非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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52p【千翠vs咲】

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「久しいですね。現実世界の朝、闘技場で試合なさったそうですね。」
「あ、はい。AI咲のおかげで…なんとか勝てましたけど…。」
千翠さんを部屋に招いて椅子に座ってもらった。
「なんですか?この部屋は。」と居心地の悪そうな顔をする千翠さん。
(千翠さん、やめてください。そんな嫌そうな顔しなくても。傷つきますよ…。)
「私の趣味。」と咲は言った。
「あぁ、これがリキさんのAIですか。」
「千翠さん。丁度良かった。このAIが賢者の書を欲しがってて、どうにかなんないですかね?」
「良いですよ。差し上げても。ただし、装備した状態で私に勝つ事ができればですが。」
「い゛。やっぱり地道にお金を稼ぐしか。」と僕は諦めようとすれば、咲がバッと立ち上がった。
「何弱気になってるの?戦おう!!」と言って咲が謎に燃えていた。
「え?でも、相手はヒルコさんより強い千翠さんだよ?」
「ねぇ。賢者の書を装備した状態で戦うんだよね?」
「はい、一度お貸し致しますよ。」と言ってニコリと笑う千翠さん。
「余裕よ。余裕。」と咲は謎に自信満々だった。
「え?」と眉間に皺を寄せながら不安になってしまう僕。

こうして千翠さんと咲が練習試合をする事になった。
さっきも使った練習場に4人移動して、咲は千翠さんから賢者の書を貸してもらって装備した。
「大丈夫ですか?賢者の書は魔法書ではありませんよ?」と千翠さんは少し声をはって確認をとる。
「そんな事!誰よりもわかってるんだから。」と咲は変わらず自信満々だ。

試合開始のカウントダウンがはじまった。

「春風のタクトといい、賢者の書といい…なんなの?」と隣にいるシンさんは僕に問う。
「…なんでしょう?」と困ってしまう。

カウントダウンが0になって、咲は賢者の書を開いてブツブツと何かを呟く。すると賢者の書から飛び出した七色の球体は次々「承認。」を出し、七色の球体が咲の中に入っていく。

「ほう、これはこれは面白い。」と千翠さんはニタァっと怪しく笑む。それから千翠さんも書を取り出した。
千翠さんの書から黒いキューブがとびだして、そのキューブは咲を飲み込んでしまった。

咲視点の画面では、広大な迷宮が広がっていた。
千翠さんはキューブに触れて「剣の雨」と呟いた。
すると、咲の視点では無数の剣の雨が降った。
咲は物凄いスピードで空から降る無数の剣の雨を避けて、迷路の壁をぶち破ってキューブから出て千翠さんを殴り飛ばした。
千翠さんは真顔だ。あんなに痛そうな攻撃を受けて真顔だった。
千翠さんは壁にぶつかって、別の魔法書をとりだして結界をはり、詠唱をはじめる。
咲は結界に手を当てて何やら言葉にならないような何かをブツブツと呟やき続ければ、結界がパリンと割れて、そのまま殴ろうとして千翠さんが咲の腕をぎゅっと掴み止める。が、咲は手が使えないなら足と思ったのが、素早く蹴りを入れて、そのまま体力を削りきった。

試合はそこで終了した。
「これは酷い。上限値超えですね。賢者の書で何倍にも膨れ上がったステータスでゴリ押しですか。」と千翠さんが口からタラリと血を流しながら言った。
「これ、もらってもいい?おじさん。」と咲はニッコリ微笑む。
「ええ、良いでしょう。差し上げますよ。」とニコリと笑う千翠さん。作られた二人の笑顔が恐い。
「千翠さん倒しちゃうとか、ほんと凄いね。本物のチートかな?」
「何したんだろ…。僕にも分からない。」
咲と千翠さんがこちらへ戻ってきた。

「お疲れ様です、千翠さん。」とシンさんは声をかけた。
「無敵の【冥界めいかい箱庭はこにわ】が破られるとは思ってもみませんでした。あと、相当な知能が必要な結界破りも普通にこなしていました。それに賢者の書の承認の確率はだいたい3%と言われています。それをメインで使う人も少ない。ですから、それを使っていると色々バレますよ。陽子さん。」と言ってニコリと笑う千翠さん。
「なっ!!」咲は驚いていた。僕も口をあけて驚いてしまう。
「もしかして幹部クラスの人はみんな色々知ってたりするんですか?」
「いえ、これはルナと一緒に暮らしてた私くらいでしょう。」
「千翠って…もしかして、神崎かんざきの本家側の人?」と咲。
「そうですよ。それから、賢者の書を使うのでしたら、武器製作ができる方に見た目の加工をしてもらった方が良いですよ。」
「やっぱりフラワーサンに行くしかないわね。」と咲。
「サンフラワーだから。」とシンさんが咲にツッコミをいれる。
「う、うるさいなぁ。」と顔を少し赤くして頬を膨らます。
「サンフラワーに何用ですか?」と千翠さんが聞く。
「知り合いが多分いるはず。武器制作できる子。」と咲。
「ほぅ。興味があるので私も参りましょう。」と言いながら千翠さんはホログラム画面を引っ張り出す動作をして、そこから操作してゲートを開く。
しかし、千翠さんの真後ろで、新たなゲートが開いて、そこからダリアさんがでてきて「千翠、きてくれ。」と言って千翠さんの袖をひっぱった。
「何です?今から用事です。」
「こっちも用事だ。」
「はぁ…。どうやら、同行するのは無理そうなのでお気をつけて。」と千翠さんはダリアさんの手によりゲートに押し込められて去って行ってしまった。

「千翠さん、忙しい人だから。」とシンさん。
「みたいですね。」
「それじゃあ、行きましょう!」

咲をパーティーに誘い直し、3人でサンフラワーへ移動した。
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