非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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17p【ヴァルプルギスについて】

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「食事の用意ができました。って!自分がいない間に何ルナを拗ねさせてるんですか?それと、シン、配るの手伝ってください。」とシンカさんが言うとシンさんが無言で手伝いにいった。
テーブルに豪華な食事が並んだ。
シュガーさんとガウルさんは速攻ガツガツと食べ始めた。
「あなたも遠慮なく食べて?シンカの料理はとっても美味しいから。」とルナさんに言われて、いただきますと言ってから食べた。
ほんとに美味しい。ずっとゲームの世界にいたくなっちゃいそうだな。
僕がやってた時はこんな機能なかったし、もっと簡単なバトルだけで、こんなに覚えないといけないものが多かったりとかなかったのにな。

「それよりルナ、もしかしてヴァルプルギスの戦場にスタメンとしてりきを連れて行きたいのか?」とシュガーさんが食べながら聞いた。
「ええ。現実世界の4月30日と5月1日に開催される予定の、ギルドでやるモンスター討伐イベント【ヴァルプルギス】にね。」
「き…聞きたくない!!まだ現実世界では半年以上は時間がある!!!」とガウルさんが頭をかかえた。
「え?…そんなに大変なイベントなんですか。」
シンさんは何かをもぐもぐと食べていて、それをゴクリと飲んでから「僕らAIですら躊躇したくなるイベントだよ。」と言った。
みんなの空腹バフが消えていく。
「ガウルさんは次で4回目のスタメン参加になるんですかね?ご苦労様です。」とシンカさんがガウルさんの肩をポンっと叩く。
「ヴァルプルギスはねぇ、現実世界24時間まるまるのイベントでゲーム内では数年?もしかしたら24時間かもしれないけど、時間圧縮は変動があってわからないのよ。でも毎日17時間は狩り続けてもらう事になるわ。」
17時間!?それを数年!?
「それから、その日、日本人は全員現実世界の千翠の家もしくは千翠の家が経営する病院で安全にプレイしてもらうわ。」
「え、泊まりですか?日本人全員?しかも千翠さんの病院って、ほんと何者なんですか…?」
「さぁ?秘密。海外の人は海外用の拠点があるの。」とルナさんは長い髪を耳にかけた。
「あぁ。りきさんは特別加入だったんで全然そこらへんのルール知りませんよね。うち、ミルフィオレでは長期ギルドイベント発生時は各拠点で泊まる事が決まっていて、それができない人は加入させてないんですよ。」とシンカさんが説明してくれた。
「うちはめちゃくちゃ長いよなぁ、加入までの説明が。よその倍はありそうだな。」とシュガーさんが頬杖をついて喋った。
「はい、これルール書いた紙。暇があったら読んどいて。」とシンさんに1枚の紙を渡された。結構色々あるな…。
「大手ギルドはどこもこんなもんよ。どうせバックには絶対金持ちがついてるんですから。」とルナさんは食事をとりはじめた。
「で?りきさんは泊まりは大丈夫ですか?」とシンカさんが僕の後ろにまわって訪ねてきた。
「交通費に自信がないです…。」
「それなら心配ありません。千翠さんが出してくれます。ゲーム内でのお金は現実世界でも使えますから。」
「あ、なるほど。そうでしたね。」
千翠さんって本当に何者なんだろ。
「そういえば千翠は?」とルナさんがシンカさんに聞いた。
「千翠さんは【異形の町】へ行くってルナが寝てからすぐに出ていきました。」
「異形の町は町ってついてるけど大きな国でさ、いらなくなって捨てられたAIやご主人様が帰ってこなくて行き場のないAIが行きつく国なんだ。」とシンさんが憂いを帯びた顔をして話す。

まぁ、AIにとって、いつかは行きつく場所なのかな。AIに歳はないけど僕らは歳をとっちゃうし。
「AIって捨てる事もできるんですね。」
「最初の町のムーンバミューダ社に行って色々書類をかいてやっと捨てる事ができるのよ。」
「捨てられたAIは名前がなくなるんだ…。」とシンさんが言った。
「シー…ン、そんな顔しないで。私は絶対に捨てないし、それに人間よりもアナタを愛してるんだから。ね?」と、いつの間にかルナさんは立ち上がってシンさんを後ろから抱きしめていた。

「おい、シン。そうやってルナに甘えようとするなよ?」とシンカさんがドス黒いオーラをだしてシンさんを睨む。
「いっ!?…別にそんなつもりは。」とシンさんが顔をそらす。

そこへ千翠さんがゲートで帰ってきた。

「…ずいぶんと人がいますね。」千翠さんの隣にはAI澪がいて、主マークで千翠さんのAIな事がわかった。
「おかえりなさい、どこにいってたの?」とルナさんが千翠さんに聞いた。
「ダリアに会ってきた。ヴァルプルギスまでには帰るそうだ。」と千翠さんは椅子に座った。
「ダリアはね、欲しいAIがいて、でもそれは捨てられたAIでね。ずっと異形の町でその子を勧誘してるのよ。」とルナさんが説明してくれた。
「捨てられたAIを自分の物にすることもできるんですね。」
「でもそれは大変だ。AIの心は人間と一緒と考えていい。だから心の傷を修復するようなもんだし大変だ。あと手続きもあるし。」とガウルさんが言った。
「まぁなぁ。持病とかでどうしても手放さないといけない奴とかもいるからなぁ。じゃ、俺は先に部屋に戻るぜ。」シュガーさんはそう言って席をたった。
「…俺も…疲れた。ほんとに。ログアウトするかも。」ガウルさんも席を立ってシュガーさんと一緒に大広間を出て行った。
「……千翠さん、嫌われてます?」とシンカさんがボソっと言った。
「なっ。……コホンッ、クエストの後で精神疲労したのでしょう。」と千翠さんは顔を引きつらせながら笑む。
「AIってヴァルプルギスには絶対必要だから早くアナタにもとってほしいのよ。」とルナさんが言う。

「ヴァルプルギスでは一人が約17時間ダメージを出し続けなければいけません。休憩中はAIが変わりにダメージを削る事になります。」千翠さんはAI澪にお茶を煎れてもらっていた。
「うちでAIもってないのアナタだけだから、早く頑張ってね。」ルナさんはニコっと微笑んだ。
「あ、はい。装備とか揃えてもらったんで、なるべく早く手に入れるように頑張ります。」
それから少し体験した事とか雑談してギルドハウス内の自分の部屋に戻った。

すぐにコンコンとドアをノックされる音が聞こえて、ドアを開けてみるとシンさんが立っていて「明日起きたら次の町いくから。」と言われた。

「はい、よろしくお願いします。あの今日はクエストありがとうございました。」
「寝心地最高だから、早く着替えて寝るといいよ。」と言いながら去っていった。



…そうだ。
天使のシルクパジャマを装備してみると、肌触り最高で布団と良くあう着心地だった。
でも、ただのシルクでできた無地のパジャマだなコレ。
今日もたくさん覚える事があった。AIのシステム。ヴァルプルギスの戦場。ギルドルール。異形の町。
布団にもぐりこむと、不思議とふわふわとした感覚になった。
なんだこれ…!ふわふわしすぎだし、パジャマの効果かな?
意識がすぐに途絶えて、とても心地のより眠りについた。

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