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4 親指サイズのシンデレラは料理を楽しむ
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それから数日が経ち温かいオーブン脇ですやすやして夜になってお掃除して、ちょっとずつ分かってきたことはフロー以外の使い魔は基本僕に絡んでこないってこと。
この家にはカエルの他にコウモリとかいろんな使い魔がいるんだけどたいてい小さな生き物が使い魔になってるみたい。踊るスプーンやティーポットが現れたり喋る鏡とか無いかなーっておもったんだけどね。
ちょっとだけあの有名なアニメスタジオの世界に転生したのかと思ったけど違うみたい。だーれもいきなり踊りだしたり歌いだしたりしないんだな。残念。魔法が使えなくても天賦のミュージカルの才能が僕に与えられてるかと思ったのにね。
初日にゲコゲコとうるさかったヒキガエルたちも普段はひんやりしめった地下にある穴で寝てるらしく僕の私室がわりのキッチンは静かなものだ。頑張ってきれいに掃除してわかったことはなんとこのキッチン食材が無限に湧いてくる食料庫がついてるの。最初は気づかなかった壁の裏になんと実はこんな秘密が!!
すごくない?すごいよねーだから魔法使いさんはきっと本当にすごい人なんだと思う。
だってここにいる限り食いっぱぐれること無いってことだよ!ウキウキしちゃった僕は大きなサイズになってる間に簡単なご飯を作ったりもしてる。
え?出来るのかって?
とーうぜーん!お料理だってお菓子だって家庭料理ならお任せあれ!
むふふーすごくない?僕それなりに料理男子なんだよね。
大学生で一人暮らしをし始めるまえに修行しろって妹から言われて酔いどれ料理人さんの料理配信や子育てママさんのお菓子づくりをネットで見まくっていたかいがあった。これもまた妹のお蔭さまなんだね。うんうん。
(今頃どうしてるのかな……)
きっともう二度と会えない家族のことを思ってしゅんとしていた僕を黒猫フローが呼びつける声がした。
「こぞう!こーぞーぉー!!これ!これなんだ?!」
使い魔のくせにやたらと物理で押してくる僕の上司フローはキッチンの作業台から僕を呼んでいるらしい。そっから呼ばれても顔を出してくれないと床の上からフローの様子は見えないというのに困ったもんだ。
「どれのこと?」
「このまるっこいやつだにゃ!」
この数日でわかったことだけどフローが可愛い語尾になる時は大抵あのきれいなお目々をキラキラさせてるんだよね。さては昨日の夜僕がちゃちゃっと仕込んでおいたご飯を見つけたな?
「なーんのことぉ?」
「お前、わかってるだろう小僧!このふわふわの丸いやつはなんだ?」
「えー?」
「お前、ちゃんと答えろ!答えないと恐ろしい目に合わすぞ!!」
作業台から身を乗り出してきたフローの顔が頭突きに入る3秒前になってたので僕は大人しく白旗をあげることにした。
「なんちゃってエビしんじょだよ」
「なん?ちゃってぇびじょ?」
「たたいたエビをお団子にしたのを揚げ焼きしたやつ。はんぺんとかあったらもっと美味しいんだけどさ。昨日は貯蔵庫にエビがあったんだよねぇ。意外に美味しく出来たからフローも食べてみたいかと思ってさ」
「お前がどうしてもっていうなら食べてやってもいいにゃ!!」
「はいはい、どーぞ召し上がれ」
僕がそういうとフローの頭はぴゃっと見えなくなった。作業台の上から咀嚼音とぴちゃぴちゃと皿を舐める音までしてきてどうやらお気に召したみたい。
しかし今のって僕が飼い主っぽくなかった?ご飯に待てをだしてちょっと辛抱させるの。フローってそういうとこある。召し上がれって言われないと僕の作った料理に手をつけない。
猫のくせにやたらとお行儀がいいなぁ?魔法使いのしつけかな?
おぉ、どうやら時間みたい。
僕の背丈がぐぐいっと伸びる。今日もお仕事の時間だねぇ。
どうやらこの家の部屋の配置は魔法使いの気分で変わるらしく昨日キッチンの隣にあった部屋が上の階に移っていたりとかある。
掃除した部屋がどこなのかわからなくなりがちなので最優先は魔法使いの寝室、次が僕のいるキッチン。
あとはフローが今日はこの部屋もしろとか言ってくるからそこをしていく感じ。
「フロー、今日はどこの掃除?」
「様をつけるにゃ!小僧!寝室のほかは今日は玄関ホール、逃げようなんてするんじゃないぞ!」
僕の前を歩いていくフローの尻尾がごきげんに揺れる。おいしかったんだね。かわいい。
なんとフローの尻尾は先が割れて二股なんだよね。猫又さんなのだ。年を聞いたら覚えてないって言われたけどね。どうやらご長寿。
あ、そうそう、ご長寿といえばこの館の主である魔法使いさん。
フローがいうことには「主様は魔法使いの中の魔法使い。大魔法使い!今まで誰にも負けたことがない。西の魔女と戦ってこのあたりで一番になったのが200年くらい前。それからずっと一番!さすがは俺の主様!!」らしい。
魔法使いの顔を見たことは無いけどきっとヨボヨボのおじいさんなんだと思う。
日本のご長寿さんも100歳超えたらしわくちゃのおじいちゃんおばあちゃんだもん。
いくら魔法使いでも、ねぇ?
その大魔法使いが今何をしてるのかと聞けばフローは言葉を濁した。
夜になるとお出かけしてるみたいで僕がお掃除している間に姿を見ることもないしほんとにここに住んでるの?
まあ下っぱも下っぱな僕に顔を見せる義理なんてないのかもだけど本物の魔法使いって会ってみたいよねー
やっぱり箒で空を飛んだりするんだろうか?
そんなことを考えながら僕は棚の上のほこりをはたきで落とす。落ちたほこりを箒で集めながら掃除機があればいいのになあと回りを見た。
まあ、こんなもんかな?
さっさとキッチンに戻ってフライドポテトと唐揚げを作ってしまいたい。小さくなってる間はほとんどなにも食べれないから大きくなってる今が爆食いチャンスなんだよね。
ご飯のことを考えた僕は急ぎ足でキッチンをめざす。
玄関ホールの扉についた外を覗くガラスを通して僕を覗くだれかの視線なんか気づかずに。
この家にはカエルの他にコウモリとかいろんな使い魔がいるんだけどたいてい小さな生き物が使い魔になってるみたい。踊るスプーンやティーポットが現れたり喋る鏡とか無いかなーっておもったんだけどね。
ちょっとだけあの有名なアニメスタジオの世界に転生したのかと思ったけど違うみたい。だーれもいきなり踊りだしたり歌いだしたりしないんだな。残念。魔法が使えなくても天賦のミュージカルの才能が僕に与えられてるかと思ったのにね。
初日にゲコゲコとうるさかったヒキガエルたちも普段はひんやりしめった地下にある穴で寝てるらしく僕の私室がわりのキッチンは静かなものだ。頑張ってきれいに掃除してわかったことはなんとこのキッチン食材が無限に湧いてくる食料庫がついてるの。最初は気づかなかった壁の裏になんと実はこんな秘密が!!
すごくない?すごいよねーだから魔法使いさんはきっと本当にすごい人なんだと思う。
だってここにいる限り食いっぱぐれること無いってことだよ!ウキウキしちゃった僕は大きなサイズになってる間に簡単なご飯を作ったりもしてる。
え?出来るのかって?
とーうぜーん!お料理だってお菓子だって家庭料理ならお任せあれ!
むふふーすごくない?僕それなりに料理男子なんだよね。
大学生で一人暮らしをし始めるまえに修行しろって妹から言われて酔いどれ料理人さんの料理配信や子育てママさんのお菓子づくりをネットで見まくっていたかいがあった。これもまた妹のお蔭さまなんだね。うんうん。
(今頃どうしてるのかな……)
きっともう二度と会えない家族のことを思ってしゅんとしていた僕を黒猫フローが呼びつける声がした。
「こぞう!こーぞーぉー!!これ!これなんだ?!」
使い魔のくせにやたらと物理で押してくる僕の上司フローはキッチンの作業台から僕を呼んでいるらしい。そっから呼ばれても顔を出してくれないと床の上からフローの様子は見えないというのに困ったもんだ。
「どれのこと?」
「このまるっこいやつだにゃ!」
この数日でわかったことだけどフローが可愛い語尾になる時は大抵あのきれいなお目々をキラキラさせてるんだよね。さては昨日の夜僕がちゃちゃっと仕込んでおいたご飯を見つけたな?
「なーんのことぉ?」
「お前、わかってるだろう小僧!このふわふわの丸いやつはなんだ?」
「えー?」
「お前、ちゃんと答えろ!答えないと恐ろしい目に合わすぞ!!」
作業台から身を乗り出してきたフローの顔が頭突きに入る3秒前になってたので僕は大人しく白旗をあげることにした。
「なんちゃってエビしんじょだよ」
「なん?ちゃってぇびじょ?」
「たたいたエビをお団子にしたのを揚げ焼きしたやつ。はんぺんとかあったらもっと美味しいんだけどさ。昨日は貯蔵庫にエビがあったんだよねぇ。意外に美味しく出来たからフローも食べてみたいかと思ってさ」
「お前がどうしてもっていうなら食べてやってもいいにゃ!!」
「はいはい、どーぞ召し上がれ」
僕がそういうとフローの頭はぴゃっと見えなくなった。作業台の上から咀嚼音とぴちゃぴちゃと皿を舐める音までしてきてどうやらお気に召したみたい。
しかし今のって僕が飼い主っぽくなかった?ご飯に待てをだしてちょっと辛抱させるの。フローってそういうとこある。召し上がれって言われないと僕の作った料理に手をつけない。
猫のくせにやたらとお行儀がいいなぁ?魔法使いのしつけかな?
おぉ、どうやら時間みたい。
僕の背丈がぐぐいっと伸びる。今日もお仕事の時間だねぇ。
どうやらこの家の部屋の配置は魔法使いの気分で変わるらしく昨日キッチンの隣にあった部屋が上の階に移っていたりとかある。
掃除した部屋がどこなのかわからなくなりがちなので最優先は魔法使いの寝室、次が僕のいるキッチン。
あとはフローが今日はこの部屋もしろとか言ってくるからそこをしていく感じ。
「フロー、今日はどこの掃除?」
「様をつけるにゃ!小僧!寝室のほかは今日は玄関ホール、逃げようなんてするんじゃないぞ!」
僕の前を歩いていくフローの尻尾がごきげんに揺れる。おいしかったんだね。かわいい。
なんとフローの尻尾は先が割れて二股なんだよね。猫又さんなのだ。年を聞いたら覚えてないって言われたけどね。どうやらご長寿。
あ、そうそう、ご長寿といえばこの館の主である魔法使いさん。
フローがいうことには「主様は魔法使いの中の魔法使い。大魔法使い!今まで誰にも負けたことがない。西の魔女と戦ってこのあたりで一番になったのが200年くらい前。それからずっと一番!さすがは俺の主様!!」らしい。
魔法使いの顔を見たことは無いけどきっとヨボヨボのおじいさんなんだと思う。
日本のご長寿さんも100歳超えたらしわくちゃのおじいちゃんおばあちゃんだもん。
いくら魔法使いでも、ねぇ?
その大魔法使いが今何をしてるのかと聞けばフローは言葉を濁した。
夜になるとお出かけしてるみたいで僕がお掃除している間に姿を見ることもないしほんとにここに住んでるの?
まあ下っぱも下っぱな僕に顔を見せる義理なんてないのかもだけど本物の魔法使いって会ってみたいよねー
やっぱり箒で空を飛んだりするんだろうか?
そんなことを考えながら僕は棚の上のほこりをはたきで落とす。落ちたほこりを箒で集めながら掃除機があればいいのになあと回りを見た。
まあ、こんなもんかな?
さっさとキッチンに戻ってフライドポテトと唐揚げを作ってしまいたい。小さくなってる間はほとんどなにも食べれないから大きくなってる今が爆食いチャンスなんだよね。
ご飯のことを考えた僕は急ぎ足でキッチンをめざす。
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