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第十四話【プレジャデス王子の秘密】
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サノアルと同様に黒髪の男性が目覚めるのも遅かった。ここへ来るまでの間睡眠をとっていなかったのだろう。クラリアス領で眠れば凍死してしまう可能性が高いのだから。
早速部屋へと入ってみれば、ベットの上でぼーっと自分の手を見つめる男性。
「お気付きになられましたか。」
「ここは…。」
見た目は違うが声がプレジャデス王子そのものだ。ジェイド王子に手紙を出しておいて良かった。
「これを。」と言って私はベッドの近くの椅子に腰かけて、ジェイド王子からの手紙をプレジャデス王子に渡した。
「これは?」
「私が殺されない為の保険…といったところでしょうか?」と言って私はニコっと作り笑いをする。
王子は手紙を受け取って読むと、不敵な笑みを浮かべて「なるほど。」と言ってから私の顔をしっかりとした顔つきで見つめる。
「ご理解頂けましたでしょうか?」
「確かに。俺の正体を知っているとなると殺すしかないね。」
「ギルクライムの血ですか?」
「うん、俺の母がギルクライムの血だった。こうして私的に外へ出る時以外は魔法の指輪をはめてスイートローズの象徴である金髪を維持している。目の色もね。」
王妃がギルクライム?でも記憶の中の王妃は金髪碧眼だったはず…。王子と同じで魔法の指輪とやらでどうにかしてるのかしら。
「そうですか。これからどうなさるのですか?」
「サノアルの魔法の痕跡を辿って来たんだ。ここにいるよね。」と言ってニコリと笑う王子だが妙な圧を感じた。
「サノアルは、貴方に殺されると思ってここへ逃げて来ました。」
「は?」
「何か脅えるような事をしたのではなくて?」
「そんな。誰よりも優しくしたし、欲しい物は全て買い与えるつもりだったし、贈り物だって毎日したのに何をどう考えたらそんな考えに至るのだろうね。」
なるほど。確かに、そこまでされていて殺されるとは考えにくい。だけど、前世の記憶があるものとしたらそれはやりすぎで恐いとも思えてしまう。原因はそこにあるのかもしれない。だけど、サノアルは元政治家で政治家ってそんなに稼げないものだっけ。政治活動でカツカツだったのかしら。裏金とか?それは政治家に失礼よね。
「とにかく、接し方を改めてはいかがでしょうか。」
「なら、協力してくれないかな?」
「協力ですか?内容によりますけれど。」
「ここにいる間だけで良いんだ。サノアルの使用人として働かせてもらえないかな。」
「本気ですか?」
「本気。」
そう言った王子の目は本気の目をしていて、頭が痛くなってきてしまった。こめかみを抑えながら渋々「わかりました。」と返答するしかなかった。
「そうだ。お礼にジェイドの話でもしてあげようか?」
「いえ、結構です。あまり深く知りたくないので。」
「まぁ、そう言わずに。ジェイドの母親は正当な現王妃で、厄介な事にスイートローズの血を受け継いでいるんだ。」
「は!?」と思わず品のない声を上げてしまった。
「何代か前からスイートローズの血筋は途絶えていたんだ。そこに父上がギルクライムの血筋の女性を迎えてしまった。子供は当然呪いのせいで魔力無し。流石に不味いという事で母様の存在は隠され、俺は王妃の子供って事になってる。どうしてこんな話をしているか不思議かな?」
「はい。とても。」
「王宮で最も優秀な錬金術士クルス・リスメギスを引き抜き、師として迎えた。なら、君は賢者の石について興味が出る頃だろう?」
目を大きく見開いてしまった。核心を突かれたからではない。前世で錬金術といえば賢者の石だと思っていて、先生との間で全く話にでてこなかったので、この世界には存在しないものだと思っていた。だからその名前を聞いて驚いてしまった。やはり賢者の石はあったんだ。
「その、賢者の石とは何ですか?」と問えば王子は白い石がはまった赤黒い指輪を見せてきた。
「指輪と対話するだけで、色んな事ができる。例えば髪や目の色を変えたり。上質な賢者の石は魔法だって使えるし、色んな知識を与えてくれる。無知な者が扱えば操作されてしまう事もあるらしいけれどね。」
「その賢者の石は危険すぎるし、どうして私にこんな話をするか少しだけ分かった気がするわ。」
「へぇ。」
「その指輪でミアに魔法をかけて色々聞き出したのではなくて?」
「バレちゃった?」とのほほんと笑う王子。
前世で学んだ賢者の石は実際に存在しないもので、漫画やゲームでは人間を犠牲にしたりして作られた石というのが定番すぎて、この世界でもそうだろうと踏んでおり、さっき王子は指輪と対話と言っていた。間違えなく人間を犠牲にしているに違いない。それにミアの事だから私とクルス先生の仲を嘆いていたに違いない。弟の為にクルス先生との仲を引き裂こうとしていたのだろう。
つまり賢者の石の話はタブーって事ね。これはゲームや漫画の鉄板ネタ。そんな手に引っかかるものですか。まぁ、そんな便利なものだと欲しいけれどね。覚える必要も考える必要がなくなるもの。
「では、使用人服を準備させますので、上手くやって下さいね。それと裏の屋敷に部屋を用意させます。お父様に見つかると大変ですから。」
「ありがとう。」
「あと、今のお話はお礼になっていませんから。」と私は少し冷ややかな目を向けた。
「そう?女性の心を掴むのは難しいねぇ。」
王子は困ったように笑う。
バタンと音を立てて客室を出た。ドアの前に立っていたミアを見て溜息をついてしまった。
魔法にかけられて私の重要機密をほいほい話されてはたまったもんじゃない。いったい私のミアは、あの腹黒王子にどこまで話してしまったのだろうか。
「ミア、今度お守りを作ってあげるわ。」
「はい?」ときょとんとした顔をするミア。
私は早速ギルバートのところへ行き、客室にいる男性をサノアルの使用人として働かせるように指示を出した。色々手伝ってあげて欲しいとも言っておいたので問題なく事は進むだろう。
丁度今日は授業もあるので、このまま錬金室へ向かった。
しかし、サノアルを騙す事になってしまうのが心苦しい。あんなに脅えていたのに。本当に大丈夫かしら。あの王子。次脅かすようなら叩き出さないといけないわね。
錬金室の前で立ち止まって人差し指と親指で眉間のあたりをつまんで凝りを解していると、優しくふわっと両肩に暖かい大きな手が置かれて心が温かくなった。
「クルス先生!」と首を後ろに向ければ優しい笑みを浮かべるクルス先生が立っていた。
「リア様、また随分とお疲れのようですが、今日の授業はやめておきましょうか?」
私は首を左右に振った。
「ううん。今日でミシンが完成しそうなので授業をお願いします。早くクレアに使ってもらいたいので。」
「そうですか、とても友達思いでいらっしゃいますね。」
肩から手が離れてしまい少し寂しく思ってしまう。先生の声は私の溜まった疲れを洗い流してくれるようだった。無条件に嬉しくなる。先生の微笑みは私を心の底から安心させてくれてる。
大きな手を離さないでほしい。離れないでほしい。私がもう少し早く生まれていれば、先生がもう少し遅く生まれてきてくれていれば、きっと燃えるような恋をしていたかもしれない。
クルス先生が「どうぞ」と言って錬金室の扉を開いた。
「ありがとうございます。」と言ってから錬金室に入った。錬金室には完成間近のミシンが机の上に置かれており、複雑な錬成陣の石がいくつもはまっていた。
「さて、授業を始めましょうか。」
「はい!」
ずっとこの幸せな授業が続けば良いのに。
早速部屋へと入ってみれば、ベットの上でぼーっと自分の手を見つめる男性。
「お気付きになられましたか。」
「ここは…。」
見た目は違うが声がプレジャデス王子そのものだ。ジェイド王子に手紙を出しておいて良かった。
「これを。」と言って私はベッドの近くの椅子に腰かけて、ジェイド王子からの手紙をプレジャデス王子に渡した。
「これは?」
「私が殺されない為の保険…といったところでしょうか?」と言って私はニコっと作り笑いをする。
王子は手紙を受け取って読むと、不敵な笑みを浮かべて「なるほど。」と言ってから私の顔をしっかりとした顔つきで見つめる。
「ご理解頂けましたでしょうか?」
「確かに。俺の正体を知っているとなると殺すしかないね。」
「ギルクライムの血ですか?」
「うん、俺の母がギルクライムの血だった。こうして私的に外へ出る時以外は魔法の指輪をはめてスイートローズの象徴である金髪を維持している。目の色もね。」
王妃がギルクライム?でも記憶の中の王妃は金髪碧眼だったはず…。王子と同じで魔法の指輪とやらでどうにかしてるのかしら。
「そうですか。これからどうなさるのですか?」
「サノアルの魔法の痕跡を辿って来たんだ。ここにいるよね。」と言ってニコリと笑う王子だが妙な圧を感じた。
「サノアルは、貴方に殺されると思ってここへ逃げて来ました。」
「は?」
「何か脅えるような事をしたのではなくて?」
「そんな。誰よりも優しくしたし、欲しい物は全て買い与えるつもりだったし、贈り物だって毎日したのに何をどう考えたらそんな考えに至るのだろうね。」
なるほど。確かに、そこまでされていて殺されるとは考えにくい。だけど、前世の記憶があるものとしたらそれはやりすぎで恐いとも思えてしまう。原因はそこにあるのかもしれない。だけど、サノアルは元政治家で政治家ってそんなに稼げないものだっけ。政治活動でカツカツだったのかしら。裏金とか?それは政治家に失礼よね。
「とにかく、接し方を改めてはいかがでしょうか。」
「なら、協力してくれないかな?」
「協力ですか?内容によりますけれど。」
「ここにいる間だけで良いんだ。サノアルの使用人として働かせてもらえないかな。」
「本気ですか?」
「本気。」
そう言った王子の目は本気の目をしていて、頭が痛くなってきてしまった。こめかみを抑えながら渋々「わかりました。」と返答するしかなかった。
「そうだ。お礼にジェイドの話でもしてあげようか?」
「いえ、結構です。あまり深く知りたくないので。」
「まぁ、そう言わずに。ジェイドの母親は正当な現王妃で、厄介な事にスイートローズの血を受け継いでいるんだ。」
「は!?」と思わず品のない声を上げてしまった。
「何代か前からスイートローズの血筋は途絶えていたんだ。そこに父上がギルクライムの血筋の女性を迎えてしまった。子供は当然呪いのせいで魔力無し。流石に不味いという事で母様の存在は隠され、俺は王妃の子供って事になってる。どうしてこんな話をしているか不思議かな?」
「はい。とても。」
「王宮で最も優秀な錬金術士クルス・リスメギスを引き抜き、師として迎えた。なら、君は賢者の石について興味が出る頃だろう?」
目を大きく見開いてしまった。核心を突かれたからではない。前世で錬金術といえば賢者の石だと思っていて、先生との間で全く話にでてこなかったので、この世界には存在しないものだと思っていた。だからその名前を聞いて驚いてしまった。やはり賢者の石はあったんだ。
「その、賢者の石とは何ですか?」と問えば王子は白い石がはまった赤黒い指輪を見せてきた。
「指輪と対話するだけで、色んな事ができる。例えば髪や目の色を変えたり。上質な賢者の石は魔法だって使えるし、色んな知識を与えてくれる。無知な者が扱えば操作されてしまう事もあるらしいけれどね。」
「その賢者の石は危険すぎるし、どうして私にこんな話をするか少しだけ分かった気がするわ。」
「へぇ。」
「その指輪でミアに魔法をかけて色々聞き出したのではなくて?」
「バレちゃった?」とのほほんと笑う王子。
前世で学んだ賢者の石は実際に存在しないもので、漫画やゲームでは人間を犠牲にしたりして作られた石というのが定番すぎて、この世界でもそうだろうと踏んでおり、さっき王子は指輪と対話と言っていた。間違えなく人間を犠牲にしているに違いない。それにミアの事だから私とクルス先生の仲を嘆いていたに違いない。弟の為にクルス先生との仲を引き裂こうとしていたのだろう。
つまり賢者の石の話はタブーって事ね。これはゲームや漫画の鉄板ネタ。そんな手に引っかかるものですか。まぁ、そんな便利なものだと欲しいけれどね。覚える必要も考える必要がなくなるもの。
「では、使用人服を準備させますので、上手くやって下さいね。それと裏の屋敷に部屋を用意させます。お父様に見つかると大変ですから。」
「ありがとう。」
「あと、今のお話はお礼になっていませんから。」と私は少し冷ややかな目を向けた。
「そう?女性の心を掴むのは難しいねぇ。」
王子は困ったように笑う。
バタンと音を立てて客室を出た。ドアの前に立っていたミアを見て溜息をついてしまった。
魔法にかけられて私の重要機密をほいほい話されてはたまったもんじゃない。いったい私のミアは、あの腹黒王子にどこまで話してしまったのだろうか。
「ミア、今度お守りを作ってあげるわ。」
「はい?」ときょとんとした顔をするミア。
私は早速ギルバートのところへ行き、客室にいる男性をサノアルの使用人として働かせるように指示を出した。色々手伝ってあげて欲しいとも言っておいたので問題なく事は進むだろう。
丁度今日は授業もあるので、このまま錬金室へ向かった。
しかし、サノアルを騙す事になってしまうのが心苦しい。あんなに脅えていたのに。本当に大丈夫かしら。あの王子。次脅かすようなら叩き出さないといけないわね。
錬金室の前で立ち止まって人差し指と親指で眉間のあたりをつまんで凝りを解していると、優しくふわっと両肩に暖かい大きな手が置かれて心が温かくなった。
「クルス先生!」と首を後ろに向ければ優しい笑みを浮かべるクルス先生が立っていた。
「リア様、また随分とお疲れのようですが、今日の授業はやめておきましょうか?」
私は首を左右に振った。
「ううん。今日でミシンが完成しそうなので授業をお願いします。早くクレアに使ってもらいたいので。」
「そうですか、とても友達思いでいらっしゃいますね。」
肩から手が離れてしまい少し寂しく思ってしまう。先生の声は私の溜まった疲れを洗い流してくれるようだった。無条件に嬉しくなる。先生の微笑みは私を心の底から安心させてくれてる。
大きな手を離さないでほしい。離れないでほしい。私がもう少し早く生まれていれば、先生がもう少し遅く生まれてきてくれていれば、きっと燃えるような恋をしていたかもしれない。
クルス先生が「どうぞ」と言って錬金室の扉を開いた。
「ありがとうございます。」と言ってから錬金室に入った。錬金室には完成間近のミシンが机の上に置かれており、複雑な錬成陣の石がいくつもはまっていた。
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