非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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66p【ジョンナム】

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恐ろしい事に1週間過ぎていた。
「不味いな。何時かな?」
「んー?わっ、丁度晩餐前だ。」

コンコンとノックの音が聞こえた。扉を開けてみると、ルナさんとシンさんがいた。
「あ…。」
丁度気不味い相手の登場だ。
「あ、じゃないわよ。無言ログアウトなんて、何かあったの?」とルナさんが怒っている感じで聞いてきた。
「あー、ちょっと咲と色々。」と少しルナさんから目を逸らしてしまう。
「ごめん!りきを怒らせちゃって!」
「え?喧嘩したの?」とシンさんが驚いていた。
「何もないならいいけど、今日からは練習試合大丈夫なのかしら?」
「あ、はい。やります。すみません一週間も休んでしまって。」
ルナさんはため息をついた。
「ルナ、そろそろ晩餐行かないと。」
「ええ。わかってる。」
シンさんはゲートを開いた。
「君らものりなよ。」と言われて一緒にゲートをくぐって大広間入り口についた。
シンさんはルナさんをいつも通りエスコートして幹部席へ座る。
僕と咲もいつも通りの席に座った。
咲の右隣にはジャンさんが座っていて「何かあったのか?」と心配そうな顔で咲に問う。
「ちょっと、リキと喧嘩しちゃっただけ。」
(喧嘩って、僕別に怒ってたわけじゃ…。)
「お!リキじゃねぇか!」と隣にシュガーさんが座った。
「あ、えーっと、お久しぶりですか?」
「だっははは!!そうだな!1週間ぶりだな!トイレか?」
「あーいや、ちょっとまぁ、はい。そんな感じです。」
しばらくして、いつも通りの晩餐がはじまって、終わったあとはすぐに練習場へ向かった。
今日は誰だろうと、練習場を覗いてみると誰もいなかった。

「はぁ。緊張する。」
「そういえば、はやたんって、凄い手強かったね。」
「え?うん、あんなスピード追いつけないよ。」
「ええ、普通なら、あの速度 目が回って動けないもん。私でギリギリ追いつけるか追いつけないかくらいに速かった。」
「え?素早さの問題じゃないの?」
「うん。振っても目が回るだけだから、基本はそこそこで止める人が多いかな。体が見えなくなるまで早く動くなんて、人じゃない。」
「AIでも目が回るの?っていうか咲も体が見えなくなるくらい凄い速さだったけど。」
「私は一応、訓練されてるというか、色々備わってるからね。」
その言葉で恐らく、チートの目か何かを持っているという事を察した。
「じゃあ、はやたんさんのスピードは誰でもだせるわけじゃないんだ。」
「うん。」
流石幹部揃いのルナ班。イチカさんも凄腕のヒーラーっぽいし凄いなぁ。
「まぁ、ユーザーは馬鹿みたいに多いから、ちらほらいるかもしれないけど。」

「すまない。待たせた。」
背後から声がして振り返ると、ミルフィオレ午後の幹部ジョンナムさんだった。
真紅の長い髪、口元はマスクをしていて見えない。赤い瞳、白色の盗賊っぽい服。キラキラした装飾品をジャラジャラとつけているように見える。
「いえ。僕たちも今来たところなんで。」
「AIは一体か?」
「あ、はい。」
ジョンナムさんの後ろには3体のAIがいた。
スマホで一応情報を見れば左の茶髪のショートヘアにカジュアルな服装の女性は夢さん。
真ん中は炎を纏った鳳凰みたいな鳥で名前は、れんさん。
(絶対四神シリーズの朱雀だ。)
右の黒髪で、ちょっと病弱そうな見た目の包帯に白い服、儚げな顔をしている女性は舞さん。
「お前は強いと聞いた。蓮 こい。」
「御意。」蓮さんは鳥から、炎を纏った人型ヒトガタに変形した。
顔は美しく、髪は赤く、上半身は裸だけど鍛え抜かれているかのようなマッチョで白いぶかっとしたズボンをはいている。ジョンナムさんと同じく装飾品をジャラジャラとつけていた。

ジョンナムさんと蓮さんvs僕と咲で練習試合はすぐに開始された。

咲はすぐに宝花の賢者ステッキを解放して蓮さんを殴りにいった。
僕は、目を瞑って全てを小人達にまかせた。
正直、ズルしてたのはわかってたんだ。だって、1個の武器に7つも武器や防具をつけれて、そのうえ相手には小人達の姿が見えないなんて、完全なチートだ。
でも、心の奥底で、やらなきゃいけないって何故か分かってる。世界を救うとかいう、未だに信じられない使命だけど、僕はなんだってやる。やれって不思議と僕の中の何かが叫んでるんだ。
あの時も、ペナルティで労働してた時も僕は咲の為になんだってやるって勢いで通ってたし。
しばらくして、エイボンが声をかけてくれて目を開けた。
ジョンナムさんが尻餅をついていて蓮さんが鳥の姿で仰向けに寝転がっていた。
(いったい何があったんだろう?)
「なるほど。噂通り強いな。起きろ蓮。」
「う……。あの娘、まるで化け物だ。」とヨロヨロと飛ぶ蓮さん。
「なによぉ!?」と咲が怒る。
「ひっ!!」蓮さんは飛んでどこかへ逃げてしまった。
「さて、戻る。」とジョンナムさんは立ち上がってゲートをだした。
「あ!あの!!ありがとうございました!」と言うとジョンナムさんはふっと笑ってAI達と共に去って行った。

僕と咲も部屋に戻った。
部屋に戻ってからさっきの練習試合の映像を見てみると、ハクがジョンナムさんの背後をとっては正面からハナビが攻撃していた。チューチェさんは咲にボコボコに殴られてるし。
酷い試合だ。
「また試合みてるの?」
「あ、うん。目瞑ってて何もわからないから。」
「今日は楽勝だったなー。今のところ、はやたん最強だった気がする。正直ハナビの攻撃がなかったら、私勝てなかった気がする。相手の魔力切れで最後は勝ってたのかもしれないけど。」
「百鬼夜行シリーズ強そうだね。」
「それはAIの気持ち次第だと思う。AIは気持ちが強ければ強いほど、強くなるから。」
「へぇ。」
「そろそろ寝よう?疲労バフついてるし。」
「あ。うん。」
そうだった…同じベッドなんだった。き、緊張して眠れないんだけど。
咲はすやすやと眠る。これがリアルに復帰して一番やりたかった事の一つだけど、こんなにドキドキするなんて。
咲はドキドキとか、しないのかな。まぁ、中身が大人の女性だから、そいう感じにはならないか。
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