非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

文字の大きさ
上 下
65 / 92

65p【GMが用意した武器】

しおりを挟む
「…………」

 魔術師の男の、後ろ姿を睨み付ける。そして、その男に手を引かれる、戸惑った表情の女学生に視線を向けた。

「(アイツは……)」

 初めは変なヤツだと思っていた。妙に俺に突っかかってくるし。だが、それらはきっと彼女なりの心配だったに違いない。態度の忠告とか。
 彼女に出会ったのは運命だと思った。さっき、あの腕をつかんだ時に、そう感じた。
 触れた温かみが、もっと触れていたいと思えるようなその心地が、間違いなくそうだと思わざる得ない。

 彼女に触れた手を握り締める。
 あの女学生はなぜか、やけに背の高い視察の魔術師に付きまとわれているようだった。確かに、顔も整っている……というより、整い過ぎて作り物のような顔をしているし、それでいて明るく素直な様子だからな。
 よく一緒にいる友人達との会話によると、少しおっちょこちょいで天然な部類に入るらしい。
 見た目の良さや性格の可愛らしさも相まって、男達もあまり放っておいてくれなさそうだ。しっかりと好意を示しているヤツや遠巻きに見ているヤツも割といるようだし。

 そして、あの魔術師の男は危険な部類だ。妖艶、というか怪しい雰囲気の、女性のような顔の男。
 初めて見た時からあの男は危険だと、そう直感が告げていた。
 だから、思ったのだ。あのまま、彼女のそばに置いているとやがて彼女が危険な目に遭うだろうと。

「(彼女は、守らなければならない)」

 他にもならない、『勇者』である自分が。

 今まで『勇者』として生まれ、前世の記憶を頼りに生きてきた。これからも、そうするつもりだ。

「(……それの中に、アイツが加わるだけだ)」

 二人の後ろ姿は、いつのまにか見えなくなっていた。

×

「(どうすれば、アイツをあの男から守れるだろうか)」

 そう考えながら、街の中を歩いた。今日歩いた街の中には剣やナイフなどを販売している店の姿はなかったものの、きっと何処か少し離れた場所で売られているはずだ。

 俺が通っている魔術アカデミーには、門限が存在している。夕方の6時だ。時間の感覚は前の世界とほとんど同じで、俺は特に不自由は感じていない。
 なぜ夕方の6時までに帰らないといけないのかというと、それは簡単に、魔獣が出るからだ。逆を返せば、魔獣を倒せるならば夕方6時を過ぎても外を出歩いてもいいわけだが……。

「(門限を破るのは、あんまり良くないよな)」

 うっすらと、赤く色付き始めた空を見上げる。前世の世界よりも、紫っぽい色の夕焼けだ。

 記憶の中の世界は、この世界とは違い魔法はなかったけれど、魔法に似た科学力があり、それはこの世界のものを凌駕していた……ような気がする。この世界にも家電製品のようなものはあるが。

「(テレビのような、画面に映像を映し出す技術はあるんだよな)」

 店じまいをするのか、映像を映し出していた看板の色が消えた。

 逆に、何時から外に出ても良いことになっているのかというと、法律では『太陽が出始めた頃』となっているらしいが、魔術アカデミーでは朝5時からだ。

「……!」

 そこで、ふと彼女を守る方法を思い付いた。

 身体を鍛えて、自分自身が更に強くなれば良いのだと。
 とりあえず、体力をつける為に早朝の走り込みを始めることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...