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第二十九話【セカンドシーズン】
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◇◇◇エルヒリア視点◇◇◇
いよいよプレジャデス王子とサノアルの結婚式が執り行われた。
この前日に聖女様から天命をいただいた私とジェイドの手の甲には天命の刻印が浮き出ていた。
手を繋いでその瞬間を待った。
誓いの言葉を交わし、指輪の交換を終え、誓いのキスをするプレジャデス王子とサノアル。
特に何の異変も起こらずに式を終えた。
ホッとした気持ちで教会を出た時に目の前に光輝く女性が現れた。
誰がどう見ても、それは聖女だった。聖なる光に包まれた金髪碧眼の見め美しい女性。
「ここは…どこ?」
ゾワリと嫌な汗が出た。始まってしまったんだ。第二シーズンが。
後ろから神父様が女性に駆け寄って「おぉ…聖女様…。」と泣きながら跪いた。
そこへ現王が駆け寄り「どういう事じゃ!先の聖女様の他にも聖女が?」と焦っていた。
ペタンと座り込む聖女ミカ様。
「天命が…。」
ジェイドが手の甲を見て驚いていた。刻印が消えてしまっていた。
一緒にいなければいけないという使命感がすっかり消え去っていた。残ったのはお互いを愛する気持ちだけだった。
「逃げよう。」と言って私の手を引いて、その場から逃げようとするジェイド。
「うん。」
◇◇◇ 24時間前 ◇◇◇
私とジェイドは王城内の賓客室にいた。そこは聖女ミカ様とエンバートが泊っている部屋で天命を授けてもらいに来たのだ。
「よし。天命は受けれたかな?」と聖女様。
「えぇ、この通りバッチリ。」
私は天命を受けた印である手の甲の刻印を見せた。
「これが刻印か。凄いな。リアと一緒にいなければいけない気になってる。」と嬉しそうに刻印を見つめるジェイド。
「でも油断しないで。エンバートが狙われて天命を上書きされたら刻印が消えてしまうから。聖女がもう一人降臨するっていう事は神がそれを通したって事で、神様に何かあったって事だから。」
「そんな…。」
「刻印が消えたら僕は一旦国外に逃げようと思う。」とジェイド。
「そんなに必死になる必要ある?だって強制的に感情も思考も綺麗に変われるんだよ?変わっちゃえば良いじゃん。リアの事はクルス先生に任せちゃえば良いのに。」と聖女ミカ様。
その言葉に何故か心が痛み、何故か涙がポロポロ出て来た。悲しくも痛くもないのにどうしたのだろうか。急いで涙を拭う。
ずっと沈黙を貫いていたエンバートが小さな溜息をついて立ち上がり、手の甲で軽くコツンと聖女様の頭を小突いた。
「言い過ぎだ。」
エンバートの渋い重低音が響いた。
「ごめん、でも、リア絶対辛くなるから…。」
「うん、ありがとう。でも、もう決めたの。やれるだけやってみるって。」
「…リア。」
「聖女様、天命を授けて下さってありがとうございます。」
「…ううん。」
聖女様がどうしてか元気が無くて心配だったが、サノアルの結婚式準備でそれどころでなかった。
◇◇◇ 現在 ◇◇◇
手を繋いだ瞬間に魔法でジェイドと共に国外へ出た。
地に足が着くや否や「不味い…どうしよう…リア。」と絶望的な顔を浮かべるジェイド。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
「え?そんな真っ青な顔して何でもないはないでしょう?」
「リア、ジェイドは天命を刻印されています!」とクルス先生の声が聞こえた。
「ジェイド!?天命があるの?」
「…喋ったのか。クルス。」と恨めしそうに私の賢者の石の髪飾りを睨む。
「内容は?」
「聖女との結婚だ。僕は新しい聖女様と結婚しなければならない。」
「結婚だけなら90歳とかになってからすれば良いと思ってれば良くない?」
「…………天才か?」
「え?だって、気持ちとかがすり替わった訳じゃなさそうだし、私ジェイドの事好きだけど、好き度は多分ジェイドに負けてると思うの。それが天命で同じくらいになるかとおもったけどならなかったから結婚が天命なら気持ちのすり替わりはされないと思ったの。愛さなければいけない天命が下った時が問題だわ。でも、そうなった時ジェイドは今みたいに瞬間移動で帰っちゃっうと思うの。」
「魔封じのアイテムをどこかで手に入れて着けるよ。それと、僕の魔法の杖をリアが保管しておけば僕は魔法が使えない。」
『それは無理です。ここは国外。杖はあくまで国内で魔法を使う為の道具。外の世界では杖無しでも魔法が使えてしまいます。』とクルス先生の声が耳に響いた。
「うーん、困ったわ。」
途方に暮れているとカメラのフラッシュのような光と共にジグルドが目の前に現れた。
「ジグルド様!?」
「師匠!?」
「あれ、でも何か雰囲気が全然違うかも。」
「儂の名はグラム。転生者じゃ。」
見た目はまんまジグルドだというのに転生者!?でも確かに雰囲気というかオーラが少し違うかもしれない。
「ジグルドは前世じゃ、大魔法を行使して日本に転生した後、ここへ転生し直したのじゃ。儂らも第二シーズンとやらを回避する為にのぅ。おかげで弟子より弱くなってしもうた。」
「なら、僕も、その大魔法とやらを使って別の誰かになれば回避できるって事ですか?」
「いや、神を介さなければ地球への転生はできぬのじゃ。その神が今代理人を立てておるせいで、こんな事になっておるんじゃが、主らは今から神の国へ旅立った方が良いじゃろうな。」
「神の国?聞いた事がありません。どこですか?それは。」
「ええい!話してる時間すら惜しいわい。馬を用意してやるから急いで東へ向かうのじゃ。クラリアス領と似た雪国が見えるはずじゃ。急いだ方が良いじゃろうな。」
グラムがパチンと指を鳴らせば水色の透き通った馬が1頭現れた。
「この馬は儂の魔力で作った特別な馬じゃ、餌はいらん。目的地につけば消えるようになっておる。詳しい事は愚かなクルスに聞くが良い。儂の知識の9割は保有しておるはずじゃ。」
「何か色々聞きたいですが、とにかく馬を走らせます。」
「あぁ、そうせい。走りながらでも話を聞くと良い。」
フワッと体が浮いたと思えば馬に乗せられた。馬に乗っているというよりゲルマットの上に座っているかのような心地だった。
そして、ヒョイっと軽く馬にまたがるジェイド。
「しっかり捕まってて。」
「うん。」
「師匠、ありがとうございます。必ず目的地に辿り着きます。」
「うむ。」
ジェイドは馬を走らせた。
◇◇◇
一方、王都では…
「私こそが真の聖女です。そこにいる聖女は偽物です。」
「いえ、私も聖女です。」
そう言って聖女ミカは気丈に自分の腕をナイフで切って、その後すぐに聖なる力で癒して元に戻した。
その場にいる貴族らが血濡れの聖女も聖女だと認めざる終えなくなる。実際に聖女自ら荒れ地に出向き、モンスターを討伐し荒れ地を浄化すれば緑が生い茂り質の高い薬草が採れたりするという結果を出してきたのだ。誰も血濡れの聖女を咎める事はできなかった。
エンバートが前に出て聖女をミカを庇うようにして立った。
「馬鹿!出て来ちゃダメだよ!」と焦るミカ。
「いや、ミカの話が本当なら…俺はコントロールされないはずだ。」
「え?」
「貴方、もしかしてエンバート様!?そう、貴女の推しはエンバートなのね。」
第二聖女は聖女ミカを見下すかのような不敵な笑みを浮かべた。それに対してミカは生唾を飲んだ。
「この中に、エンバート様とお近づきになりたい方はいらっしゃいますか?特別に神にお祈りして差し上げます。」
とても良い笑みを浮かべる第二聖女。
「なっ!?」
すると一人の令嬢がスッと手を挙げた。
「貴女、お名前は?」
「はい、私はローズ・ロクサリナでございます。」
薔薇のように美しい紅い髪に黄金の瞳をした美しい令嬢だった。
「あら、貴女がスイートローズ様の…ふふふ。いいわ。祈りを捧げましょう!」
第二聖女は目を閉じて静かに祈り始めた。
いよいよプレジャデス王子とサノアルの結婚式が執り行われた。
この前日に聖女様から天命をいただいた私とジェイドの手の甲には天命の刻印が浮き出ていた。
手を繋いでその瞬間を待った。
誓いの言葉を交わし、指輪の交換を終え、誓いのキスをするプレジャデス王子とサノアル。
特に何の異変も起こらずに式を終えた。
ホッとした気持ちで教会を出た時に目の前に光輝く女性が現れた。
誰がどう見ても、それは聖女だった。聖なる光に包まれた金髪碧眼の見め美しい女性。
「ここは…どこ?」
ゾワリと嫌な汗が出た。始まってしまったんだ。第二シーズンが。
後ろから神父様が女性に駆け寄って「おぉ…聖女様…。」と泣きながら跪いた。
そこへ現王が駆け寄り「どういう事じゃ!先の聖女様の他にも聖女が?」と焦っていた。
ペタンと座り込む聖女ミカ様。
「天命が…。」
ジェイドが手の甲を見て驚いていた。刻印が消えてしまっていた。
一緒にいなければいけないという使命感がすっかり消え去っていた。残ったのはお互いを愛する気持ちだけだった。
「逃げよう。」と言って私の手を引いて、その場から逃げようとするジェイド。
「うん。」
◇◇◇ 24時間前 ◇◇◇
私とジェイドは王城内の賓客室にいた。そこは聖女ミカ様とエンバートが泊っている部屋で天命を授けてもらいに来たのだ。
「よし。天命は受けれたかな?」と聖女様。
「えぇ、この通りバッチリ。」
私は天命を受けた印である手の甲の刻印を見せた。
「これが刻印か。凄いな。リアと一緒にいなければいけない気になってる。」と嬉しそうに刻印を見つめるジェイド。
「でも油断しないで。エンバートが狙われて天命を上書きされたら刻印が消えてしまうから。聖女がもう一人降臨するっていう事は神がそれを通したって事で、神様に何かあったって事だから。」
「そんな…。」
「刻印が消えたら僕は一旦国外に逃げようと思う。」とジェイド。
「そんなに必死になる必要ある?だって強制的に感情も思考も綺麗に変われるんだよ?変わっちゃえば良いじゃん。リアの事はクルス先生に任せちゃえば良いのに。」と聖女ミカ様。
その言葉に何故か心が痛み、何故か涙がポロポロ出て来た。悲しくも痛くもないのにどうしたのだろうか。急いで涙を拭う。
ずっと沈黙を貫いていたエンバートが小さな溜息をついて立ち上がり、手の甲で軽くコツンと聖女様の頭を小突いた。
「言い過ぎだ。」
エンバートの渋い重低音が響いた。
「ごめん、でも、リア絶対辛くなるから…。」
「うん、ありがとう。でも、もう決めたの。やれるだけやってみるって。」
「…リア。」
「聖女様、天命を授けて下さってありがとうございます。」
「…ううん。」
聖女様がどうしてか元気が無くて心配だったが、サノアルの結婚式準備でそれどころでなかった。
◇◇◇ 現在 ◇◇◇
手を繋いだ瞬間に魔法でジェイドと共に国外へ出た。
地に足が着くや否や「不味い…どうしよう…リア。」と絶望的な顔を浮かべるジェイド。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
「え?そんな真っ青な顔して何でもないはないでしょう?」
「リア、ジェイドは天命を刻印されています!」とクルス先生の声が聞こえた。
「ジェイド!?天命があるの?」
「…喋ったのか。クルス。」と恨めしそうに私の賢者の石の髪飾りを睨む。
「内容は?」
「聖女との結婚だ。僕は新しい聖女様と結婚しなければならない。」
「結婚だけなら90歳とかになってからすれば良いと思ってれば良くない?」
「…………天才か?」
「え?だって、気持ちとかがすり替わった訳じゃなさそうだし、私ジェイドの事好きだけど、好き度は多分ジェイドに負けてると思うの。それが天命で同じくらいになるかとおもったけどならなかったから結婚が天命なら気持ちのすり替わりはされないと思ったの。愛さなければいけない天命が下った時が問題だわ。でも、そうなった時ジェイドは今みたいに瞬間移動で帰っちゃっうと思うの。」
「魔封じのアイテムをどこかで手に入れて着けるよ。それと、僕の魔法の杖をリアが保管しておけば僕は魔法が使えない。」
『それは無理です。ここは国外。杖はあくまで国内で魔法を使う為の道具。外の世界では杖無しでも魔法が使えてしまいます。』とクルス先生の声が耳に響いた。
「うーん、困ったわ。」
途方に暮れているとカメラのフラッシュのような光と共にジグルドが目の前に現れた。
「ジグルド様!?」
「師匠!?」
「あれ、でも何か雰囲気が全然違うかも。」
「儂の名はグラム。転生者じゃ。」
見た目はまんまジグルドだというのに転生者!?でも確かに雰囲気というかオーラが少し違うかもしれない。
「ジグルドは前世じゃ、大魔法を行使して日本に転生した後、ここへ転生し直したのじゃ。儂らも第二シーズンとやらを回避する為にのぅ。おかげで弟子より弱くなってしもうた。」
「なら、僕も、その大魔法とやらを使って別の誰かになれば回避できるって事ですか?」
「いや、神を介さなければ地球への転生はできぬのじゃ。その神が今代理人を立てておるせいで、こんな事になっておるんじゃが、主らは今から神の国へ旅立った方が良いじゃろうな。」
「神の国?聞いた事がありません。どこですか?それは。」
「ええい!話してる時間すら惜しいわい。馬を用意してやるから急いで東へ向かうのじゃ。クラリアス領と似た雪国が見えるはずじゃ。急いだ方が良いじゃろうな。」
グラムがパチンと指を鳴らせば水色の透き通った馬が1頭現れた。
「この馬は儂の魔力で作った特別な馬じゃ、餌はいらん。目的地につけば消えるようになっておる。詳しい事は愚かなクルスに聞くが良い。儂の知識の9割は保有しておるはずじゃ。」
「何か色々聞きたいですが、とにかく馬を走らせます。」
「あぁ、そうせい。走りながらでも話を聞くと良い。」
フワッと体が浮いたと思えば馬に乗せられた。馬に乗っているというよりゲルマットの上に座っているかのような心地だった。
そして、ヒョイっと軽く馬にまたがるジェイド。
「しっかり捕まってて。」
「うん。」
「師匠、ありがとうございます。必ず目的地に辿り着きます。」
「うむ。」
ジェイドは馬を走らせた。
◇◇◇
一方、王都では…
「私こそが真の聖女です。そこにいる聖女は偽物です。」
「いえ、私も聖女です。」
そう言って聖女ミカは気丈に自分の腕をナイフで切って、その後すぐに聖なる力で癒して元に戻した。
その場にいる貴族らが血濡れの聖女も聖女だと認めざる終えなくなる。実際に聖女自ら荒れ地に出向き、モンスターを討伐し荒れ地を浄化すれば緑が生い茂り質の高い薬草が採れたりするという結果を出してきたのだ。誰も血濡れの聖女を咎める事はできなかった。
エンバートが前に出て聖女をミカを庇うようにして立った。
「馬鹿!出て来ちゃダメだよ!」と焦るミカ。
「いや、ミカの話が本当なら…俺はコントロールされないはずだ。」
「え?」
「貴方、もしかしてエンバート様!?そう、貴女の推しはエンバートなのね。」
第二聖女は聖女ミカを見下すかのような不敵な笑みを浮かべた。それに対してミカは生唾を飲んだ。
「この中に、エンバート様とお近づきになりたい方はいらっしゃいますか?特別に神にお祈りして差し上げます。」
とても良い笑みを浮かべる第二聖女。
「なっ!?」
すると一人の令嬢がスッと手を挙げた。
「貴女、お名前は?」
「はい、私はローズ・ロクサリナでございます。」
薔薇のように美しい紅い髪に黄金の瞳をした美しい令嬢だった。
「あら、貴女がスイートローズ様の…ふふふ。いいわ。祈りを捧げましょう!」
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