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67p【禁忌の合成】

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翌朝。
「起きて!ねぇ!」と咲に体を揺すられて目が覚める。
「ん、おはよう。」
目をこすりながら体を起こす。
「ね!ね!凄い面白そうなの!Shiftとルナが練習場で戦うんだって!」
「え!?」
「ね!行こう?見に行こう?」
「あ、うん。」
僕は急いで仕度して練習場へ移動した。

練習場1番へ行ってみると、ベンチに観客がわりと多くて驚いた。
「お?やっぱり来たか。」とスノーポークさんに声をかけられた。
「何かあったんですか?」
「ん?いや、タクミとルナは定期的に練習試合して遊んでるんだ。」
(遊び…?)
「遊びにしては観客が多いというか。」
「みんなルナのドラゴン見たさに来てるだけだな。」
「え!?ドラゴン!?みたい!みたい!!」と咲が目を輝かす。
(Shiftさんってルナさんとどういう戦いするのか、実は興味あったりする。)
「あ。部屋にいないと思ったらここか。」とシンさんとシンカさんが現れた。
「探しましたよ?黙って勝手な行動は控えてくださいね。」とシンカさんに言われた。
「すみません、あれ?練習試合参加しないんですか?」
「え?自分達を見ると虫唾が走るらしくて、毎回1対1の勝負ですよ。あの二人は。」とシンカさん。
「へぇ…。」
「あ。朝食まだですよね?サンドイッチに作り変えましたよ。どうぞ。」とシンカさんはインベントリからサンドイッチが入ったカゴを取り出して、僕に渡してくれた。
「あ。すみません。いつもありがとうございます。」僕と咲はサンドイッチを受け取った。
「わぁ!ありがとう!」咲は喜んでサンドイッチを食べた。
(作り変えたって事はいつもの朝食部屋に運んでくれてたのかな…すみません。シンカさんシンさん。)
僕は心の中で深く謝った。そしてサンドイッチが美味しくて感謝した。

スノーポークさんがウキウキしたような声で「お。はじまるぞ。」と言ったので、ルナさんとShiftさんの方を見れば試合は開始されて、Shiftさんはいつも通りトランプのようなカードをパラパラと周囲に散らす。
(ん?この光景、なんかどこかで…思い出した!!…そうだ…出店で良くあるくじ引きのエアー抽選器っぽいんだ…。)
円形ドーム型にバラバラと凄い勢いで散るカード。ルナさんが氷柱を飛ばしても飛ばしてもカードにあたってしまい、防がれる。
カードをどれだけ凍らせて落としても、別のカードが絶対にShiftさんを絶対に防御する。
(こんなのどうやって戦うんだろう?)
「咲はアレどうやって戦う?」
「カードごと顔面までパンチで押す。でも、あれは…。」
(ん?どうしたんだろう?)
「はぁ。タクミのやつ、最初からルナのドラゴン化と戦うつもりだね。」とシンさんが言う。
「接続切るの面倒なんですけど。」とシンカさんが言う。
「あのカードは何装備なんですか?」
「あれは盾だね。何と合成してできた盾か全くわからないけど。合成した武器や盾、防具は未知数だからね。」とシンさんが教えてくれた。
「おかしな盾ですよね。星5レア超えてそう。」とシンカさん。
「これは俺の仮説にしかすぎんが、恐らく…タクミは、矛盾シリーズのAIを武器にしたまま合成を試みた可能性がある。」
スノーポークさんのその言葉は、衝撃的で僕は凍り付いてしまった。
(AIを合成!?生きているのに!?心があるのにか?)
「コホンッ。いや、悪い。表だって言う事じゃねぇよな。」
「まぁ、でも。あれはやってますよ。」と背後からジャンさんの声がした。ジャンさんは僕達の後ろの席に座った。
「うん、まぁ薄々わかるよな。何人かどう考えても怪しい武器もってるからなぁ。」とスノーポークさんが驚く。
「僕らからしたら見てて気持ちが良いものじゃないけど、ルナの最終目標の為なら仕方ないよね。」とシンさんは少し影を落としたような顔をする。
「まぁ、そうじゃないかなとは思ってましたけど、やっちゃいましたか。」とシンカさんは冷静に言う。
「そんな事できるの?伯父様。」
「実装直後一度だけバグがあってね。矛盾シリーズAIをアイテム化した状態での合成。すぐに修正されて、もうできないが、合成したあとに更なる合成を施して上手く隠したようですね。」
「そういや、タクミのAI見た事ねーな。」
「恐らく、バグの影響でAIが埋まった状態なんでしょう。」
「聞いてて胸が痛いよ。AIだって心は本物なのに…。」とシンさんが言う。
「シン、もしルナに一生自分の武器になれっていわれたら、どうします?」とシンカさんが試合を見つめながら問う。
「どうって、ルナが、そう望むのなら…なるしか…ない…。」とシンさんは少し辛そうに寂しそうな顔をして答える。
「そういう事でしょ。タクミさんのAIは恐らく、力になりたくてなったんじゃないですか?」
「伯父様…、もしかして、伯父様もAIを合成したの?」
「何故そう思う?」
「だって、長い事やってるのに一体も持ってないなんて。バトル回数もやや多めだからBPはたまってるでしょう?」
「そうですよ。上限値に達した者にしかできんミラクル合成のバグだったんで、やりましたよ。案の定AIを新しく持つことができなくなった。ちなみに、禁忌合成というらしい。俺の武器はアレよりマシだがな。」

ジャンさんはホログラム画面で何かを操作した。すると白い髪に青白い肌に赤い目を持つ双子っぽい女の子が手を繋いで現れた。
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