紙と雪

つれつれ日記太郎

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おわり

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いつもより眉間に皺が寄ってる。
それは気色の悪い違和感だった。

15歳の冬。高校受験まであとわずかなこの時期に友達の彼女のそんな部分に気を取られている場合ではない。

(模試の結果が悪かったのだろう)(雪も降ってるし寒さで体調を崩したのだろうか)(難しい問題を解いているのだろう)

くす玉から飛び出す紙吹雪のように疑問が頭に降ってくる。

いや、疑問ではない。
口実だ、彼女に話しかけるための。

『なんかこの部屋寒くない?』
気づいた時には口から出ていた。
『そう‥かな?』
『ほ、ほら雪も降ってるし‥』
戸惑いながらこちらを見る彼女の視線を逸らすように僕は窓の方を指さした。
やはり天気の話なんて無理があったようだ。サラリーマンの無難な会話じゃあるまいし。

『あ‥ホントだ‥』
『塾に来るまで気づかなかったの?』
『‥‥うん』
大雪という程ではないが気付かないなんて不自然なはずだった。

紙吹雪はまだ止まない。

『それにしてもみんな遅いね』
『‥なんか予定があるんだって』
『え?みんな?』
『ううん、隼人くんは』

紙吹雪はまだ止まない。

『隼人、推薦決まったみたいだし遊びに行ったのかな』
『そんなことない』
静かに発したはずの彼女の声が自習室に響いたように感じた。

すでに他の生徒は帰ったのか自習室には僕と彼女の二人だけだった。

だから、という訳ではないが僕はつい口に出してしまった。

『隼人とうまくいってないの?』

紙吹雪なんて最初からなかったんだ。
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