非力だった少年はチートで生まれ変わる。

無月公主

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7p【練習試合】

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【翌日早朝】

現実世界と変わらない朝を迎えて、現実世界と変わらない仕度をする。
服を着替えて、装備をつけて、それから朝食。ご飯を食べないと空腹を感じてしまって集中力が乱される。
ほんとにこのゲームは現実世界化しつつある。僕が始めた時は空腹なんてなかったのに…。
朝食はどこかお店を探してとるしかないかな。
部屋を出ると見知らぬ幼稚園児っぽい背丈の水色の長い髪のAIが食事をのせたオボンを持って立っていた。
「お食事でございます!」と可愛らしい声を発するAI。
「あ、ありがとう。君はだれ?」オボンを受け取った。
みおでございます!では、失礼します!」と言ってAI澪は走ってどこかへ行ってしまった。
誰のAIだったんだろう?
部屋のボロっちい木の机にオボンを置いて朝食を食べる。
パンとバターとスープにサラダ。凄く美味しい。パンはサクっとしてるし、スープは具沢山で深みのある味わいだ。
ゲームなのにここまで味がするのは本当に凄いと思った。昔は塩味のパンだけだったような…しかも食べても意味がない…。

食事を終えるとホログラム画面がでてきて[体力+1魔力+3]と表示された。
食事効果ってやつなのかな?

朝食をとった後、メールで指定場所の地図が送られてきて、すぐに指定された練習場へ向かった。
「きたか。」千翠さんはそういうと少し口角をあげた。
それにしてもこの練習場がずいぶん広い。学校の体育館4つ分はありそうだ。天井も見えないし、地面は綺麗に整えられた芝生のみ。
昔やってた時、何度か練習場を使った事はあるけどここまで広い練習場ははじめてだ。

背後でブォンっと鈍い音が聞こえて、振り返るとAIシンカさんがいた。
「すみません、もうすぐ来ます。」シンカさんは軽く頭を下げた。

しばらくするとルナさんが現れた。
背中に薄い水色の大きな美しい蝶々の羽をつけていた。
「お待たせ、じゃあ正式な練習試合をはじめましょうか。やった事はある?」
「ないです。僕がやっていた時は実装されてなかった気がします。えっと、どうすれば良いですか?」
「そうよね。ここ2、3年で色んなアップデートがきてるから…。正式な練習試合もそのひとつ。じゃれあいと違って体力がしっかり減って1になったら終わり。練習試合記録として映像が残るから後で見返す事ができるわ。それから、何かを賭ける事もできるわ。」
「賭け、ですか。」
「まぁ、今日は可愛い新人にビシっと私が強い事を証明して私を崇めてもらうための練習試合だから賭けものは無しよ!」
崇めてって、なるほど。
ルナさんがスマホを操作すると僕の目の前に《練習試合を申し込まれした》というホログラム画面と10秒のカウントダウンが視界に映った。
【YES】【 NO 】といったボタンなんてものはない。申し込まれたら受けるしかないようだ。

「さぁ!いくわよ!」と意気揚々とするルナさん。

僕はタクトを握った。
「僕が指揮をとります、りきさんは魔力注入に集中してください!結構すぐ無くなりますよ。」そう言ってエイボンは分厚い本を宙に浮かせた。
7人の小人達の頭の上に魔力ゲージが現れて、それから自分の魔力も表示された。
この魔力を上手く割り振っていかないと、自分も魔力切れをして終わってしまう。

僕はタクトを構える。

ルナさんが傘をくるくるとまわすと頭上から大量の氷柱が降ってきた。
「分解!」と言って小人のエイボンは太極珠たいきょくずで氷柱を溶かした。
だけど、ルナさんは容赦なく次から次へと氷柱を飛ばしてくるので「間に合わない!ハル!」とエイボンが指示すれば小人のハルが何かのオーラを纏わせて「了解♪」と言って、ぽかぽかと僕のまわりの温度がかわったと同時に雨が降り注がれた。どうやらハルの技は周辺の温度を強制的に変えてしまうようだった。強烈な温度にできないのが難点なようだ。「溶かすだけだからね。」とハルはさわやかな笑みを浮かべた。

《状態異常[水濡れ]》という表示が現れた。
水濡れ状態なった時は電気に気をつけないといけないんだっけ。

次にルナさんは髪の毛を飛ばしてきた…本当にあの髪の毛は武器だったんだ。
「氷属性の魔法なようですね。ハル!」とエイボンが言うとハルはその髪の毛を溶かしてくれた。
「はぁ!?どうなってんのよ!太極珠で溶かしてるわけでは無さそうね?」とルナさんは驚く。
どうして太極珠じゃないってわかったんだろう?と思うと「太極珠で氷を分解した場合、水にならず空気になるからです。」とエイボンからの答えが帰ってきた。
「あーあー。お得意の氷魔法が効きませんね。」と、観客席のAIシンカは半笑いだった。

「ハク、いけますか?」エイボンはちらりとハクを見る。
「誰に言っている。そんなもの余裕だ。りき!しっかり俺の魔力みとけよ!」と言ってハクは魔力を大量に消費して自身のオーラを凝縮させて刀のようなものを作り出して、凄い速さでルナさんを斬りつけにいった。
ルナさんも何かくると感じ取ったのか自身を氷で覆うが、エイボンがそれを解除させた。
しかし、ルナさんは目に見えない何かを素早く傘で防いだ。
「くっ!!なぜわかるっ!」ハクは顔をゆがめる。
「ちょっ、何よ!何か刃物を弾くような音がするじゃない!」と驚いてキョロキョロするルナさん。
「自動防御が発動しているみたいですね。」と言ってエイボンはモノクルをかけなおす。
自動防御はその名前の通り、自動で防衛してくれるスキルのひとつだ。さすが最強ランクの武器だ。
ルナさんの攻防一体の傘、あれを手に入れるのにいったいどれだけのお金もしくは苦労がいるんだろうか。
ルナさんはふわりと空を飛んだ。
「フゥ!ハクを浮かせて!」エイボンは絶えず指揮をとる。
ハクは何度も斬りつけにいくが何度も傘に阻まれてしまう。

「魔法がダメなら直接殴り倒すわ!」とルナさんは傘をたたんだ。すると傘の先端が槍のように鋭くなって構える。刺されたらかなりのダメージをおってしまいそうだ。
一旦空に浮いて、空から凄いスピードで僕を突こうとしてきた。

やばい…!!!そう思った次の瞬間、ウォールが身を挺して僕をかばった。
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