非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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42p【ダリア】

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しばらくして、ルナさんが眠ってしまった。

「完全に寝ました。」とシンカさんがギルド画面を確かめながら言った。
そういえば寝てたら睡眠マークがつくんだっけ。
「泣き疲れたのかな。」とシンさんがルナさんの側へいく。
「千翠め。自分達への嫌がらせとしか思えません。」と、すっかり元通りの姿になっているシンカさんは怒りを露わにする。
「まぁ。ちょっとはありそうだよね。」
なんか複雑な関係という事だけはわかった気がした。

「さて、昼食どうぞ。りきさん。」とシンカさんが冷めたパンをだしてくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」
冷めていても、目を見開くくらいに美味しい。

パンを食べ終えたあとで千翠さんからメールが届いて広間に来るように言われた。
次は千翠さんか、とちょっとどんよりした気分になった。
「何?次がどうしたの。」とシンさん。
「千翠さんから呼び出しメールが届いてしまいました。」
「僕が広間までついていくよ。シンカはルナの側にいてあげなよ。」
「言われなくとも、そのつもりです。」とシンカさんは眠っているルナさんの手を握る。

シンさんと一緒に大広間へ行くと、千翠さんと幹部達がそろっていた。
Shiftさんもいるけど、用事って幹部会議か何かだったのかな。
「お待たせしました。」
僕が来たと同時に幹部達はゲートでどこかへ行ってしまってキョロキョロとしてしまう。
「きましたか。あぁ、幹部達には丁度仕事を頼んでいました。お気になさらず。リキさんに頼みがあります。」
「えっと、なんでしょう?」
「ダリアを連れ戻すのを手伝ってもらえませんか?」
「え?僕がですか?会ったことないんですけど。」
「大丈夫です。ヴァルプルギスに備えて、どうしてもギルド員を増やす必要と教育する必要があります。ダリアがいなければ今日のようにスパイが混ざるかもしれません。ですから、行きましょう。」
何が大丈夫なんだろう?と思ってしまったけど、行きましょう と言われてしまっているので、シンさんと別れて渋々ついていく事にした。
パーティーを抜けて千翠さんとパーティーを組みなおした。
「ありがとうございます。リキさんなら、ダリアを連れ戻せるかもしれません。」
「あの、ダリアさんって確かAIの勧誘をしてるんですよね?」
「ええ。AIは無料ではない事をご存知ですか?」
「あ、はい。企業が卵とか成長してるAIを売ったりしてるんですよね?」
「ええ。そうです。では、数千万enクラスのAIが何らかの理由で契約切れになっていたらどうしますか?」
「勧誘します。てことはダリアさんは…それを狙って?」
「はい。矛盾シリーズの矛型のAIですね。現実世界1日だけの販売でしたから相当レアで価値も高いとなると当然でしょうね。」
「なるほど、連れ戻せる気全くしませんけど頑張ってみます。」
「では。」
千翠さんが異形の町のゲートを開いてくれた。
ゲートをくぐると、まるで夢の国のようなキラキラした遊園地が広がっていた。
「え?ここが異形の町ですか?」
「ええ。」
千年さんのように、名前のないAIが普通に歩いていた。
頭の上に視線をやるとAIとだけ表示される。
「リキさん、ついてきてください。」
千翠さんについて歩いていくと、ピンク色の猫にひたすら話しかけている人の前で立ち止まった。
その人は美しいプラチナブロンドのボブヘアーで、碧眼、服装は貴族が着てそうな綺麗な服、恐らく男性?
「ダリア」と千翠さんが声をかける。どうやらこの人がダリアさんらしい。
「千翠…。」
「ミルフィオレにスパイが入った。お前の班に紛れ込んでいた。」
「……まじ。……チーロ。俺と一緒にきて。」とダリアさんはまたピンク色の猫に話しかける。
「にゃー…。」猫は不満そうな声をだす。
よし、困った時はGMアイテムだ!!と思って花びらを猫に見せてみた。
「にゃ?」………何それ?みたいな感じでガッカリした。
「ダメでしたか。」と千翠さんもGMアイテムに期待を持っていたようだった。

「それをどこで?」と聞き覚えのない綺麗な声がして振り返ると、真っ白な髪の毛で肌も凄く白くて、まるでアルビノっぽい女性が立っていた。女性は美しい白いワンピースを着ていた。
「あ、え?」
「異形の町の王、AIココロ様です。」と千翠さんが教えてくれた。
「………それをどこで…?」とココロさんは僕の持っている花びらを見て言った。
「あの、現実世界の今日復帰したんですけど、ゲーム内だと一ヶ月とちょっと前ですかね。ログインしたらプレゼントでこれが届いてました。」
「名前は…。」
「リキです。」
「………それは春風のタクトですか?」
「え、あっ、はい。」
「使いこなせてますか?」
「はい。」
「………証拠は?」
この人って確か、ソルさんのAIだった人だよな。って事はみんなの名前も知ってる?
「ハル、フゥ、スゥ、ハナビ、エイボン、ハク、ウォール。」
「………どうやら、選ばれたようですね。何をしにここへ?」
「そちらにいらっしゃる、ダリアさんをギルドハウスに連れて帰りたいんですが、その、ピンク色の猫のAIと契約したいみたいで、ここから動いてくれないといいますか…。」
「…なるほど。血色ちいろさん、リキさんのお願いを聞いてあげれますか?」
「ココロ様、でも私は…もう。」と猫が喋って驚いた。
「一度だけ、もう一度だけ信じてみませんか?今は信じられなくても良いんです。ですが、私の願いです。それを信じてもらえませんか?」
「……三食昼寝つき。約束できる?ダリア。」と猫が言った。
「んー……。」とダリアさんは約束したくなさそうな顔をする。
約束できないんですか!?ダリアさん。チャンスなのに。
「努力はする。忘れてたら言ってほしい。」
「忘れないで!私が欲しいんでしょう?私最強だよ?」
「う、わかった。でも、戦ってる時は許してください。」
「しかたがないにゃー。」
「お力になれましたか?りきさん。」
「はい!ありがとうございます。」
ココロさんはニコっ笑ってから、どこかへ去ってしまった。
千翠さんはダリアさんをパーティーにいれた。
「逃げねーよ。」とダリアさん。
「そう言わずに。りきさんのおかげで話がまとまったんですから。」
「……。」
ダリアさんと千翠さんと血色ちいろさんとで初心者の町へ行ってAIの契約を見届けた。
「やっと俺のものになった…。もう離さない。ちいろ。」と言ってぎゅっと猫を抱きしめるダリアさん。
「ちょっと信じらんない。名前を変えるなんて!!」とちいろさんが怒っていた。
「ちいろさんは前の主人の名前を憶えてるタイプですか。」と千翠さんが言う。
「ええ。」
「漢字もひらがなも変わらない。海外ユーザーから見たら漢字はひらがなに変換されて見える。」とダリアさん。
「そういう問題じゃないの!わびさびのわからない男ね!」と、ちいろさんはどうやら漢字の血色から、ひらがなのちいろになった事によってわびさびが無くなったと怒っているようだった。
「それより、これ飲んで。」とダリアさんは赤色の薬の入った瓶をちいろさんに渡す。
「何よ、これ。」と言いながらちいろさんが飲むと、姿が変わり擬人化して可愛らしい猫耳の生えた女の子になった。
「AI経験値ポーションですね。」と千翠さん。
「ああ。この方が早い。ちいろの為にいっぱい貯めてたんだ。」と微笑むダリアさん。

尽くしてるように見えて身勝手なような…。
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