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第六話【ギルクライムの血筋】

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気を失っているフェリスをミアに任せて、私はジェイドを客室に案内した。せっかくだからゆっくり話をしようと思った。客室に入って椅子に座ればギルバートが上質なお菓子と紅茶を出してくれた。
本当に髪の毛邪魔そうだなぁ。と思ってしまう。ツヤツヤした金髪で綺麗なのだけど。そう思っているとギルバードが「失礼します」と言って、一瞬でジェイドの髪の毛をカットし、前見た通りのジェイドに早変わりした。ギルバートは礼をしてから部屋を出た。ジェイドと二人っきりとなった。
「話とはなんだ?」とジェイド。
「あ、はい。ギルクライムの血筋は錬金術を使う事ができないとジグルド様に言われてしまいました。どういう意味なのでしょうか?」
「ふむ。ギルクライムか。元々、この国は中央のスイートローズだけであったが、中央を囲むかのように東西南北にエッケンシュタット・ハイドシュバルツ・ギルクライム・クラリアス、それぞれの国があった。スイートローズ国は戦争して勝った事により今の形になっているの。とうのは知っているか?」
「えぇ!?教科書にのってませんよ!」
「大昔の話で、その歴史を知る者がいては、いつの時代か内乱が起きてしまう可能性がある為、隠されたんだ。今は王族にしか伝わらない。まぁ、僕しか知らない事実だろうけどね。父上も兄上も歴史書なんて浅いところまでしか読まないし、王族のみが読むことを許された禁書に記されている事だしね。」
「そんな話を軽々と私にしても大丈夫なのですか!?」と血の気が引いていくのを感じた。
「問題無い。普通の婚約者ではないからな。聖女様からの神託による婚約は絶対だ。リアはそのうち王族になるしかないんだ。」と少し影を落としたような顔を見せる。
(でも、貴方死ぬじゃん。もしくは何かしらのBADENDが用意されてるじゃん。でも、どうして王子側が暗い顔するの。)
「まぁ、そうですね。で、それとギルクライム家はどういう関係があるのですか?」
「それぞれ国の特徴があった。エッケンシュタットもハイドシュバルツも魔法に長けている国だった。クラリアスは魔法はもちろん長寿にも長けていたそうだ。なかなか歳をとらない。そんな中、ギルクライムは唯一魔法を放棄した国だ。」
「魔法を放棄?あんな便利なものを国全体で放棄したのですか?」
「そうだ。神の国と呼ばれる国が大陸のどこかに存在し、神の国は文字通り神々が住まう国だ。そこの住人が何かの気の迷いで稀に国外へ出るそうだ。スイートローズ、エッケンシュタット、ハイドシュバルツ、クラリアス、ギルクライムはどれも神の国住人の末裔だ。だからこそ血筋を大事にしている。初代ギルクライムの王は魔法を嫌った。とても難しい言葉でそれが記してあった。僕はこう読み解いた。退屈だと。自らの血に魔法を封印し、変わりに特殊な能力が備わるように仕組んだ。それがギルクライムの血を少しでも受け継ぐものだ。どれだけ薄れていても、必ず発動する。ギルクライム領では幼い頃から剣術を習わすそうだ。特殊な能力が発現した者は公爵家の騎士として育てられる。その、フェリスという少年もきっと、孤児になる前は剣術を習ったはずだ。ギルクライムで孤児がでる事など、ほとんどありえない。孤児は全てギルクライム警備軍に入って日々厳しい剣術を叩き込まれて過ごすはずなのだからな。」
「とんでもないところですね。私絶対嫌です。運動が一番苦手なので。」
「っははは。運動が苦手なのか。覚えておく。」
「あっ。フェリスの手から黒い剣が現れたのですが、それが特殊能力という事ですか?」
「恐らくそうだろうな。黒剣を出したとすると、そう遠くない血筋なはず。」
「それでギャラクレアに手紙を送ったのです。その返事がまさにこれです。」と言ってジグルドが届けてくれた手紙を見せてから開封する。
‥‥
エルヒリア様へ
ジェイド王子とは上手くいっていますか?サノアルが心配しておりましたよ。近いうちに情報交換の為、またお茶会を開くそうです。
それと、フェリス君の件ですが、お兄様に調べて頂きましたが全く該当しませんでした。
恐らく、遠い昔にギルクライム領を出た者か追放された物の末裔だろうという事です。
兄はそちらで引き取ってもらって構わないと言っておりましたので、問題ありませんわ。
それと、ギルクライム特有の能力が目覚めてしまうかもしれません。ギルクライムの血筋は魔法が使えない代わりに特殊能力に目覚める設定があります。兄はそちらで引き取ってもらって構わないと言っておりましたので、問題ありませんわ。
ギャラクレアより。
追伸、ジグルド・ウロボロスを攻略した経験はございますか?私の記憶が正しければ、この世界に存在するジグルドはゲームの中のジグルドとは違います。サノアルも似たような事を仰っていましたのでお気をつけ下さい。私に用がある時は魔法で手紙を送りつけてくださいませ。
‥‥
追伸が長い。でも濃い内容だった。
「丁度ギルクライムの特殊能力について書いてありました。それから、フェリスはギルクライム領の孤児じゃないそうなので、こっちで預かってて良いみたいです。」
「そうか。不思議な事もあるものだな。」とジェイドは顎を持ち少し俯く。
王族だからなのか、とても一回り年下から出る発言とは思いにくい。そういえば自分は今年で16歳だが、ジェイドが何歳になるのかさっぱり不明だった。後でギルバートに聞いてみよう。
「ジェイド、体調は大丈夫ですか?」と聞けばジェイドが目を大きく見開いて、席を立ち後退る。
「リアこそ大丈夫か?僕はこの通り平気だ。こんな長い時間密室で僕と接していたんだ。具合が悪いのではないか?」と異常なくらい心配そうな顔をしているが、ジェイドがどんどん部屋の隅へ後退っていくので、それが可笑しくて笑ってしまった。
「あっはっはは。大丈夫ですよ。戻ってきてください。」
「ほ、本当か?」
「本当です。何の異常もありません。私、とっても頑丈な体なのです。」
「本当に、本当なのか?触っても気持ち悪くならないのか?」と今度は近寄って、私の手をとった。
「本当に本当です。なんともありません。」
「そうか、良かった。」と嬉しそうに頬んで私の手を自身の頬にあてるジェイド。
なんて可愛いのだろうか。破壊力でしかない。可愛すぎる。天使!?天使なのだろうか。

しばらく雑談した後、ジェイドは再びクルス先生の手によって魔法で王城へ送られた。テレポートは便利だなぁと思って見ていたが、どうやら凄腕の魔法使い以外は使えないようだった。資格の無い中途半端な魔法使いが使うと体がバラけてしまう事があるのだと聞かされて顔から血の気が引いて行くのを感じた。

その夜、丁度ギルバートが子供達の報告をしに部屋へ来てくれた。
「予定通り計31名揃い、部屋の用意も整いました。かかった費用は此方になります。これからかかるであろう費用もまとめておきました。やはりフェリス以外の子供達は錬金術の基礎をクリアしておりますね。」
「ありがとう、どう頑張ってもフェリスには厳しそうね。残念だけど、フェリスには私の護衛騎士になるように教育方針を変えてもらえるかしら?」
「畏まりました。それでは失礼致します。」と言って部屋を出て行こうとするギルバートに「ちょっと待って!」と言って引き留めた。
「どうされましたか?」
「あの、ジェイド王子って、今年で何歳になるのでしたっけ。ほら、第一王子様と違って生誕祭をなされないから、少しあやふやになってしまって。」
「はい?ジェイド様は今年で19歳になられます。」
「あぁ、そうよね。しっかり覚えてたわ。19さ……うえぇぇぇぇぇぇ!?じゅうきゅう!?」
エルヒリアのとんでもない声が屋敷中に響いた。
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