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愛情は最高のスパイスだろうか?
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ヤマトは単純な男だ。うまい飯があると誘えば乗ってくる。
ついでにあいつの好きな料理は小学生男子が好きなもので考えればまず外れない。
カレー・ハンバーグ・唐揚げとかそういうやつだ。
だから俺がカレーを作ったらトッピングにハンバーグと唐揚げとか温泉卵とかまで作ってる。簡単なようで実際作ると洗い物とか山のように出てめんどくさいんだけど、まぁヤマトのごちそうさまが俺のご褒美っていうか、惚れた弱みと言うか。
小学校の頃から餌付けしてきたんだ、あいつがまずまず立派な筋肉男子に育ったのは俺のめしのおかげもあると思う。
俺の飯をうまそうに食べるヤマトを見るのは楽しくて、いつも俺の飯を「うまい」「天才」「嫁にしたい」っていいながら食ってきたわけで脈がないと思いながらもしょっちゅう飯作ってた。
それが二人で寝たあの日の後から飯食いに来ないって、やっぱり気まずいのかなって思うだろ。
その日は3回目のドタキャンでさすがの俺もヤマトは俺に会いたくないんだろうなって思いはじめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺が幼馴染のことを好きになったのはいつだったのか。もう良くわからない。
はじめはいつも一緒にいる大好きな友達、だった。
家が近いし姉さんたちも友達同士だから長い休みに一緒に家族旅行に行くような仲で。
どっちかっていうと大人しい俺と比べてヤマトは友だちが多くて俺以外のやつと遊びに行くのをちょっとやな気持ちで見てたり。
でもいつの頃からか、あいつが無邪気に俺の肩を抱いたりするのにちょっとドキドキしてた。
両親が共働きで、姉の料理が壊滅的だったから俺の料理男子歴は小学校の中学年から始まった。だから家庭科でみんなでカレー作ったり卵焼き作ったりする時にはみんなより2歩も3歩も進んでたわけで、料理上手を好きな男子にアピールしたいと思ってた女子に邪魔者扱いされた。
足が速ければモテる時代、運動のできるヤマトは人気者だった。目つきは悪いけど誰にでも明るく話しかける性格だし、多分クラスで一番人気だったんじゃないかな。そんな中ヤマトはユリちゃんのこといいなって思ってたみたいだった。ユリちゃんは可愛くてちょっと気が強い、女子グループのボスみたいな子だったんだけど、ヤマト面食いだからな、難のある性格には気づいてなかったみたい。そして案の定ユリちゃんはヤマトに焦げてはいるけどなんとか形になった卵焼きを味見させたんだよね。
んで、ヤマトが言っちゃったんだ。
「ユリちゃんちは塩味なんだ。俺甘いほうが好きだな」
「ヤマトくんのママの卵焼きお砂糖入ってるんだね」
「ううん。カイトの卵焼きが甘いんだ。ふわふわでものすごく美味しいんだ」
俺はその言葉を聞いてちょっとうれしくなって顔が笑ってしまったんだと思う。そしたらユリちゃんが俺の方を見ていたんだ。大きな目をもっと大きくして、俺のことじっと見てた。やばい、と二人に背を向けたけど時既に遅し。
『なぁ?』って俺の背後からヤマトが話しかけてたけど俺は聞こえないふりして片付けをしてた。ドクンドクンと耳の中で自分の鼓動がやけに大きく響いてた。ユリちゃんと目を合わせちゃいけない。そう思ってひたすらスポンジでゴシゴシとフライパンをこすった。
でも、もちろんユリちゃんはごまかされなかった。恋する女の勘ってやつだったんだろう。それからしばらくのことは思い出したくもない。
「男の料理のほうがいいって、ヤマトとカイトはホモだ」
って悪口言われて。
ホモってなんだろうって思ってたら、黒板に相合い傘でヤマト・カイトなんて書かれてて、そういうことなんだって腑に落ちた。
ヤマトは全然気にしてなかったけど、俺がヤマトのことを好きだって言い当てられた俺は顔面蒼白だった。だってヤマトは男だから。男が男を好きなことをホモって言うんだ。おかしなことなんだ。
『寄るなホモ!ホモが伝染る』『キモチワル!』『カイト女みたいにナヨナヨしてるもんな』
新しい遊びのようにあっという間にクラスのヤマトと俺が仲がいいのを気に食わなかったやつらがここぞとばかりに言葉の暴力で俺を痛めつけてきた。笑いながら、いじりで済ませられる程度の口調で、でも俺を傷つけたくてしょうがない残酷さをちらつかせながら。
子どもは敏感だからきっとあの時俺の本当の気持ちにきづいたのはユリちゃんだけじゃなかったんだろう。
けれどヤマトが気にしないから俺たちをホモネタでいじるのはすぐにはやらなくなった。
でも俺はしっかりと自覚した。
俺はおかしいんだ。ヤマトは気づいてないから気にしてないんだ。気づかれたらきっと俺のこと嫌いになる。って。
それからはヤマトのことを好きだってバレないように毎日必死。
数校の小学校が合流した中学校では俺達のことを知らない奴らも多くて、ホモネタも消えたかと思った。
そんな時、ヤマトがバレンタインのチョコレートを欲しがった。
バレー部男子の中で誰が一番チョコもらえるか競争してるんだって。だからラッピングも女子が作ったみたいにしてくれって。
「手作りなんておれやったことない」
めんどくせーな、と思ってるぞとアピールするために不機嫌そうにいう。うそ。ほんとは去年も一昨年も姉ちゃんの代わりに手作りした。さすがにヤマトにおすそ分けとか気持ちがバレそうでできなかったけど。本当はヤマトに食べさせたいくらい美味しいのができてたんだ。
「カイト料理うまいんだからちゃちゃっとできそうじゃん」
頼む!と俺を拝むヤマトをじろりとにらみつける。
・・・・ふん、できるよ。基本うまいクーベルチュールチョコレートを刻んであっためた生クリーム入れて混ぜて溶かしてちょっと冷やして丸めればチョコトリュフなんてあっという間にできる。片付けが面倒だけどな。
「そんで机の中とかにこそっと入れておいてほしいんだよ」
「はぁ?そんなとこクラスのやつとかに見られたらどうすんだよ。お前バカ?」
俺が今まで必死に隠してきたのにまたホモホモ言われるだろうが!
「じゃあ、教科書に挟んで自分で入れるから!朝迎えに来るからさ、頼むー!!」
どうしてそんな小賢しいことまで考えつくのか。絶対教科書出す時にチョコのこと忘れて落としたりするに違いないと思った俺は正しかった。
袋に入れて渡した俺のチョコと教科書を無理やり机に突っ込もうとして机の中のものまで盛大に床に落とし、本当に女子がくれた机に入れていてくれたチョコと見分けがつかなくなってしまう、をやらかした。
おおざっぱで単純で、でも優しいし、ちょっと目付きが悪いけど背だって高くなっていたヤマトに目ざとい女子が本気チョコを渡してこないわけがないんだ。分かってたのに、ヤマトに自分の作ったチョコをバレンタインに渡せるってちょっと浮かれた俺へバチが当たったんだろう。
ヤマトはチョコをくれた女子と付き合い出した。めっちゃおいしい手作りチョコだったから、愛情がこもってたから、って。そんなんで味が変わるなら俺のチョコは世界一うまいはずだ。って思ったけど、もちろん言えずによかったな。って言ってやった。
ヤマトを好きな女子は鬼門。俺の気持ちに気づいてしまうから。だから二人が一緒にいる時には関わらないようにしてた。デートの話も彼女が好きな音楽の話も嫉妬で頭の中がぐらぐら煮え返るから聞きたくない。ヤマトを避け続けた。そしたら春休みに入ってから頬にビンタのあとをつけたヤマトがうちに来た。
振られたって。
俺の作ったチョコと彼女のチョコ勘違いしてたのがバレたって。今日のデートでもう一回チョコ持ってきてほしいっていったら、バレンタインの時のめちゃうまトリュフじゃなかったからなんで?って聞いちゃったって。俺の事好きじゃなくなったの?って聞いちゃったって。
手作りに愛情がこもるとか昭和か!!ってめんどくさい昭和男認定くらって。ついでに彼女はトリュフじゃなくて型抜きチョコをくれてたってのが判明してチョコの味で付き合ったのがバレて平手打ちされて振られたって。
「おまえ、バカか?愛情の増減でチョコの味が変わるかよ」
そういってその時は元彼女の肩をもってしまった俺だけど、ヤマトにカレーを作る時にはあいつの好きな温泉卵とからあげとハンバーグをトッピングにつけてやりたいと細々用意しちまうしヤマトのために作った料理はいつもよりうまく出来上がる気がするから、愛情が料理に反映されるってのは頭から否定もできない。俺もヤマトと同じくらいめんどくさい昭和ホモ男なのかもな。
あいつが喜ぶからって用意した唐揚げ用の肉は下味をつけて冷蔵庫に入れてある。ハンバーグ用の肉もこねて整形まで終わってる。温泉卵だってつくってある。
なのに・・・・携帯の画面を見ながら俺はため息をひとつ。
『わりー今日晩飯の時間に行けそうにない!』
・・・・バカヤマト。
「じゃがいも入れたカレーは日持ちしないんだっつーの」
くつくつと鍋の中で煮えるカレーを鍋の底からかき混ぜた。
急にやる気を削がれた俺は鍋の火を消して部屋へ向かった。からあげとハンバーグは明日しあげよう。弁当に入れればいいや。
今日は両親は旅行、姉は彼氏んちだって言うから俺は家に一人だっての・・・・なんか誘ってるみたいでヤマトには言えなかった。
「バカヤマト」
つぶやいた言葉は家中を漂うカレーの匂いの闇に溶けて消えた。
ついでにあいつの好きな料理は小学生男子が好きなもので考えればまず外れない。
カレー・ハンバーグ・唐揚げとかそういうやつだ。
だから俺がカレーを作ったらトッピングにハンバーグと唐揚げとか温泉卵とかまで作ってる。簡単なようで実際作ると洗い物とか山のように出てめんどくさいんだけど、まぁヤマトのごちそうさまが俺のご褒美っていうか、惚れた弱みと言うか。
小学校の頃から餌付けしてきたんだ、あいつがまずまず立派な筋肉男子に育ったのは俺のめしのおかげもあると思う。
俺の飯をうまそうに食べるヤマトを見るのは楽しくて、いつも俺の飯を「うまい」「天才」「嫁にしたい」っていいながら食ってきたわけで脈がないと思いながらもしょっちゅう飯作ってた。
それが二人で寝たあの日の後から飯食いに来ないって、やっぱり気まずいのかなって思うだろ。
その日は3回目のドタキャンでさすがの俺もヤマトは俺に会いたくないんだろうなって思いはじめていた。
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俺が幼馴染のことを好きになったのはいつだったのか。もう良くわからない。
はじめはいつも一緒にいる大好きな友達、だった。
家が近いし姉さんたちも友達同士だから長い休みに一緒に家族旅行に行くような仲で。
どっちかっていうと大人しい俺と比べてヤマトは友だちが多くて俺以外のやつと遊びに行くのをちょっとやな気持ちで見てたり。
でもいつの頃からか、あいつが無邪気に俺の肩を抱いたりするのにちょっとドキドキしてた。
両親が共働きで、姉の料理が壊滅的だったから俺の料理男子歴は小学校の中学年から始まった。だから家庭科でみんなでカレー作ったり卵焼き作ったりする時にはみんなより2歩も3歩も進んでたわけで、料理上手を好きな男子にアピールしたいと思ってた女子に邪魔者扱いされた。
足が速ければモテる時代、運動のできるヤマトは人気者だった。目つきは悪いけど誰にでも明るく話しかける性格だし、多分クラスで一番人気だったんじゃないかな。そんな中ヤマトはユリちゃんのこといいなって思ってたみたいだった。ユリちゃんは可愛くてちょっと気が強い、女子グループのボスみたいな子だったんだけど、ヤマト面食いだからな、難のある性格には気づいてなかったみたい。そして案の定ユリちゃんはヤマトに焦げてはいるけどなんとか形になった卵焼きを味見させたんだよね。
んで、ヤマトが言っちゃったんだ。
「ユリちゃんちは塩味なんだ。俺甘いほうが好きだな」
「ヤマトくんのママの卵焼きお砂糖入ってるんだね」
「ううん。カイトの卵焼きが甘いんだ。ふわふわでものすごく美味しいんだ」
俺はその言葉を聞いてちょっとうれしくなって顔が笑ってしまったんだと思う。そしたらユリちゃんが俺の方を見ていたんだ。大きな目をもっと大きくして、俺のことじっと見てた。やばい、と二人に背を向けたけど時既に遅し。
『なぁ?』って俺の背後からヤマトが話しかけてたけど俺は聞こえないふりして片付けをしてた。ドクンドクンと耳の中で自分の鼓動がやけに大きく響いてた。ユリちゃんと目を合わせちゃいけない。そう思ってひたすらスポンジでゴシゴシとフライパンをこすった。
でも、もちろんユリちゃんはごまかされなかった。恋する女の勘ってやつだったんだろう。それからしばらくのことは思い出したくもない。
「男の料理のほうがいいって、ヤマトとカイトはホモだ」
って悪口言われて。
ホモってなんだろうって思ってたら、黒板に相合い傘でヤマト・カイトなんて書かれてて、そういうことなんだって腑に落ちた。
ヤマトは全然気にしてなかったけど、俺がヤマトのことを好きだって言い当てられた俺は顔面蒼白だった。だってヤマトは男だから。男が男を好きなことをホモって言うんだ。おかしなことなんだ。
『寄るなホモ!ホモが伝染る』『キモチワル!』『カイト女みたいにナヨナヨしてるもんな』
新しい遊びのようにあっという間にクラスのヤマトと俺が仲がいいのを気に食わなかったやつらがここぞとばかりに言葉の暴力で俺を痛めつけてきた。笑いながら、いじりで済ませられる程度の口調で、でも俺を傷つけたくてしょうがない残酷さをちらつかせながら。
子どもは敏感だからきっとあの時俺の本当の気持ちにきづいたのはユリちゃんだけじゃなかったんだろう。
けれどヤマトが気にしないから俺たちをホモネタでいじるのはすぐにはやらなくなった。
でも俺はしっかりと自覚した。
俺はおかしいんだ。ヤマトは気づいてないから気にしてないんだ。気づかれたらきっと俺のこと嫌いになる。って。
それからはヤマトのことを好きだってバレないように毎日必死。
数校の小学校が合流した中学校では俺達のことを知らない奴らも多くて、ホモネタも消えたかと思った。
そんな時、ヤマトがバレンタインのチョコレートを欲しがった。
バレー部男子の中で誰が一番チョコもらえるか競争してるんだって。だからラッピングも女子が作ったみたいにしてくれって。
「手作りなんておれやったことない」
めんどくせーな、と思ってるぞとアピールするために不機嫌そうにいう。うそ。ほんとは去年も一昨年も姉ちゃんの代わりに手作りした。さすがにヤマトにおすそ分けとか気持ちがバレそうでできなかったけど。本当はヤマトに食べさせたいくらい美味しいのができてたんだ。
「カイト料理うまいんだからちゃちゃっとできそうじゃん」
頼む!と俺を拝むヤマトをじろりとにらみつける。
・・・・ふん、できるよ。基本うまいクーベルチュールチョコレートを刻んであっためた生クリーム入れて混ぜて溶かしてちょっと冷やして丸めればチョコトリュフなんてあっという間にできる。片付けが面倒だけどな。
「そんで机の中とかにこそっと入れておいてほしいんだよ」
「はぁ?そんなとこクラスのやつとかに見られたらどうすんだよ。お前バカ?」
俺が今まで必死に隠してきたのにまたホモホモ言われるだろうが!
「じゃあ、教科書に挟んで自分で入れるから!朝迎えに来るからさ、頼むー!!」
どうしてそんな小賢しいことまで考えつくのか。絶対教科書出す時にチョコのこと忘れて落としたりするに違いないと思った俺は正しかった。
袋に入れて渡した俺のチョコと教科書を無理やり机に突っ込もうとして机の中のものまで盛大に床に落とし、本当に女子がくれた机に入れていてくれたチョコと見分けがつかなくなってしまう、をやらかした。
おおざっぱで単純で、でも優しいし、ちょっと目付きが悪いけど背だって高くなっていたヤマトに目ざとい女子が本気チョコを渡してこないわけがないんだ。分かってたのに、ヤマトに自分の作ったチョコをバレンタインに渡せるってちょっと浮かれた俺へバチが当たったんだろう。
ヤマトはチョコをくれた女子と付き合い出した。めっちゃおいしい手作りチョコだったから、愛情がこもってたから、って。そんなんで味が変わるなら俺のチョコは世界一うまいはずだ。って思ったけど、もちろん言えずによかったな。って言ってやった。
ヤマトを好きな女子は鬼門。俺の気持ちに気づいてしまうから。だから二人が一緒にいる時には関わらないようにしてた。デートの話も彼女が好きな音楽の話も嫉妬で頭の中がぐらぐら煮え返るから聞きたくない。ヤマトを避け続けた。そしたら春休みに入ってから頬にビンタのあとをつけたヤマトがうちに来た。
振られたって。
俺の作ったチョコと彼女のチョコ勘違いしてたのがバレたって。今日のデートでもう一回チョコ持ってきてほしいっていったら、バレンタインの時のめちゃうまトリュフじゃなかったからなんで?って聞いちゃったって。俺の事好きじゃなくなったの?って聞いちゃったって。
手作りに愛情がこもるとか昭和か!!ってめんどくさい昭和男認定くらって。ついでに彼女はトリュフじゃなくて型抜きチョコをくれてたってのが判明してチョコの味で付き合ったのがバレて平手打ちされて振られたって。
「おまえ、バカか?愛情の増減でチョコの味が変わるかよ」
そういってその時は元彼女の肩をもってしまった俺だけど、ヤマトにカレーを作る時にはあいつの好きな温泉卵とからあげとハンバーグをトッピングにつけてやりたいと細々用意しちまうしヤマトのために作った料理はいつもよりうまく出来上がる気がするから、愛情が料理に反映されるってのは頭から否定もできない。俺もヤマトと同じくらいめんどくさい昭和ホモ男なのかもな。
あいつが喜ぶからって用意した唐揚げ用の肉は下味をつけて冷蔵庫に入れてある。ハンバーグ用の肉もこねて整形まで終わってる。温泉卵だってつくってある。
なのに・・・・携帯の画面を見ながら俺はため息をひとつ。
『わりー今日晩飯の時間に行けそうにない!』
・・・・バカヤマト。
「じゃがいも入れたカレーは日持ちしないんだっつーの」
くつくつと鍋の中で煮えるカレーを鍋の底からかき混ぜた。
急にやる気を削がれた俺は鍋の火を消して部屋へ向かった。からあげとハンバーグは明日しあげよう。弁当に入れればいいや。
今日は両親は旅行、姉は彼氏んちだって言うから俺は家に一人だっての・・・・なんか誘ってるみたいでヤマトには言えなかった。
「バカヤマト」
つぶやいた言葉は家中を漂うカレーの匂いの闇に溶けて消えた。
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