非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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60p【元セーレ】

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床は71階になって止まり、またもや人型の中身が入ってそうなNPCが現れた。
「ん?セーレ?お前何してる?」と敵は真っ先にセーレさんに問う。
「すまないけど負けてくれないですか?ダンタリオン、僕はこの子のお願い事を聞いてる最中でして。」
「はぁ。戦っても願いを行使してる間は負けが確定されているな。」と深い溜息をつきながらヤレヤレと言った感じのダンタリオン。
目の前の敵は細いレイピアのような剣を自分に刺して自害した。
「え…。」
それは。とても衝撃的なシーンで目を大きく見開いてしまう、
71階クリアの報酬画面がでて床がゴゴゴゴと音を立てて動き出した。
「願い事を叶えてる最中は戦ってもプログラム的に勝ってしまいますからね。」
(ぷ…プログラム的って何ですか!?)
72階大きな大蛇が舌をチロチロさせていた。
「何も言う事はない。殺せ。」とシュンとした様子の敵。
「すまない。アンドロマリウス。」
セーレさんはどこからか取り出した剣で大蛇を刺した。
しばらくすると72階のクリア報酬画面が届いた。そしてまた床が動く。
「不思議ですね。何億人とこの塔に挑戦してるはずなのに。こういう事広まったりしないんですか?」
「ここをクリアできるような方はお強いですから、僕の力なんていらないでしょうし。ほら それに、中の人によっては願いを叶えない人もいます。例えば、美女にしか叶えない方とか。」

中の人って…

「あの、貴方はどうなんですか?どうして叶えようと思ったんですか?」
「はっはは。リキさんは本当に面白いですね。AIの僕にここまで興味を持たれるなんて。僕はただマニュアル通りに動いてるだけです。」
「え?」
「もとはただのAI。マニュアル通りに動いているだけなんですよ。セーレはどんな望みも叶える悪魔なんで。ちなみに僕が担当した中ではこのようなクリアをされた方はリキさんが初めてですよ。」
(これ聞いて良かった話なのかな。本当に不味いもの聞いちゃった気がするんだけど…。)
「僕に付き合わせてしまってすみません。早く帰りたいでしょうに。」
「本当に、AIごときにどこまで気を使うつもりですか?あぁ、そうですね。僕は普段、初心者の町の中央、大きな噴水の近くで綿あめを販売してるNPCの中に入っています。もし、AIにしたいのなら声をかけてください。」
「え!?良いんですか!?」
「もちろんです。どうせ使われるならムーンバミューダ社ではなく、リキさんが良いです。」
「わかりました。じゃあ、AI拡張ができたら声かけますね。」
「なるほど。」
「ん?」
73階、最上階。
フランシスコザビエルみたいな見た目の青いローブを着た人が立っていた。
「よくぞここまで登られましたね。おや、セーレ。まさか。」
「はい、ソロモン王。この者の願いを叶えております。」
「では、私は死なねばならないのですね。」
「はい。それと報酬に100BPを与えてあげてください。」
(え!?セーレさん何言ってるんだ。)
「それも願いか?」
「はい。」とセーレさんにはニコリと笑う。
「良かろう。」
良いの!?どうなってるんだろうこのクエストは。
クエストが終わり、最後にセーレさんが「待っています。」と僕に耳打ちをして僕は塔から出された。

ソロモンの塔を出ると咲とシンさんが立っていた。
「あれ?シンさん…。」
「ヒルデさんに目を付けられちゃってるし念のため護衛にね。」とシンさん。
「というか咲。タクト使ってた?」
「うん、物理と魔法交互に無効になるモンスターがいて、そのままりきのところへ帰すの忘れて使っちゃってた。」
「何それ。じゃあクリアできなかったんだ?」とシンさん。
「いえ、えっと、サモンゲートで千翠さんを20分召喚できて、なんとか70階まで手伝ってもらいました。その後は70階のセーレさんが一緒に戦ってくれて、ほとんど不戦勝でクリアはできました。」
「…は?」とシンさんと咲がハモった。
「え?」
「めっずらしー!!!都市伝説だよソレ!!」と咲が驚いた。
元GMの咲が都市伝説っていうくらいだから相当レアな話なのかな。
「チッ。ほんっと、はぁ…。70階のセーレだけは、死ねばいいのに。」とシンさんの目が憎悪に満ちていた。
(どうしたんだろう?シンさん。凄く毛嫌いしてる感じが強いけど。)
「あ、そうだ。そのセーレさんがAIにしてほしいって言ってたんだけど。」
「ずぇったいダメ!!!や・め・と・き・なっ!!!」と、シンさんが珍しく感情を剥き出しにしていた。
「え、ダメですか?」
「ダメ。AIはタマゴが一番だから。僕を見なよ。優秀でしょ?」
(シンさん、いったいセーレと過去に何があったんだ!?)
「うん!確かに、シン君凄い優秀だね♪」と咲。
「それに僕はシンカよりも優れてる。」と少し拗ねたような口調になるシンさん。
「だ・れ・が・自分より優れてるって?」とシンカさんが真後ろにいて驚いた。
「うわっ!?Σなんでここに…。」とシンさんは飛びのいて驚く。
「新人の面倒みてたら、その新人の足元に穴があいたんで助けて変わりに自分が落ちてみました。サモンゲートってどうやって強制召喚されるのか気になってたんですけど、足元に穴があくんですね。そりゃ逃げれませんよね。」
「そうだったんですか、すみません。つい、うっかり。」さっき僕うっかり口に出しちゃったっけ。
「で?シン。自分より優れてると?」
「どうみたってそうでしょ。マルチタスクもだし、体力も魔力も知恵もある。」
「待ってください!!二人とも!!二人は同じタマゴから生まれたんじゃないんですか?喧嘩する必要ないじゃないですか!」
「そういえばシン。これは何の話からこうなったんです?」
「別に。りきが70階のセーレをAIにするとかいうから。」
「へぇ。自分以外にもいるんですね。そういうもの好き。」
「自分以外?それって、もしかしてシンカさん70階のセーレやってたんですか?」
「はい。まぁ、ルナっていう女神に出会ってしまって、転生しちゃいましたけど。」
それでシンさんあんなに否定してたのか!!!

(まぁ、シンさんには悪いけど、約束してしまってるし、100BPも渡されてしまってるから、AIにするしか選択肢はないんだけど。まさか、シンカさんもセーレだったなんて。)
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