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33p【花の部屋】

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「え!?あげるって…お金は?借金地獄になるんじゃなかったんですか!?」
僕はつい焦って目をグルグルと回してしまう。
「はい。面白いくらい百面相してたものでつい冗談を。お代はいらないですけど、明日から黄金洞窟籠ってくださいね?」
「え?ど、どうしてですか?」
「どうしてってそりゃぁ、自分が面白いからですけど。それだってオークションにだせば100万で取引されるような最高武器ですよ?」
「わかりました。籠ります。」
ホロリと涙が出てしまう。
そしてギルドハウスに戻って晩餐が開始されるのを待った。

「よぉ、リキ。早ぇじゃねぇか。」とシュガーさんが僕の隣に座った。
「シュガーさんも早いですね。今日は何をしてたんですか?」
「ちょいとダリアの様子を見にな。」
「良い機会だ。時間もあるからな。異形の町について、ちょいと語っとくか。」
「ほんとですか!?気になってたんですよ。どうして契約解除されたAIがバトル王としているのかとか。」
「それはGMがAIのお試しで1プレイヤーとしてプレイしてた時期があってな、その時の試作AIがそのバトル王になってるんだ。試作AIは記念に残されてんだ。つまり完全な公式のAIってわけだな。」
「そういう事だったんですね。」
(僕はそこにいく機会があるのかな。でも、MAPを全部解放しないと、いけない場所があるらしいから、いつかはいくことになるんだろうな。)

その後、すぐに晩餐が始まり、終わってすぐに僕は部屋に戻った。

自室について、ドアノブを触った時に思い出した。
そうだった。部屋を拡張して家具も一式セットで買ったから勝手に配置されてるんだった!!
部屋に入ると、夜だった。

いったい何を言ってるんだ?って感じかもしれないけど、天井には満点の星が広がっていて、月が出ていた。
とりあえず電気をつけた。
床は綺麗な芝生、テーブルはミカンの先端を切って下の部分を置いたようなデザインで、果肉も綺麗にデザインされてるし、タンスは白色であちこちに赤やピンクのバラが散らばっている。
天井は爽やかな青空で、壁…どこ!?だから電気を消した時、夜になったのか。
窓が変なとこにポツンとあるし、透明な壁もある。僕これ、間違って絶対ぶつかる。
椅子は蓮の葉っぱっぽいデザインで、それからシャワールームも、白いバスタブには既にほかほかの湯船。それから薔薇が…っ!?これが薔薇風呂。
で、一番大事なベッドは天蓋付きのフカフカそうだ!たくさん回りに花が散りばめられてるベッドだった。花は全てホログラムのようで触ると透ける。

完全に女の子の部屋じゃん!!!

まずはゆっくり薔薇風呂に浸かる事にした。すると、僕についていた疲労バフが消えた。
疲労回復効果でもあるのかな薔薇風呂って。
それからパジャマに着替えてベッドに入った。あまりのフカフカさに「ふかふかだぁ…」と声にでるほどだ。
するとハナビがでてきて「あ…魔導書。」と魔導書の存在をすっかり忘れてて急いで装備させるとハナビはぎゅっと魔導書を抱きしめて消えていった。
あとは、あのジョウロ。スゥに持たせてみるかな。スゥに世界樹の雫を装備させてみると。
「ますたぁ~、スゥは、スゥはこれを前にも持ったのですぅ。」とジョウロをぎゅっと抱きしめて涙を流すスゥ。
「そっか。じゃあこれはスゥのジョウロだったんだね。戻せて良かった。」
「ありがとうなのですぅ♪」とスゥは泣きながら笑顔になった。
「あのさ。スゥ前のマスターの名前ってソルって名前の人だった?」
「リキさん、ごめんなさいですぅ。言えないんですぅ。」と申し訳なさそうな顔をするスゥ。
「わぁ!!だよな!ごめん、聞いちゃって。いいんだ。スゥ。気にしないで。」
「りきさん、スゥは、前もこの、お花が沢山なお部屋にいたですぅ♪」と言って、スゥは消えていった。

前に?じゃあ、シンカさんは分かっててこの家具セットにしたって事か?
ソルさんって何者なんだろう。男なのか女なのかもわからなかったけど、この部屋って事は女性なのかな。
それから僕は何もかも忘れて、ふかふかなベッドに包まれてゆっくり眠った。


【………約一ヶ月後………】


僕は黄金洞窟に約一ヶ月という長期間籠り続け、黄金洞窟が期間終了となった。
「ふっ、最初は立ってるのがやっとだったというのに、良く成長しましたね。」と千翠さんに褒められるまでになった。
「凄いですね。リキさん。やり始めの1回だけ強制ログアウトしちゃってましたけど、すぐに復帰されて、それからは失敗無しで良く頑張られました。」と千翠さんの副官福蛇ふくださんにも褒められた。
とりあえずクエストが終わったから地面に座った。
「りきさん!凄いです!」と声をかけられて「ありがとう。」と言おうと顔をあげると、水色の髪のルナさんを中学生にしたようなAIが目の前にいた。でも名前に澪って書いてある。
「え?もしかして、澪さんですか?」
「はい!今回の経験値でレベルアップしました!」
ほんとにAIは成長していくんだ、と驚いた。
「誰かわかりませんでした。えっと、おめでとうございます。」
「ありがとうございます!」とニッコリ無邪気に笑う澪さん。
あぁ、たしかに澪さんがルナさんみたいになるのかと思うと惜しい気がする。
僕は休みなく一ヶ月も籠り続けたのか。まぁ、一回だけ強制ログアウトをくらってしまったので一ヶ月まるまる籠ったわけではないけど。
そろそろ現実世界の方に戻らないといけない気もする。スマホで現実世界の時間を確認する。
「ん?どうかしましたか?」と千翠さんに聞かれた。
「いえ。現実世界は何時かなと思って…。」
「アップデートごとに時間の圧縮が進んでいますから、365日が1分とかになっていてもおかしくはありません。恐いゲームですね、本当に。」
時間は22時だった。
「あ。リキ君もしかして時間表示つけてないの?設定でちゃんと時間表示つけておいた方がいいよー?現実世界に戻ったらおしっこ漏らしちゃってるかも。」とコアラの着ぐるみを来た副官さんに言われた。
「ゴホンッ。その心配はないでしょう。体に異常があれば強制ログアウトになりますから。」と千翠さん。
「あはは…。ゲーム始める前にトイレには行っておいたんで大丈夫だと思います。」
「ですが、常に表示にしておいた方が良いですよ。たまに現実世界と同じ時間の過ぎ方をする事がありますから。」
「あー!あったねー。急いでログアウトしたけど朝になってて、寝不足で仕事いったよぉ。」
「やっときます…。」
僕は急いで常に表示にした。すると腕を見ると小さなホログラム画面が現実世界の時計を表示していた。
「邪魔になるかと思ってましたけど、腕時計みたいになってるんですね。」
「そりゃ時計だし。」
いつも通りギルドハウスに戻って晩餐を終え、ベッドに潜りこむ。このベッドのおかげで一ヶ月耐えれた気がするとベッドに感謝した。

あの埃っぽい匂いも今ではすっかり消えて、花の甘い香りがするし。
この匂い好きだ。咲を感じられるから。

もう…少し…もう少しだから…待ってて。

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