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第七話【ノスタルジー】

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まさか、小学生くらいの背丈のショタが19歳で、ましてや自分より年上だったなんて。何?どういう事?
ギルバートは「忘れてましたね?王子が聞いたら悲しまれますよ。」と頭が痛そうな顔をして部屋を出て行った。魔力ってそもそも何?明日クルス先生に徹底的に聞いてみよう。

朝は裏の屋敷へ行き、子供達に錬金術を教える。お昼の時間になって解散するとフェリスが走ってきて私に抱き着いてきた。
「フェリスどうしたの?」と聞けば、フェリスは涙を沢山溜めた顔で此方を見る。
「ぼ、僕。錬金術っ、でき、ないからっ。追い出されるの?」
とりあえず、しゃがんでフェリスと同じ目線になった。
「フェリス、ギルバートはそんな説明してないでしょう?フェリスは血筋のせいで生まれつき魔力が使えないから、私の護衛騎士になってもらおうと思って今日から授業内容を変えたのよ?」
「ほ、ほんとに?嘘じゃない?」
「嘘じゃないわよ。フェリスにしかできない事よ?でも、剣術がもし嫌なら…。」
「嫌じゃない。エルヒリア様の為だったら何だってやる。」と言って涙をゴシッと服の袖で拭いて強い意志のある目するフェリス。
「そう、実は嫌とかなら、今は剣術に励んで騎士になって、自分でお金を稼いでから好きな道へ行くといいわ。それまで我慢してね。できれば側にいて欲しいけれどね。」
「ずっと側にいる。僕頑張る。」
「うん。待ってるね。」

フェリスは元気になって走って皆と食堂へ行った。自分も裏の屋敷の食堂で子供達の話を聞きながらランチを食べた後、クルス先生との授業の為、今日は指定された先生が魔改造した厨房のような錬金実験室へ移動した。

「今日は実際にスープの石とやらを作ってみましょう。」
「本当ですか!?」
「はい、事前に聞いていた材料は此方で用意致しました。」と言ってクルス先生は杖を取り出してポンッと台を叩けば目の前に食用の肉を取り去った鶏の骨と髄。それらにはわずかな肉が残っていた。長ネギの青い部分に、生姜、ニンニク、料理酒、水、それから寸胴鍋が出てきて台の上が一瞬にして埋まった。
「うわぁ。魔法って便利。」
「方法がいくつかあります。1つ、これらを全てバラバラに見た目だけ石に変えてから煮る。2つ、全てを煮てスープの状態にしてから石にする。3つ、これらの材料を1つの石に変えて煮込む。さて、どれが適切でしょうか?料理に知識が無い為サッパリで。」と先生は顎を持って首を傾げる。
「なるほど、全て煮てスープの状態にしてから石にしたいです。それで、この石から水のみを取り去りたいです。」
「なるほど、そう来ましたか。錬金術で作る薬と同じですね。薬剤師は魔法で水分を飛ばしますが錬金術は錬成陣を用いて魔力を制御し、指示を出して飛ばします。」
「錬成陣ですか!?」
「はい、この錬成陣はいくつも種類がございます。これを習得した者こそが錬金術士です。」
「で、水を飛ばすのは、どのような図なのですか?」と聞けばクルス先生は驚いた顔をした。
「あら?おかしな事を言いましたか?」
「いえ、エルヒリア様の飲み込みの早さに驚いていたのです。錬金術についての知識を学ぶ事は禁止はされておりませんが、教材は全て王室図書館の禁書の棚にしか存在致しません。エルヒリア様はこの先、王族になられるお方だからこそ私が錬金術を教えるという許可が降り、教材を用いず教えております。ですから普通は錬金術に錬成陣がいる等という知識は世間では存在しない知識ですので、それを理解されているという事に驚きを隠せませんでした。」
「え!?許可ですか?私子供達30人に錬金術を教えてるのは法に触れるのですか?」
「いえ、先程も言いましたが、禁止はされておりません。死刑になったり罰を与えられたり等ございませんの。ただ、錬金術をマスターしてしまえば国から高収入の上手い話しで誘惑され私のように篭の中の鳥のようになってしまいます。監禁されているという訳ではございませんが、全て買い揃えて頂けますので、外に出る必要がないので。」
「そうなのですか。良かった。先生、それより授業をお願いします。」
「あ、はい。水分を飛ばす為の陣はこうです。」
先生は丁寧に紙に錬成陣を書いてくれた。紙には十字線に見た事がない記号が書かれていた。
「火、水、風、土という四元素の記号と四元素を成さしめる「熱・冷・湿・乾」の4つの性質、四性質を記号にしたものを書いております。ヒトに右を向いて下さい、左を向いて下さいと指示すれば向くように、この記号を使えば魔力がそれに従います。ですので魔法陣を作り出すには指示記号を覚える必要があります。」
「面白いですね!!ワクワクしてきました!」
「では、それを踏まえて今日は私が手伝いますので、スープを作って石にしてみましょう。」
「はい!」

数時間後、鶏ガラスープをとるのに何時間も煮込まなければいけないので時間がかかってしまったが、遂に待望のスープの石が完成した。思わず「できたぁ!」と声を出してしまった。実際に完成したスープの石はホワイトオパールのようなキラキラした石だった。これは油の成分のせいでキラキラしているのだろうなと理解できる。スープの石を実際に作ってみる事によって自分が学ばなければいけない事が沢山見えてきた。何としても錬成陣を全て覚えなければいけない。それから材料を粉末にしてしまう事も可能なようだった。後でこれを子供達にも教えていかなければならない。しっかり理解しないといけないわね。
「遅くなってしまいましたね。すみません、まさか料理というものが、こんなにも時間がかかるものだとは思っていませんでした。」
「あはは、そうですよね。実際にスープの石が出来上がった事が嬉しいので気にしないで下さい。そうだ。先生、実際ラーメンというものを食べてみたくないですか?」
「ラーメン…ですか?聞いた事も見た事もありませんが、エルヒリア様が作って下さるものなら喜んで頂きます。」
「でも、先生。錬成陣は手伝って下さいね。」
「はい。良いですよ。」

さらに2時間経ち、見事にラーメンが完成した。
「工程をみる限り、とても食したいとは思えませんが、この食欲をそそる香りと言いますか、早速食べてみたいと思います。」
先生はそう言ってフォークで麺をすくい口に運んだ。
私は記憶を取り戻してから、直ぐに作ってもらったMy箸を使ってラーメンをすすった。
「これは!!なんという!!どこの国の食べ物なのですか?まさか神の国のレシピですか?」と興奮気味に質問されて、ラーメンを食べる手が止まらない先生。
「そうかもしれませんね。ふと思いついたレシピです。」
「思いついた!?やはりエルヒリア様は天才です!!食塩を電気分解しろだとか、そこに二酸化炭素をいれろだとか言われた時は胃に穴でもあける気かと疑ってしまいましたが、こんなに素晴らしい物になってしまうとは、恐れ入りました。」と笑顔の先生。
「先生、内心では笑顔でそんな事思っていたのですね。」
まぁ、確かに重曹を1から作って、それを小麦粉に混ぜたのだ。疑われても仕方がない。特に醤油を作る時も魔法で無理矢理時間経過してもらったりと中々お見せできるものではない工程を見せてしまっていたしね。
久しぶりに食べたラーメンの味は、とても懐かしくて切なかった。これがノスタルジーってものなのね。
魔力について徹底的に追及する事などすっかり忘れて1日を終えてしまった。
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