非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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76p【MAP解放】

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現実世界で一ヶ月が過ぎた。

相変わらず俺は陽子さんと共に【リアル】の中にいた。

そして【リアル】の中では相当な年月が経過しているのに護はタマゴのままだった。
色んなクエストをこなして、狩りだって死ぬほどやったのにどうしてタマゴのままなのか不思議で仕方がない。
コンコンと部屋をノックされる音が聞こえてドアをあけるとシンカさんが立っていた。
「え。珍しいですね。こんにちは。」
シンとはほぼ毎朝会うけど、シンカさんが訪ねてくる事なんてこの一ヶ月なかった。
「どうも。」
「え?シンカ?珍しいですね。」と咲も驚いて椅子から立った。
とりあえず、部屋に入って座ってもらった。
「何かあったんですか?」
「はい、今からお話する内容はギルドの幹部とごく一部の人しか知らない事なんですけど、ギルド【ヒルデガーデン】の副官二人が行方不明になりました。」
「行方不明?ゲームを辞めたってだけですよね?」
「いえ、現実世界で行方不明だそうです。」
「は!?」
「え!?」
僕と咲はとても驚いていた。
「シンカはそれをどう考えてるの?」と真剣に問う咲。
「恐らく、ヒルコのせいかと。現実世界で警察関係の仕事をしているギル員に掛け合って調査して頂いてますけど、未だ見つからず…。」
「ダメよ。警察はもう、落ちてる可能性がある。【リアル】で起きた事件は全て揉み消される。すぐに調査を辞めさせて!」
「え?」とシンカさんは目を見開いた。
「目を付けられたらアカBANをくらっちゃう。」
「アカBAN?」
「アカはアカウントの事。BANは英単語で禁止って意味。つまりアカウントを停止されるって事。」
「今回、自分が伝えたかったのは事件と、りきさん達は一度顔がバレてるので気を付けてほしいという事なので、自分は今から千翠にそれを伝えてきます。」
「それがいいと思う。」
シンカさんは立ち上がって部屋のドアから出ずにゲートを開いて部屋から出て行った。

「どうやら…ヒルコと決着をつけないといけない時がきたみたい。」
「え!?」
「ルナの力を借りて、急ぎでラストカントリーまで行く必要がある。」
「ラストカントリー!?わかった。相談してみよう。」
ヒルコとの決着をつけるには無限の魔力が必要で、その無限の魔力を作る為のアイテムがラストカントリーにある。
ラストカントリーに入る条件は全MAPの制覇。196ヶ所を廻る事。
なるべく自分の目で色んな国を回りたいと思ってたけど、行方不明者がでてしまっている以上仕方ないか。
僕はとりあえず千翠さんの部屋へ行く事にして、部屋を出ようとすると丁度シンが部屋の前に立っていて「シン!!丁度良かった!!」と、つい抱き着いてしまった。
「うわぁっ。なっ、何?」と少し照れ臭そうにするシン。
「ラストカントリーへ行きたいんだ。どうにか俺達のMAPを広げられないかな?」
「ちょっと待って、ルナさんに相談してみる。」
「ありがとう!!」

俺と咲はルナさんの部屋に招待された。
「話は聞いたわ。MAPを広げるなら、空を飛ぶのが一番よ。」と部屋に入るなり楽しそうにポーズをとって提案してくれるルナさん。
「え?」とシンカさんが眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をした。
「シンは馬しかスキル上げてないからシンカが必要ね。アレの出番!」とウィンクしながら人差し指を頬にあてるルナさん。
「アレってなんですか?」と冷静に聞いてしまう。
「とりあえず、その演技臭いのやめたら?ルナ。」とシンさん。

ルナさんに指示されて、俺と咲はアトランティスの外へ移動した。
すると、不機嫌そうな顔をしたシンカさんが現れた。
「もっと早く言ってくださいよ。どんどんルナといる時間が減っていく。」
「すみません。」
「まぁ、問題の解決に繋がりそうですから協力はしますけど。」
シンカさんはスマホを操作してオープンカーを出した。
「さっさと乗ってください。」とシンカさんはいつもより声低めだった。

俺と咲は車の後部座席に座った。
「あ、MAP確認しながら行くんでリキさんは自分の隣に。」
「あっ!すみません。」
俺は助手席に座り直した。
シンカさんが座ってハンドルを握ると、車が浮き、アトランティスが段々小さくなっていく。
改めてアトランティスって凄い大きな国だったんだと感じた。
「じゃ、飛ばしますよ。りきさんのMAPを自分にも見えるように公開ホログラムでだしておいてください。」
「はい。」
MAPを出すと凄いスピードで移動していく。それはもうジェットコースターのようだった。
「おっ落ちる!落ちる!!」
「座ってる限り、落ちないので、大人しくしてください。」
「すみません。」
「わぁ!!!すごーい!!!」と咲が嬉しそうに外を見る。
「ふっ、普通の車はないんですか!?」と、恐くてつい聞いてしまう。
「あんたら現実世界の人間が【リアル】と現実世界の区別がつかないせいでこうなったんでしょうがっ!!」と喋りながら急カーブを決めるシンカさん。
「まぁ、たしかにね。」と咲。
「どういう意味?」
「【リアル】での車は人をはねても死なないし、壁にぶつかっても壊れない。もちろん壁だって壊れない。でも、それに長く慣れてしまった人が数人、現実世界でも同じようにしちゃって人が死んだの。それから普通の車を廃止して空飛ぶオープンカーを実装したってところかな。」
「なるほど。そんな事件が。」
「もちろん、メディアもムーンバミューダ社の手に落ちちゃってるから長くは報道しなかったけどね。」
「大丈夫ですか?そんな過激な発言しちゃって。」とシンカさん。
「うん。多分もう大丈夫じゃないかな。」と咲。
つまり【リアル】関係の事故事件はほとんど報道されないという事か。
日本の政治家達の9割は落ちてるらしい。もうほとんどの国がムーンバミューダ化しているそうだ。
物価の値段もおかしくなりはじめている。そんな事全く気付かず生きてきた。

ふと隣を見るとシンカさんの顔が青くなっていた。
「え…どうしたんですか?」
「自分……車酔い…するんです。」
「えぇ!?むっ、無理しないでください!」
「急いで行く必要があるんですよね?じゃあ大人しく座ってて下さい。吐く前に飛ばします。」
MAPに視線を移すと、モヤモヤのかかったMAPがどんどん綺麗になっていき、色んな国や町が表示されていく。
すみません…シンカさん。と心の中で労わった。

シンカさんのおかげでラストカントリーへのゲートが開けるようになった。
MAPが開ききった瞬間、ホログラム画面が出てきて、【ラストカントリー解放】と表示された。
そして一旦、車を陸に降ろした。
「シンカさん、ほんとに大丈夫ですか?」
「……自分はゲートで帰るんで…気にせずどうぞ。」と青い顔でヘロヘロな状態で車をインベントリにしまうシンカさん。
「わかりました。」

死にかけたシンカさんを置いてラストカントリーへのゲートを開いた。
「行くよ。」と咲が俺の手を引いた。
「うん。」
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