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70p【音避け】

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「…何?どうして負けたんだろ。」
いつも明るくニコニコしていた咲が真顔で呟いた。

部屋に戻って先程のダリアさんとの試合の映像を見る。珍しく咲も一緒に見ていた。
ダリアさんは、見えない攻撃を避けていた。ハナビの魔法もハクの攻撃も避けていて、避け方が自動防御なんかじゃない。どうやって避けたんだ?かなり混乱してしまう。

「この人、風とか音を聞いて避けてる。」と咲が言う。
確かに、攻撃を避ける時、目を瞑ってる!?
「こんな避け方…あるのか?」
「普通じゃない。この人…天才だ!!」と咲がちょっと嬉しそうに言う。
「え、咲?」
かなりショックで落ち込んでいるのかと思いきや、ワクワク顔になる咲。
「私も負けてらんない!!これ練習する!音と風で避けるの!」
「え…。」
「あー!でも!今日はリキが疲れてるからやらないよ?明日からできるまでやる!リキ、手伝ってね!」
「あ…うん。」
(またとんでもない事になったぞ。)

それから、1週間ほど、咲と特訓をして、咲がそれをマスターしたら次は僕の練習になって、僕がちゃんと避けられるようになるまで一ヶ月たった。朝から晩まで、毎日毎日練習をして、晩餐後の練習試合も、すぐに倒せてしまう相手でも練習する為に、すぐに倒さずできるだけ引き延ばした。
しかも、運よくダリア班の人ばかりで、凄く良い練習ができた。僕と咲は一ヶ月と一週間みっちりプレイヤースキルを磨いたのだった。

そして晩餐前に厨房に入って、みんなの晩御飯を作るのに忙しそうなシンカさんに声をかけた。
「シンカさん!!」
「はい?」
「お願いします!!今日の晩餐後の練習試合の相手、ダリアさんにしてもらえませんか!?」
「はぁ…。別に良いですけど…。空いてますかね?彼。どうしたんですか?急に。」
「前に負けて、リベンジしたくて。僕ら一生懸命プレイヤースキルを磨いてきたんです。」
「なるほど。」とフッと笑みをこぼすシンカさん。そして「わかりました。じゃあ、ルナに伝えておきます。」と言ってホログラム画面を操作する。
「お願いします!!」
「頑張って下さい。」

そして、晩餐の後。
練習場へいって待っていると、ダリアさんが現れた。ダリアさんは到着するなり、練習試合を申し込んできて、カウントダウンがはじまる。
(相変わらずの無言のスピード申請だ。今日は勝つぞ。)
咲と顔を見合せてコクリと頷く。
カウントダウンが0になった。咲も僕も集中してダリアさんの最初の攻撃を避ける。咲はダリアさんの攻撃を避けながらステッキの解放に成功した。
咲は持ち前の素早さ勝負で無理矢理ダリアさんに攻撃をしかけるが、やはり避けられてしまう。
だけど、ダリアさん攻略の為に僕はウォールを纏ってダリアさんに捨て身の突進をする。咲がダリアさんの背後をとって、殴ろうとすると、ダリアさんが体をくねらせてそのまま避けてしまい、その攻撃が僕にあたって、僕はふっとんだ。「うわぁっ!!」と声が出てしまう。
味方の攻撃は痛みも体力も減らないけど吹き飛びはする。
ダリアさんが僕目掛けて走ってきて、ハクが僕の目の前で刀を構えて止まり、そのまま向かってくるダリアさんにズプリと刀がささった。ハクの攻撃が初めて当たった。
そうか、止まってたからか!!ダリアさんにはハクが見えないから、音が無いと避けられないのか!
ハナビがダリアさんの真後ろに火柱を設置していた。ハナビも音を立てない攻撃方法を編み出していた。
ダリアさんは見えない何かを抜こうと後ろへさがる、すると、設置してあった火柱にあたって大ダメージを受ける。
驚いた顔をするダリアさんに、咲が真上からステッキを振り下ろそうすると、ダリアさんの刀が人型に戻ってダリアさんを庇った。AIちいろの体力が0になってしまった。

「…っ!!!」
痛みに耐えるちいろさん。そのまま倒れてしまう。
「ちいろっ!!!」
ダリアさんは驚いて目を見開き、僕らから距離をとる。
それからホログラム画面を操作して新しい武器をとりだしていた。咲はそれを防ごうと攻撃を繰り出すが間に合わず、真っ黒い細い剣を2本両手に持って咲の攻撃を防いでいた。
そして、咲を突き放し、また僕に襲いかかってきた。
ハクがまた刀を構える、ダリアさんの体にブスリと刺さったが、ハクごと刺さったまま僕に向かってくる。

やられる!!!と目を瞑った。

しかし、いくら待てど、全く痛みがこないので、恐る恐る目を開く。
真っ先に視界に入ったのは【WIN】という文字だった。
どうやらハクの刀の呪いによる持続ダメージでダリアさんの体力が削れて僕たちが勝利していた。
「勝った…。勝った!!!よしっ!!よしっ!!」
僕は勝てた嬉しさで、ついガッツポーズをとってしまう。
「やった!!!」と咲も喜ぶ。

「……斬り足りないじゃないか…。もっと斬らせろ。」
ダリアさんのド低音ボイスが響く。

「えぇ!?そ、そんな無茶な!!」
「じゃあ私と一対一でもする?」と咲は自信満々な笑みを浮かべる。
「よし。やろう。」

咲はパーティーを抜けて、ダリアさんと一対一の練習試合をしだした。

しばらくして練習場に千翠さんがやってきた。
「ん?…はぁ。コールしても反応がないと思えばこれですか。」
やれやれといった様子の千翠さん。
僕とちいろさんは三角座りをしてそれをぼーっと眺めていた。
「ははっ…僕たち…いつ寝れるんだろう…。」
「夜更かしはお肌に悪いのに…ははっ。」
「仕方がありませんね。コホンッ。ダリア、仕事があります。」

「試合中だ。あとにしろ!」
「そうもいかない。あと30分でクエスト受付が終わってしまう。…ダリア。」
「……チッ。」
ダリアさんは持っていた剣をカランカランと音を立てて落として「やれ。」と言えば、咲はダリアさんのお腹を殴って体力を削って勝負を終えた。
「あと何分だ。」とダリアさん。
「28分です。急いでください。」
「あ!まってよ!ダリア!」とちいろさんが立ち上がってダリアさんのあとをつける。

仕事ってクエスト?
「はーあ。つまんないの。」
「楽しそうだったね。」
「うん!やっぱり、あの人天才だよ!いいなぁ!!私もあんな動きできたらなぁ。」
「咲ならできそうだけど。」
「できるかな?…ふふふっ!できればいいなー!」
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