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第九話【ジェイド危機一髪】
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王子はサノアルとドーリッシュを馬車に乗せて王城へ向かってしまった。聖女様はエンバートの馬の後ろに乗って帰っていった。
私はギャラクレアと共に自分の家の馬車に乗ってクラリアス邸へ帰った。
ギャラクレアを裏の屋敷へ連れて行けば、中庭で元気に遊ぶ子供達がいて「え?」と小さな声を出して驚く。
「ごめんなさいね。ちょっと騒がしいかもしれないけれど、今一番ギャラクレア様が落ち着ける場所だと思うから。」
「ううん。そうじゃなくて、どうして子供達がこんなにもいるの?」
「孤児撲滅キャンペーンです。ゆくゆくは孤児院を立てて飲食店で余ったものを食べさせる事ができれば良いかなって。」
「でも、貴族の食事なんてものを食べた後に庶民の食事に戻るのは可哀想じゃない?」
「そこもしっかり考えて、市場で買ったパンと野菜しか出してないですよ。」
「そうなの。ちゃんと考えられてるのね。」
「ギャラクレア様、お願いをしても良いですか?」
「なに?」
「制服を作って欲しいなって思いまして。材料も道具も全てこっちで用意するので、子供達に着せる制服と飲食店用の制服をお願いできませんか。」
「誰に言ってるのよ。」と言われた瞬間はやはりダメか?と思ったけれど、直ぐに笑顔で「お安い御用よ。」と快く受け入れてくれて思わず抱き着いてしまった。
「ありがとう!!!ギャラクレア様なら引き受けて下さると信じておりました!」と言えばギャラクレアは顔を赤くさせながら「その、クレアで良いわよ。リア。」と言われて、更にぎゅっと抱きしめてしまう。
「う゛っ!!殺す気かしら。」
「あっ!ごめんなさい!」
クレアに部屋を案内した後、クレアの隣の部屋をクレアの仕事部屋にできるように使用人に指示してから自室に戻った。
「お疲れ様です。」と言ってミアは私のドレスを脱がせる。
「うん。今日は結構収穫あったわ。でも、サノアルが心配ね。」
「サノアル様といえば…ハイドシュバルツ公爵令嬢でございますか?」
「そう、悪い王子に連れ去られちゃったの。」
「もしや、その悪い王子とはプレジャデス王子殿下の事じゃございませんよね?」
「そう、そのプレジャデス王子よ。」
「お嬢様!!不敬罪で罪に問われてしまいますよ!?お気をつけ下さい!」とミアは声をはる。
「そうね。でも手紙は書いておいた方が良いかも。」
湯浴みをしてパジャマに着替えた後、念のためジェイド王子に手紙を書くことにした。
手紙の内容は今日のお茶会であった簡単な事とクレアがうちに泊まっている事、一応サノアル様を心配している事を書いて魔法の鳥を飛ばした。
◇◇◇
「手紙。」
そう呟いて魔法の鳥から手紙を受け取る。早速中身を確認して、最初は微笑ましく読んでいたが状況が一転した。思わず「何だって?」と声に出してしまった。
兄上がサノアル令嬢をここに連れ帰った?リアの話が本当なら不味いかもしれない。
僕の予想が正しければリアには前世の記憶といったものがあるに違いないと思っているからだ。今まで一度も4公爵令嬢が集まってお茶会をする等といった事記録がない。なのに急に、それもある日を境に交流を持ち始めた。それだけではなく、4公爵令嬢達は今までと違う行動をとり始めた。
サノアル・ハイドシュバルツは冷酷極まりない女性だと聞いていた。他人を呼んでお茶会を開く等ありえない。ドーリッシュ・エッケンシュタットは公爵令嬢でありながら剣の腕が凄いと聞いていた。姿を何度か見た事がある。令嬢らしからぬ露出度の高い服を着ていて腰には常に双剣をさしていた。
それが今では毎日のように図書館へ通い、書籍作り等をしているし服の趣味も全く変わっている。
ギャラクレア・ギルクライムは事あるごとに兄上に詰め寄るストーカーのような女性だった。
ド派手なドレスを着て毎日夜会やパーティーに現れていた。それがある日を境にパーティーには出ず引きこもるようになったと聞いた。だけど魔塔主との婚約パーティー後は魔塔主の家に入り浸っているという情報を得たけれど、手紙の内容をみる限り、それも違ったようだ。
突如現れた聖女は毎日「スマホ、配信、ゲーム」と訳の分からない言葉を呟くらしい。
ここまで揃えば、聖女が誕生した日、病に倒れた5人の人格が変わってしまう何かが起きた事が分かる。それは王族のみ閲覧が許された禁書の棚の聖女についての本に書かれてある異世界の記憶を所持という部分からヒントを得て5名全員異世界の記憶が入ったに違いない。過去の記憶を覚えているあたり、全くの別人になったというわけではなさそうだ。
兄上にその事実を知られてはリアも危機に晒されてしまうのではないかと不安になった。
不本意だけど、何故かリアの力になりたくて、部屋を出た。
ハイドシュバルツ領から王都までの距離を考えると、既に馬車はついていて、兄上の部屋にいるはずだ。となると、もう手遅れか?
そんな事をグルグル考えながら、もう僕は兄上の部屋へ全速力で走っていた。
部屋の前につくと衛兵と執事が立っていて、僕はお構いなしに進んだ。
「ジェイド王子様!?どうしてこのような…うっ!!!」
衛兵と執事は僕の垂れ流されている魔力に当てられて膝をついて嘔吐をこらえる。これだけ近づけば、とんでもない悪臭が漂っている事だろう。普段人と接する時は魔力抑制剤を服用する。今はそれを飲んでいないのだ。魔力を匂いとして感知してしまうはずだ。僕の匂いは生ごみを1週間放置したような匂いだ。吐き気をもよおして当然だ。悪いけど部屋に入らせてもらおう。
僕が部屋に入れば、兄は大きく目を見開いた。
「ジェイド…なのか?」
時間がないので部屋にいたサノアル令嬢に近づいて手を掴んだ。その瞬間令嬢は気絶してしまい、それと同時に兄上から強烈な蹴りをお見舞いされて壁に激突した。
「カハッ」と声が出たと思えば息ができなかった。肺が潰れてしまったのか?と疑ってしまうくらいに。今まで誰にも触れられた事等なかった。
「正気か?」
そう兄上に問われても言葉を発する事等できなかった。だけど、これでサノアル令嬢は数週間は意識を取り戻す事ができないだろう。
「母・・・上…。」
ダメもとで母上と間違えたように演じてみせたが、想像以上に兄上から殺気が放たれていて焦りを感じた。次に兄上は僕の胸倉を掴んで吊るし上げた。本当にこれは兄なのか?僕が引きこもっている間に一体兄の身に何があった?
「俺の愛しいサノアルに手をだしたら、いくら血を分けた弟でも容赦はしない。ジェイド、お前もそうだろう?エルヒリア嬢に俺が危害を加えた場合、お前は兄である俺であっても殺すだろう?身なりは幼いままだが、俺はお前と2つしか歳が違わない事を十分に理解している。猿芝居はよせ。」
やっと息ができるようになった。声も少しは出せる。だが、このまま気を失ってしまいたい気分だ。
そう思っているとピンク色の髪をした人がパッと目の前に現れて兄を一瞬で気絶させてしまった。
僕は床にゆっくりと降ろされた。誰かと思ったら魔塔主だった。
「危機一髪じゃったな。」
「助けて下さったのですか?」
「そうじゃな。とりあえず不敬罪にならぬように、ここ数分の出来事を忘却させておくぞい。」と言って一輪の赤い花を兄上の鼻に近づけた。
「ありがとうございます。でも、どうして…。」
「主な理由は、お主の魂がスイートローズだからじゃな。」
ジグルド・ウロボロスは兄上を抱き上げて服を脱がし丸裸にしてベッドに寝かせ、サルノア令嬢もまた丸裸にして同じベッドに寝かせて、テーブルに向かってパチンと指を鳴らせば、飲みかけのお酒を置き、飲み干したのであろうワイングラスを2つ用意して、ニヤニヤしていた。おちゃめ、というべきなのだろうか。余りにも凄い事をしていたので、ただ黙って傍観してしまっていた。
私はギャラクレアと共に自分の家の馬車に乗ってクラリアス邸へ帰った。
ギャラクレアを裏の屋敷へ連れて行けば、中庭で元気に遊ぶ子供達がいて「え?」と小さな声を出して驚く。
「ごめんなさいね。ちょっと騒がしいかもしれないけれど、今一番ギャラクレア様が落ち着ける場所だと思うから。」
「ううん。そうじゃなくて、どうして子供達がこんなにもいるの?」
「孤児撲滅キャンペーンです。ゆくゆくは孤児院を立てて飲食店で余ったものを食べさせる事ができれば良いかなって。」
「でも、貴族の食事なんてものを食べた後に庶民の食事に戻るのは可哀想じゃない?」
「そこもしっかり考えて、市場で買ったパンと野菜しか出してないですよ。」
「そうなの。ちゃんと考えられてるのね。」
「ギャラクレア様、お願いをしても良いですか?」
「なに?」
「制服を作って欲しいなって思いまして。材料も道具も全てこっちで用意するので、子供達に着せる制服と飲食店用の制服をお願いできませんか。」
「誰に言ってるのよ。」と言われた瞬間はやはりダメか?と思ったけれど、直ぐに笑顔で「お安い御用よ。」と快く受け入れてくれて思わず抱き着いてしまった。
「ありがとう!!!ギャラクレア様なら引き受けて下さると信じておりました!」と言えばギャラクレアは顔を赤くさせながら「その、クレアで良いわよ。リア。」と言われて、更にぎゅっと抱きしめてしまう。
「う゛っ!!殺す気かしら。」
「あっ!ごめんなさい!」
クレアに部屋を案内した後、クレアの隣の部屋をクレアの仕事部屋にできるように使用人に指示してから自室に戻った。
「お疲れ様です。」と言ってミアは私のドレスを脱がせる。
「うん。今日は結構収穫あったわ。でも、サノアルが心配ね。」
「サノアル様といえば…ハイドシュバルツ公爵令嬢でございますか?」
「そう、悪い王子に連れ去られちゃったの。」
「もしや、その悪い王子とはプレジャデス王子殿下の事じゃございませんよね?」
「そう、そのプレジャデス王子よ。」
「お嬢様!!不敬罪で罪に問われてしまいますよ!?お気をつけ下さい!」とミアは声をはる。
「そうね。でも手紙は書いておいた方が良いかも。」
湯浴みをしてパジャマに着替えた後、念のためジェイド王子に手紙を書くことにした。
手紙の内容は今日のお茶会であった簡単な事とクレアがうちに泊まっている事、一応サノアル様を心配している事を書いて魔法の鳥を飛ばした。
◇◇◇
「手紙。」
そう呟いて魔法の鳥から手紙を受け取る。早速中身を確認して、最初は微笑ましく読んでいたが状況が一転した。思わず「何だって?」と声に出してしまった。
兄上がサノアル令嬢をここに連れ帰った?リアの話が本当なら不味いかもしれない。
僕の予想が正しければリアには前世の記憶といったものがあるに違いないと思っているからだ。今まで一度も4公爵令嬢が集まってお茶会をする等といった事記録がない。なのに急に、それもある日を境に交流を持ち始めた。それだけではなく、4公爵令嬢達は今までと違う行動をとり始めた。
サノアル・ハイドシュバルツは冷酷極まりない女性だと聞いていた。他人を呼んでお茶会を開く等ありえない。ドーリッシュ・エッケンシュタットは公爵令嬢でありながら剣の腕が凄いと聞いていた。姿を何度か見た事がある。令嬢らしからぬ露出度の高い服を着ていて腰には常に双剣をさしていた。
それが今では毎日のように図書館へ通い、書籍作り等をしているし服の趣味も全く変わっている。
ギャラクレア・ギルクライムは事あるごとに兄上に詰め寄るストーカーのような女性だった。
ド派手なドレスを着て毎日夜会やパーティーに現れていた。それがある日を境にパーティーには出ず引きこもるようになったと聞いた。だけど魔塔主との婚約パーティー後は魔塔主の家に入り浸っているという情報を得たけれど、手紙の内容をみる限り、それも違ったようだ。
突如現れた聖女は毎日「スマホ、配信、ゲーム」と訳の分からない言葉を呟くらしい。
ここまで揃えば、聖女が誕生した日、病に倒れた5人の人格が変わってしまう何かが起きた事が分かる。それは王族のみ閲覧が許された禁書の棚の聖女についての本に書かれてある異世界の記憶を所持という部分からヒントを得て5名全員異世界の記憶が入ったに違いない。過去の記憶を覚えているあたり、全くの別人になったというわけではなさそうだ。
兄上にその事実を知られてはリアも危機に晒されてしまうのではないかと不安になった。
不本意だけど、何故かリアの力になりたくて、部屋を出た。
ハイドシュバルツ領から王都までの距離を考えると、既に馬車はついていて、兄上の部屋にいるはずだ。となると、もう手遅れか?
そんな事をグルグル考えながら、もう僕は兄上の部屋へ全速力で走っていた。
部屋の前につくと衛兵と執事が立っていて、僕はお構いなしに進んだ。
「ジェイド王子様!?どうしてこのような…うっ!!!」
衛兵と執事は僕の垂れ流されている魔力に当てられて膝をついて嘔吐をこらえる。これだけ近づけば、とんでもない悪臭が漂っている事だろう。普段人と接する時は魔力抑制剤を服用する。今はそれを飲んでいないのだ。魔力を匂いとして感知してしまうはずだ。僕の匂いは生ごみを1週間放置したような匂いだ。吐き気をもよおして当然だ。悪いけど部屋に入らせてもらおう。
僕が部屋に入れば、兄は大きく目を見開いた。
「ジェイド…なのか?」
時間がないので部屋にいたサノアル令嬢に近づいて手を掴んだ。その瞬間令嬢は気絶してしまい、それと同時に兄上から強烈な蹴りをお見舞いされて壁に激突した。
「カハッ」と声が出たと思えば息ができなかった。肺が潰れてしまったのか?と疑ってしまうくらいに。今まで誰にも触れられた事等なかった。
「正気か?」
そう兄上に問われても言葉を発する事等できなかった。だけど、これでサノアル令嬢は数週間は意識を取り戻す事ができないだろう。
「母・・・上…。」
ダメもとで母上と間違えたように演じてみせたが、想像以上に兄上から殺気が放たれていて焦りを感じた。次に兄上は僕の胸倉を掴んで吊るし上げた。本当にこれは兄なのか?僕が引きこもっている間に一体兄の身に何があった?
「俺の愛しいサノアルに手をだしたら、いくら血を分けた弟でも容赦はしない。ジェイド、お前もそうだろう?エルヒリア嬢に俺が危害を加えた場合、お前は兄である俺であっても殺すだろう?身なりは幼いままだが、俺はお前と2つしか歳が違わない事を十分に理解している。猿芝居はよせ。」
やっと息ができるようになった。声も少しは出せる。だが、このまま気を失ってしまいたい気分だ。
そう思っているとピンク色の髪をした人がパッと目の前に現れて兄を一瞬で気絶させてしまった。
僕は床にゆっくりと降ろされた。誰かと思ったら魔塔主だった。
「危機一髪じゃったな。」
「助けて下さったのですか?」
「そうじゃな。とりあえず不敬罪にならぬように、ここ数分の出来事を忘却させておくぞい。」と言って一輪の赤い花を兄上の鼻に近づけた。
「ありがとうございます。でも、どうして…。」
「主な理由は、お主の魂がスイートローズだからじゃな。」
ジグルド・ウロボロスは兄上を抱き上げて服を脱がし丸裸にしてベッドに寝かせ、サルノア令嬢もまた丸裸にして同じベッドに寝かせて、テーブルに向かってパチンと指を鳴らせば、飲みかけのお酒を置き、飲み干したのであろうワイングラスを2つ用意して、ニヤニヤしていた。おちゃめ、というべきなのだろうか。余りにも凄い事をしていたので、ただ黙って傍観してしまっていた。
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