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69p【絶望】
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「もう死にそうだ。」
僕は、この世界を甘く見ていた。まるで何時間も灼熱の砂漠を歩き続けているかのようなだるさがあった。
大袈裟かもしれないけど、体験したことが無いしんどさ、だるさに直面しているという事を伝えたい。
何があったかと言えば、今までの町や国は、だいたい1時間もすれば外にでれて次の町へ行けた。
だけど、この【にゃん!だー!ランド】は8時間かかった。
もうすっかり夜で晩餐の為に戻らないといけない時間。どうして犬と猫にこんな差が生まれてしまっているんだ?
「ゲート出したから、ほら。」と咲がギルドハウスの大広間へのゲートを開いてくれていて、そこによろよろと入っていく僕。
丁度そこに晩餐の為の料理を運ぶシンカさんがいた。シンカさんは珍しくモノクルをかけていていた。
「うわっ。ぶふっ。なんですか?その疲労バフ。」シンカさんは此方を見て笑う。
「リキ、ちゃんとした中規模の国を通過するのはじめてだったみたい。」と咲。
「あぁ。明日はアトランティスの観光でもしたらどうです?うちは大規模な国ですから。」
「そんな事したら リキ死んじゃうじゃん!」
死ぬ!?本当に僕はこのゲームの事何もしらなかった。
小規模の国と町はだいたい30分から6時間ほどで入り口門から出口まで通過できるけど、中規模からは6時間から二日はかかるそうだ。大規模な国は二日から六日。ドルガバの所有地、はじめてジャンさんと出会った、あの金ピカの国は通過するのに六日かかるらしい。
早く通過する方法は、色々あるけど僕の場合フゥに風で運んでもらうしかないらしい。
あと、すっごくどうでも良い事だけど、このゲーム内は犬派より猫派のほうが多いって事も学んだ。
「リキさんのテーブルには疲労回復効果のある食事置いときますね。」とシンカさんは僕が座るであろう席のテーブルにティラミスを置いてくれた。
「うわぁ!すみません、ありがとうございます。」
シンカさんはニコッと微笑んで、またすぐに厨房へ戻っていった。
「ほら、とりあえず座ろ?」
「うん。」
こんなズタボロで、この後練習試合かぁ。憂鬱で深いため息をついた。
しばらくして晩餐がはじまった。
シュガーさんとソウジュンさんとガウルさんが同時に席についた。
「ん?ぶはっ!!リキよぉ、どこの国行ってきたんだよ。似合ってんぜ!その耳。」
シュガーさんは席に着くや否や僕を見て吹き出して、僕は頭を触った。
「猫耳、うわっ!!僕っ!!外し忘れてましたっ!!」
(超恥ずかしい!!猫の着ぐるみ外しわすれた!!)
僕は急いで装備覧から猫の着ぐるみを外した。
「はっはっは!!にゃんだーランドにでも行ってたんだろう!」とソウジュンさんが笑いながら言う。
「行ってました。にゃんだーランドってとてつもなく広いですよね。」
「あぁ、あの国は政治大好き国家だから、これからも広がり続けるだろうな。」とガウルさん。
「政治大好き…ですか?」
「あぁ、この世界はゲームでも現実と同じように裏では政治ってもんがあるんだ。金の流れとでもいうべきか?」とシュガーさん。
「佐藤、それ絶対リキは理解できないぞ。」とガウル。
「コネと権力のある人物と繋がっていって、国を大きくするってこった。」とソウジュンさん。
「うわぁ…。ドロドロそうですね。」
「うちほどじゃないだろうけど。」とガウルさん。
「あはは…。」
僕はただ、苦笑するしかなかった。
晩餐が終わって、シンカさんの料理のおかげで疲れはとれたけど、精神的な疲れはとれず、とぼとぼ練習場へ向かった。
練習場にいたのはよりにもよってこの人かと思ってしまう人物だった。
美しい金色のボブヘアー、真紅の美しい生地で作られた王子様のような服、茶色い皮のズボン、膝あたりまである黒いブーツ。そして、血がしたたる刀。
「ダリアさん。」僕がそう呟くとダリアさんの目が一瞬右にそれて、それからまた僕をみつめてから練習試合の申し込みをしてきた。
無言の状態でカウントダウンがはじまる。
0になった瞬間、咲がステッキを解放しようとすると、もうダリアさんが切りかかっていて、詠唱できずに受け身をとる咲。
そのまま背後をとられて剣を刺されて、ダリアさんは剣を引き抜いて距離をとった。
「はぁ!?何よ、何よこれ!!!!」と咲が驚いていた。
「スゥ!」すぐに僕はスゥで回復を施す。
でもダリアさんは、正面から縦に斬りつけて、次は横、最後は背後をとって横に斬りつけた。
僕はスゥを咲につかせてずっと回復し続ける。
どうやら、ステッキを解放する隙がないらしい。
僕は深呼吸してから目を瞑って、小人達に魔力補給をする。
10分、20分、30分。そこで僕の魔力は尽きてしまって目をあけた。
咲が瀕死で倒れていた。ウォールも、もう動けそうにないくらいズタボロだった。
魔力がなくて棒立ちの小人達。
……何が…おこって……?
これは地獄だ。と思った。夢じゃないのか?とも思った。こんな光景を今まで見た事がなかったからだ。こんな状況になるまで目を瞑って何もしなかったのか僕。
また僕はウォールを…小人達を、こんなになるまで。
「残念だ。」
ダリアさんにバッサリ切られて僕は負けた。
試合が終わって全回復はしたけど、咲も僕も驚いてその場から動けなかった。
「弱い……。」そう呟いてコツコツと足音を立てながらダリアさんは去って行った。
僕は、この世界を甘く見ていた。まるで何時間も灼熱の砂漠を歩き続けているかのようなだるさがあった。
大袈裟かもしれないけど、体験したことが無いしんどさ、だるさに直面しているという事を伝えたい。
何があったかと言えば、今までの町や国は、だいたい1時間もすれば外にでれて次の町へ行けた。
だけど、この【にゃん!だー!ランド】は8時間かかった。
もうすっかり夜で晩餐の為に戻らないといけない時間。どうして犬と猫にこんな差が生まれてしまっているんだ?
「ゲート出したから、ほら。」と咲がギルドハウスの大広間へのゲートを開いてくれていて、そこによろよろと入っていく僕。
丁度そこに晩餐の為の料理を運ぶシンカさんがいた。シンカさんは珍しくモノクルをかけていていた。
「うわっ。ぶふっ。なんですか?その疲労バフ。」シンカさんは此方を見て笑う。
「リキ、ちゃんとした中規模の国を通過するのはじめてだったみたい。」と咲。
「あぁ。明日はアトランティスの観光でもしたらどうです?うちは大規模な国ですから。」
「そんな事したら リキ死んじゃうじゃん!」
死ぬ!?本当に僕はこのゲームの事何もしらなかった。
小規模の国と町はだいたい30分から6時間ほどで入り口門から出口まで通過できるけど、中規模からは6時間から二日はかかるそうだ。大規模な国は二日から六日。ドルガバの所有地、はじめてジャンさんと出会った、あの金ピカの国は通過するのに六日かかるらしい。
早く通過する方法は、色々あるけど僕の場合フゥに風で運んでもらうしかないらしい。
あと、すっごくどうでも良い事だけど、このゲーム内は犬派より猫派のほうが多いって事も学んだ。
「リキさんのテーブルには疲労回復効果のある食事置いときますね。」とシンカさんは僕が座るであろう席のテーブルにティラミスを置いてくれた。
「うわぁ!すみません、ありがとうございます。」
シンカさんはニコッと微笑んで、またすぐに厨房へ戻っていった。
「ほら、とりあえず座ろ?」
「うん。」
こんなズタボロで、この後練習試合かぁ。憂鬱で深いため息をついた。
しばらくして晩餐がはじまった。
シュガーさんとソウジュンさんとガウルさんが同時に席についた。
「ん?ぶはっ!!リキよぉ、どこの国行ってきたんだよ。似合ってんぜ!その耳。」
シュガーさんは席に着くや否や僕を見て吹き出して、僕は頭を触った。
「猫耳、うわっ!!僕っ!!外し忘れてましたっ!!」
(超恥ずかしい!!猫の着ぐるみ外しわすれた!!)
僕は急いで装備覧から猫の着ぐるみを外した。
「はっはっは!!にゃんだーランドにでも行ってたんだろう!」とソウジュンさんが笑いながら言う。
「行ってました。にゃんだーランドってとてつもなく広いですよね。」
「あぁ、あの国は政治大好き国家だから、これからも広がり続けるだろうな。」とガウルさん。
「政治大好き…ですか?」
「あぁ、この世界はゲームでも現実と同じように裏では政治ってもんがあるんだ。金の流れとでもいうべきか?」とシュガーさん。
「佐藤、それ絶対リキは理解できないぞ。」とガウル。
「コネと権力のある人物と繋がっていって、国を大きくするってこった。」とソウジュンさん。
「うわぁ…。ドロドロそうですね。」
「うちほどじゃないだろうけど。」とガウルさん。
「あはは…。」
僕はただ、苦笑するしかなかった。
晩餐が終わって、シンカさんの料理のおかげで疲れはとれたけど、精神的な疲れはとれず、とぼとぼ練習場へ向かった。
練習場にいたのはよりにもよってこの人かと思ってしまう人物だった。
美しい金色のボブヘアー、真紅の美しい生地で作られた王子様のような服、茶色い皮のズボン、膝あたりまである黒いブーツ。そして、血がしたたる刀。
「ダリアさん。」僕がそう呟くとダリアさんの目が一瞬右にそれて、それからまた僕をみつめてから練習試合の申し込みをしてきた。
無言の状態でカウントダウンがはじまる。
0になった瞬間、咲がステッキを解放しようとすると、もうダリアさんが切りかかっていて、詠唱できずに受け身をとる咲。
そのまま背後をとられて剣を刺されて、ダリアさんは剣を引き抜いて距離をとった。
「はぁ!?何よ、何よこれ!!!!」と咲が驚いていた。
「スゥ!」すぐに僕はスゥで回復を施す。
でもダリアさんは、正面から縦に斬りつけて、次は横、最後は背後をとって横に斬りつけた。
僕はスゥを咲につかせてずっと回復し続ける。
どうやら、ステッキを解放する隙がないらしい。
僕は深呼吸してから目を瞑って、小人達に魔力補給をする。
10分、20分、30分。そこで僕の魔力は尽きてしまって目をあけた。
咲が瀕死で倒れていた。ウォールも、もう動けそうにないくらいズタボロだった。
魔力がなくて棒立ちの小人達。
……何が…おこって……?
これは地獄だ。と思った。夢じゃないのか?とも思った。こんな光景を今まで見た事がなかったからだ。こんな状況になるまで目を瞑って何もしなかったのか僕。
また僕はウォールを…小人達を、こんなになるまで。
「残念だ。」
ダリアさんにバッサリ切られて僕は負けた。
試合が終わって全回復はしたけど、咲も僕も驚いてその場から動けなかった。
「弱い……。」そう呟いてコツコツと足音を立てながらダリアさんは去って行った。
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