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21p【強すぎるAI】

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「大丈夫?買い忘れとかない?」
「ないです。多分。」
「ふーん。言っとくけど、畳はここの限定品だから部屋の床を畳みにしたいなら買っときなよ?」
「畳の予定はないです…。」
「じゃあ何にする予定?」
「まだ決めてなくて。AIが手に入ったら、その子と一緒に決めようかなって。」
「へぇ。部屋は一緒にする予定か。いいね、それ。」と言ってシンさんは少し微笑んだ。
(うわー…。これ絶対ルナさんと一緒の部屋が良かったんだ。シンカさんにその座をとられたんだきっと。僕の勝手な想像だけど。)

「わっ…。」
江戸の町を抜けると、砂漠が広がっていた。
「あ、マント装備してる?」
「はい、ちょっと分かりにくいと思いますけど、マントつけてるんですよ。千翠さんに一式もらったので。」
「そう。ここから先は状態異常〔暑〕にかかるから。マント装備してないとじわじわ体力が削られるんだ。」
「え?0になったらどうなるんですか?」
「は?0にはならないよ1になるだけ。そんな体力でバトルとか申し込まれたら一瞬で終わっちゃうよ?」
「うぅ。初心者殺しな場所ですね。ここ。」
「初心者はだいたいチュートリアル学校で訓練されてから、ここまでくるから、よっぽどの馬鹿じゃないと初心者では辿りつけないよ。」
いいなぁ。新規って。
シンさんは素朴でボロボロな灰色のマントを羽織った。なんかシンさんらしくないというか。
ザクザクと砂を踏む音がする。砂漠なんて歩いた事ないけど、このゲームの事だ、絶対リアルと同じ感覚なんだろうなぁ。
そんな事を考えながら進んでいると。突然シンさんの前に《バトルに申し込まれました・カウントダウン開始》と表示された。
「初心者のマントつけたら馬鹿が間違えて申し込んでくるかなーって思ってつけてたけど案の定。」
「え…わざと!?」
「そう。ルナに少しでも手土産を送りたくてさ。」シンさんはそう言って純白で金色の刺繍がところどころ施されているマントに着替えた。

「は!?高難易度クエスト[ソロモンの宴]のレアマント!?」と青い髪の男性は姿を現すなり目を大きく見開いて腰を抜かしていた。

「残念だったね。武器は何にしようかなー?あ、最近手に入れた武器にしよ。試してみたかったし。」と言ってシンさんの手に一冊の程よく分厚い本がでてきた。シンさんはその本を開いた。
「そ、それは!!ピラミッド最上階の高難度クエストのレア武器じゃねーか!!」と敵の男性は顔を青くした。
「クスッ。さっきから良くわかってんじゃん。行商人でもやってたの?」とシンさんは敵に問う。
「あ、あぁ。レア武器を集めてはオークションを開いてた。お前の主人ってまさか、ミルフィオレのルナか?」
「キミさぁ、僕の前で軽々しくルナを呼び捨てにするなんて良い度胸してるね。」とシンさんは笑顔で言った。
「ひっ!!ちょっ!!待ってくれ!!!」
「待ったところでさ。勝敗なんてついてるってわかってる?」と、次はとても意地の悪い笑みを浮かべて無数の炎の球体を浮かび上がらせてそれを敵にあてていく。
「うあああ!!!」と男は悲痛の叫びをあげた。
「ふーん。これが1階の技か。見た目の割には体力減ってないね。2階の技にしてみるか。」と言って、次は水の球体を浮かびあがらせてそれをまた敵にあてた。
「ぐあああ!!」と男は悲痛の叫びをあげた。
「うーん。いまいちかな。」
「殺せ!!もう負けでいいから!!一発で!!!」と男はシンさんに懇願した。
この世界の痛みは現実世界とかわらないくらいに痛いと感じる。錯覚なんだろうけど、ほんとに痛い。
「えー、火と水ときて最上階ってなると相当ダサイのがでてきそうだから嫌なんだけどなぁ。ま、いいか。」次は本から虹色のひょろっとした龍が飛び出して敵に向かっていき、体力を全て削り切った。
シンさんの目の前にWINとかかれた画面がでていた。

「だぁぁぁぁぁ!!!痛かったぁぁ。」と男は仰向けになって力つきていた。

「虹色の龍か。まぁ予想はできてたけどさ。さ、いくよ。」とシンさんはスタスタと次の町へ向かって進みだす。
仰向けで力つきてる男が少し気になったが遅れまいとシンさんの隣を歩く。
「シンさんって、魔法使いなんですか?」
「まぁ。単体ではそうだね。でも、本職は結界はったり、防御魔法かけたりのが得意。サポーター的な。」
確かに、パジャマクエの時のシンさん凄かった。あんな広範囲に結界はって、シンさんが凄いのかシンさんの武器が凄いのか。」
「僕とシンカって同じシリーズの色違いみたいなタマゴから生まれててさ、まぁ、矛盾ほこたてシリーズっていうんだけど。そのタマゴから生まれたAIは武器か盾に変身できて…ご主人様の装備にもなれるんだ。」
「へぇ。AIにも色々あるんですね。」
「クスッ。ほんとに何も知らないんだね。君は?AIどうするの?」
「僕は、近所の花屋さんのホログラムAIをこっちに引き込もうかなって思ってます。バトルポイントがたまったらAIチップを譲ってくれるそうなんで、それがどうなるか全く未知の世界ですけど。」
「ふーん、タマゴ以外のAIはだいたい性格とか顔や髪型が決まってて、知能も低い。設定を細々していかないと、タマゴは持ち歩いてるだけである程度その主の持ってる知識が得られるし。やっぱりタマゴにしない?強いよ?」
「それでも、僕は彼女以外考えられないんで。設定頑張ります。」
「自分で設定しちゃうとさ、自分に寄っちゃうからそれが嫌な人の為に委託育成とかもあるんだ。僕がそう。千翠さんに育ててもらったんだ。そのAIの事、彼女にしたいならそれもありじゃない?」
「んー、でも僕は手に入れたらきっと、絶対手放したくないから自分で育てようと思います。」
「あっそう。君みたいなユーザーがもっと増えればいいのに。僕もルナに育てられたかった。」
シンさんって、めちゃくちゃルナさんが好きなんだなぁ。

それから雑談しつつも、シンさんは何度かバトルを申し込まれていた。もちろん全勝利して次の町に着いた。
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