の為に。それは何千、何万回と考えて愚行という答えがでてたはずなのに。今自分はエルの為にって言った。どうして…どうして、いつものように寝ていられないのだろうか。それにエルの側を片時も離れたくない…これって…。)
「王子?」
ヒスイは早くも自分がエルメラルダに恋をしているかもしれないという事に気が付いた。エルメラルダには何不自由なく過ごしてほしいという気持ちから今の行動に繋がっているのかもしれないと瞬時に答えまでたどり着いた。そしてそれは出会ってエルメラルダが前世の記憶を取り戻した確信を持ったあの時から、本能的に独占欲が勝ち、素早く婚約までした。
座っていたヒスイは立ち上がってエルメラルダが立っているコンロ前へ行き、エルメラルダの肩に手をおいた。
「・・・エル、少し確認しても良いですか?」
「んー?」と味見をしながら味付けしていくエルメラルダ。
「自分は攻略最難関の不可能なキャラなんですよね?」
「うん。だって攻略サイトでも未実装?って書かれてたくらいだから誰も攻略できなかったはず。」
(ヒスイ王子って、どうしてそんな事気にするんだろ。)と考えてつつも作っていた牛乳で作ったスープが出来上がった。
「よし、できたよ!座って座って!」と笑みを浮かべるエルメラルダに少しキュンとしてしまうヒスイ。
ヒスイは少し顔を赤らめながら「あ、はい。」と返事をして席につく。
コックのエドウィル、それから廊下で覗いていたメイドや騎士や執事達も呼んで全員に料理を出すエルメラルダ。とても慣れた手際の良さだ。もともと大勢に食べさせる為につくったのか、お皿に料理を盛る時もルーティン作業のような速さで盛り付けていった。
「白いスープがシチューです。タマゴで包んであるのはオムライスです。ケチャップを上にかけてどうぞ!」と言ってオムライスと呼ばれるものの皿の隣に赤いドロっとした液体が小さなカップに入っていた。
皆はシチューからスプーンですくって一口。まるで着ている服がはじけ飛んでしまうかのようなくらいの爆発的な旨さが口の中に広がったようだ。ガツガツと食べ始めるみんな。
「お゛でい゛ぎでる゛意味あ゛り゛ま゛ずが?」と鼻水を垂らし泣きながら話すエドウィル。せっかくのイケメンが台無しだ。
「あります、あります。次からはこれをアンタが作るんです。」とヒスイが再び慰める。これは流石にかわいそうだと超天才であるヒスイは悟り、心のケアをする。
「王子~~~!!」と泣きじゃくるエドウィル。
「沢山できるだけレシピをお渡ししますから頑張ってください。」と言ってエルメラルダは羊皮紙で作られたレシピノートをエドウィルに渡した。
「エルメラルダ様は・・・女神ですね。」と瞳をうるわせるエドウィル。
ガタンと影を落とした顔のヒスイが立ち上がった。そしてエルメラルダの胸倉を掴んで引き寄せ、強引にエルメラルダの唇に自分の唇を押し当てた。
周りから「キャーーーー!!」という悲鳴が聞こえた。
ゆっくりと唇を離したが、名残惜しく思い、もう一当てしようとすれば手が挟まった。
「王子・・・人前です。」と声を震わせながら真っ赤な顔をして言うエルメラルダ。
パッと手を離して、椅子に座り、再びシチューをすすった。
「すみません、あまりの美味しさについ・・・。」と目元に影を落とすヒスイ。
「え?あぁ!海外の挨拶みたいなものね!なるほど!」と手で顔を仰ぎながら座るエルメラルダ。
ヒスイは完食した後、公務を理由に早めに部屋に帰った。公務などここ数年まともにやった事等なかった。
何事にもやる気がなく、何を食べても興味が湧かず、今日まで何もしてこなかった。
ところが一人の元第一王子のストーカーと出会って人生が180度変わって・・・山ってこんなに綺麗だっけ・・・空ってこんなに青かったっけ・・・人に色ってついてたっけ・・・といった具合に全てに色を持ち出した。こんな表現は主に恋愛小説に多くて、つまり間違えなくこれは恋。
早々に攻略されてしまった?…でも、あの様子じゃエルメラルダはそこまで自分の事が好きじゃない・・・どうすればエルメラルダを落とせる?等とヒスイは悶々と一人、自室で考えていた。
一方、厨房に取り残されているエルメラルダはメイドや執事や騎士等から質問攻めにあっていた。
「エルメラルダ様!!あの第四王子様とはどのようにして婚約まで至ったのでしょう?」とメイドが興奮気味にエルメラルダに寄っていた。
「こら!そんな聞き方エルメルダ様に無礼です!」と怒りつつもチラリとエルメラルダを横目でみるメイド長。
「たまたま・・・第一王子様の開くお茶会へ行こうとした時に、倒れてしまって…、そこに偶然通りかかった第四王子様に助けて頂きました。そこからでしょうか…。」とエルメラルダ。
「きっと殿下の一目惚れだったのね!!」とメイド達が騒ぐ。
「そんな事より、料理についてもっと教えてくれ!!納品された食材の使い方も!!」とメイド達を押しのけてコックのエドウィルが目を輝かせて入ってきた。
「はい!」
エルメラルダはしばらくエドウィルに料理をみっちりと教えるのだった。
コンコンと第四王子の部屋がノックされる。
「どうぞ。」と返事が来たので中に入るエルメラルダ。
明かりもつけずに端っこの窓際で力なくうなだれているヒスイを見てギョッとするエルメラルダ。
「ディナーをお持ちしました。一緒にどうですか?」
「頂きます。」と力なくうなだれたままのヒスイ。
「どうしたんですか?昼間の口付けを後悔なさっているのですか?」
「いえ、それに関してむしろ・・・。エル、こっちへ。」と力なくエルメラルダを見るヒスイ。
エルメラルダは心配になってヒスイに近寄った。するとエルメラルダはまた胸倉を掴まれて後頭部を抑え込まれてキスをされてしまう。
「んんっ!!///…んっ…んふっ…んんっ///…ぷはっ!!!長いわっ!!!」とツッコミを入れて離れるエルメラルダ。ここが乙女ゲームの中だと思って行動しているエルメラルダにとってキスとかあって当たり前の存在で心臓はもちろんドキドキしているが、そこまで気にする事でもなかった。
「もう逃がさない…。」といってエルメラルダの肩をガシっと掴むヒスイ。
「こっ・・・こわっ!!第四王子まさかのメンヘラ!?いや、ヤンデレ?」と言ってオロオロしているとヒスイはエルメラルダを掴んでいた手を離してから、スッと立ち上がって、部屋の隅にある箱をガサガサと漁りだした。
「イテッ。」と一声あげて一瞬親指をみつめるが、すぐにガサガサと何かを探す事を続行し、ようやく探し終えたようでエルメラルダの元へ帰ってきた。
「何を探して…。」と言葉を発すればガチャンと音がして同時にエルメラルダは手首に冷たく重いものがかせられた事に気が付いた。
「あーあー…血がでちゃった。エル、口をあけて。」
「は?」とあまりの現状に頭が理解できずポカンと口をあけてしまうエルメラルダの口に先程切れてしまった右手親指の血を舌に塗る。
「あ゛・・・。」と女性らしからぬ声を出してしまうエルメラルダ。
「あぁ…///自分の血を…飲んでください…///」と怪しくも恍惚に笑うヒスイ。口の中に入れた親指でエルメラルダの口内を愛おしくなぞる。口を閉じるわけにもいかないエルメラルダの口からダラリと涎が垂れてしまいそれをベロリとヒスイは舐め上げる。
親指を口から抜けばプルプルと小刻みに震え、俯くエルメラルダ。
「どうしました?」
「どうしました?…じゃないでしょうが!!ご飯が冷めるってば!!逃げも隠れもしないから食べて!」
「…え、あ…え?あ、はい。」と同様するヒスイ。それもそのはずだ、今さっきキスをして手錠をかけ口の中に指を突っ込んだのだ。そこまでしたのにご飯が冷めると怒られた。通常人間がとるであろう行動からかけ離れた返しに自分がひるんでしまった。
「明かりもつけて。」と言われれば「はい。」と返事をして魔法で明かりを灯して部屋を明るくする。
エルメラルダはとても怒っていた。それに何故か脅えてしまうヒスイ。
メイドに食事の用意を整えさせて、手錠付きのエルメラルダとヒスイは席に座った。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」と冷静に真顔で質問をするエルメラルダ。
「はい。」
「何故手錠を?」
「…もう誰の目にも触れさせたくなくて…閉じ込めてしまおうかと。」
「はぁ……一体私のどこにそんな魅力が…あ…現代チート…。なるほど。王子は監禁が趣味なのですか?」
「…いえ、そんなはずは…。」
「なら、この手錠はなんですか?…頑張って答えてください。天才でしょう?」
「それは…もう逃がしたくなくて…ずっと隣に置いておきたくて…。」
「まさか…第四王子がこんな感じだなんて…。」と目を閉じてヤレヤレといった感じで左右に首をふるエルメラルダ。
「すみません…。」ヒスイはエルメラルダをガッカリさせてしまったかと思いシュンとしてしまう。
「ヒスイ王子、もっと面白い景色みたくないですか?」とエルメラルダに言われて、幻滅されたと思い落ち込んでいたヒスイは目を大きく見開いた。
「はい?」
「私ならお見せできます。最初はせっかく転生したし別の人を攻略してやろうかと思ってましたけど、バッドエンドしかクリアできなかったヒスイ王子をとことん攻略してやりたくなりました。」と、とても挑戦的な目でヒスイを見つめるエルメラルダ。
26
お気に入りに追加
2,375
あなたにおすすめの小説
竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜
四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」
ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。
竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。
そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。
それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。
その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた!
『ママ! 早く僕を産んでよ!』
「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」
お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない!
それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――!
これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。
設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。
※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。
お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる