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11 果てしない物語 ー さくらサイド ー
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はじめての発情期セックスに疲れはてたかわいい僕の番は僕が仕掛けるいたずらにも時々睫毛を震わせるだけで目覚める様子はない。
(かーわいいなぁ)
はじめちゃんの白いうなじにはまだ痛々しい僕のつけた噛みあと。思ったよりも深く噛みすぎたらしく赤黒く血が固まっている。
これでやっと僕だけのはじめちゃんになった。ちろりちろりと舌で赤をなぞる。舌先に感じる鉄の味。唾液を垂らして塗り込むようにねっとりと歯形の一つ一つをなぞるようにねぶる。はじめちゃんの身体の髄まで僕が染み込むように。
「ぜーんぶ作り替えてあげる」
はじめてはじめちゃんに会ったのは彼の保護されていた施設のバザーのお手伝いに行ったときだった。親たちが作業する間子供たちで遊んでなって放り込まれた部屋にいたのは庇護欲をそそる天使みたいな子供だった。
はじめて会った時なんだかとってもいい匂いがしてお友達になりたいなぁって思ったんだ。施設の子って距離をとりつつも他の子供たちも皆はじめちゃんの仲良しになりたがっていた。人を疑うことを知らなかったはじめちゃんはほんとに危なっかしくて。変な子達のおもちゃになりかけてたから僕が守ってあげるって約束したんだ。
「僕が守ってあげるから他の人は怖いんだから」
「うん」
年上の兄がいた僕はお気に入りの物ができたら掴んではなしちゃダメだって経験則から知っていた。この世は弱肉強食だ。なんていいながらおやつを僕と取り合う右手になんか封印されてるらしい僕のおにいちゃん。色々面白いことを知っているから嫌いじゃないよ。何か出来事と人とかを結びつけるのは刷り込みっていうんだって。梅干しを見たらすっぱい顔になっちゃうとかね。
僕とはじめちゃんが離れている間も僕のことを考えてもらえるようにしたいと思っていた僕は即行動に移した。
本が好きなはじめちゃん。はじめちゃんが本を読むときは必ずとなりに引っ付いて「本=ぼくの存在」ってなるように。後はお昼寝の時は「ぼくだけがはじめちゃんの仲良しだよ。他の人はだめだよ。こわいこわいだよ」ってささやいた。後から催眠術の本っていうのを読んでひょっとしたら僕ははじめちゃんに催眠術をかけてたのかもしれないって思った。けど子供のしたことだし。はじめちゃんは僕だけのはじめちゃんでいてくれたから僕は嬉しかった。
はじめちゃんがいつもいい匂いがするのを不思議に思っていた僕は右目が魔眼とかいうものになってしまったおにいちゃんから『運命の番』という繋がりを聞いてぼくたちはきっと『運命の番』ってやつだと思ったんだ。
思ったのに。
あの日川遊びに行った先で僕は突然深くなった川底に足を取られて死んでしまった。
(約束したのに。はじめちゃんと約束したのに!!)
そんな前世の記憶が僕によみがえったのは学校のプールの授業中で潜水の最中にパニックになった僕は必死でプールサイドに上がって命のありがたみを神様に感謝した。
(神様ありがとう。はじめちゃんときっと結ばれます!)
それが10歳の時。
二度目の人生はお金持ちのアルファ家庭に生まれついていたことでイージーモードだった僕は才能だってお金だってあったのであっさりはじめちゃんを見つけることができた。
でも障害となったのが距離と年齢。田舎の跡取り娘と警察官僚という両親は父は仕事のために都会で暮らし僕と兄弟たちは田舎で暮らすという別居婚ではじめちゃんの住む都会へ出るには年齢が足りなかった。
はじめちゃんがほぼ引きこもりのような生活をしてくれていたお陰で文明の利器が彼の近況を伝えてくれていたし、時々虫がつきそうなときは人を使って追い払った。
彼が大人の人に恐怖心を持っているらしいとわかってからは成長抑制剤もつかって可愛らしさの残る容姿をキープした。父親を見れば2メートル近い大男になる可能性がたかかったからね。おかげでアルファフェロモンもほぼ抑えられてはじめちゃんは僕のことをオメガだと思い込んで共同生活もはじめられた。
だって絶対にはじめちゃんから好きになってもらいたくて無理強いとかしたくなかったんだよね。だからはじめちゃんの役に立ちたいって気持ちを利用させてもらった。
「ごめんね。痛かったかな」
許しを乞うように歯形に優しく口づけを落とす。
「ずっと一緒にいようね」
僕はベッドから出ると昨夜のアレコレでななめになってしまった壁にかかった絵画をもとの位置に戻した。
(アングルって大事だからね)
発情期の熱に持っていかれて昨晩はそんなことを気にする余裕がなかった。戸惑いながらも発情でメスになったはじめちゃんがかわいくてただただ一つに溶け孕ませることしか考えられないアルファ脳になってしまった自分が予想以上に本能に忠実な獣で笑いがでる。でも今後も自制が出来る気がしない。それほどにはじめちゃんのフェロモンは僕をバカにする。
(カメラの台数増やそうかな)
ムクリとたちあがった息子を見て僕は思った。まだまだ足りないと番を求める欲望には果てがない。
(これこそネバーエンディングストーリーってね)
ベッドでもぞりと僕の愛しい番が動いた気配がした。
今日からが二人のはてしない物語の始まり。
(かーわいいなぁ)
はじめちゃんの白いうなじにはまだ痛々しい僕のつけた噛みあと。思ったよりも深く噛みすぎたらしく赤黒く血が固まっている。
これでやっと僕だけのはじめちゃんになった。ちろりちろりと舌で赤をなぞる。舌先に感じる鉄の味。唾液を垂らして塗り込むようにねっとりと歯形の一つ一つをなぞるようにねぶる。はじめちゃんの身体の髄まで僕が染み込むように。
「ぜーんぶ作り替えてあげる」
はじめてはじめちゃんに会ったのは彼の保護されていた施設のバザーのお手伝いに行ったときだった。親たちが作業する間子供たちで遊んでなって放り込まれた部屋にいたのは庇護欲をそそる天使みたいな子供だった。
はじめて会った時なんだかとってもいい匂いがしてお友達になりたいなぁって思ったんだ。施設の子って距離をとりつつも他の子供たちも皆はじめちゃんの仲良しになりたがっていた。人を疑うことを知らなかったはじめちゃんはほんとに危なっかしくて。変な子達のおもちゃになりかけてたから僕が守ってあげるって約束したんだ。
「僕が守ってあげるから他の人は怖いんだから」
「うん」
年上の兄がいた僕はお気に入りの物ができたら掴んではなしちゃダメだって経験則から知っていた。この世は弱肉強食だ。なんていいながらおやつを僕と取り合う右手になんか封印されてるらしい僕のおにいちゃん。色々面白いことを知っているから嫌いじゃないよ。何か出来事と人とかを結びつけるのは刷り込みっていうんだって。梅干しを見たらすっぱい顔になっちゃうとかね。
僕とはじめちゃんが離れている間も僕のことを考えてもらえるようにしたいと思っていた僕は即行動に移した。
本が好きなはじめちゃん。はじめちゃんが本を読むときは必ずとなりに引っ付いて「本=ぼくの存在」ってなるように。後はお昼寝の時は「ぼくだけがはじめちゃんの仲良しだよ。他の人はだめだよ。こわいこわいだよ」ってささやいた。後から催眠術の本っていうのを読んでひょっとしたら僕ははじめちゃんに催眠術をかけてたのかもしれないって思った。けど子供のしたことだし。はじめちゃんは僕だけのはじめちゃんでいてくれたから僕は嬉しかった。
はじめちゃんがいつもいい匂いがするのを不思議に思っていた僕は右目が魔眼とかいうものになってしまったおにいちゃんから『運命の番』という繋がりを聞いてぼくたちはきっと『運命の番』ってやつだと思ったんだ。
思ったのに。
あの日川遊びに行った先で僕は突然深くなった川底に足を取られて死んでしまった。
(約束したのに。はじめちゃんと約束したのに!!)
そんな前世の記憶が僕によみがえったのは学校のプールの授業中で潜水の最中にパニックになった僕は必死でプールサイドに上がって命のありがたみを神様に感謝した。
(神様ありがとう。はじめちゃんときっと結ばれます!)
それが10歳の時。
二度目の人生はお金持ちのアルファ家庭に生まれついていたことでイージーモードだった僕は才能だってお金だってあったのであっさりはじめちゃんを見つけることができた。
でも障害となったのが距離と年齢。田舎の跡取り娘と警察官僚という両親は父は仕事のために都会で暮らし僕と兄弟たちは田舎で暮らすという別居婚ではじめちゃんの住む都会へ出るには年齢が足りなかった。
はじめちゃんがほぼ引きこもりのような生活をしてくれていたお陰で文明の利器が彼の近況を伝えてくれていたし、時々虫がつきそうなときは人を使って追い払った。
彼が大人の人に恐怖心を持っているらしいとわかってからは成長抑制剤もつかって可愛らしさの残る容姿をキープした。父親を見れば2メートル近い大男になる可能性がたかかったからね。おかげでアルファフェロモンもほぼ抑えられてはじめちゃんは僕のことをオメガだと思い込んで共同生活もはじめられた。
だって絶対にはじめちゃんから好きになってもらいたくて無理強いとかしたくなかったんだよね。だからはじめちゃんの役に立ちたいって気持ちを利用させてもらった。
「ごめんね。痛かったかな」
許しを乞うように歯形に優しく口づけを落とす。
「ずっと一緒にいようね」
僕はベッドから出ると昨夜のアレコレでななめになってしまった壁にかかった絵画をもとの位置に戻した。
(アングルって大事だからね)
発情期の熱に持っていかれて昨晩はそんなことを気にする余裕がなかった。戸惑いながらも発情でメスになったはじめちゃんがかわいくてただただ一つに溶け孕ませることしか考えられないアルファ脳になってしまった自分が予想以上に本能に忠実な獣で笑いがでる。でも今後も自制が出来る気がしない。それほどにはじめちゃんのフェロモンは僕をバカにする。
(カメラの台数増やそうかな)
ムクリとたちあがった息子を見て僕は思った。まだまだ足りないと番を求める欲望には果てがない。
(これこそネバーエンディングストーリーってね)
ベッドでもぞりと僕の愛しい番が動いた気配がした。
今日からが二人のはてしない物語の始まり。
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