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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

宰相会議前日(ラッドレン視点・同じ日の朝食まで時間戻ります)

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 ミーネと一緒に朝食をとり、朝食後は手をつないで庭園を散歩した。
 はたから見たら何気ない日常の一場面。

 でも俺にとっては、もの凄く特別な時間。
 政務で忙しい一日の中、愛しい妻と過ごせる貴重な時間だから。

 しかも今回は、同じ王城内にいたのに昨日までミーネと会う事すらできなくて。
 久しぶりに会えた瞬間、ミーネの事を抱きしめたくなる衝動が溢れてしまいそうだった。
 必死に自制して我慢したけど。
 視察で遠方へ行っているわけでもないのに会えなくて、この数日は本当につらかった。

 会えないつらさを昇華させるため、自分でも驚くくらい仕事へ没頭できたのはよかったのかもしれないが。

 おかげで予定よりも早く宰相会議の準備が整った。
 ただ、明日の本番まで何があるか分からない。

 不測の事態に備えて、今日は王城内にいる必要があるだろう。
 ミーネは花が好きだから、街で開催されている花祭りへ連れて行ってあげたかったけれど。

 その代わり、午後は王宮内にある温室の方へ行ってみてもいいかもしれない。
 あそこなら毎朝散歩する庭園とはまた違った花が咲いている。
 
 ミーネは喜んでくれるだろうか。花のように愛らしい笑顔を見るのが楽しみだ。

 よし、そのためにも最終確認を怠らないようにしなければ。

 朝の散歩を終えミーネと別れた後、俺はタジェロンとの打ち合わせに向かった。
 途中からマーコットも合流する予定になっている。

 タジェロンとは連日遅くまで一緒に仕事をしていたこともあり、最終確認はすぐに終わった。
 
 マーコットが来るまで、思ったよりも時間が空いている。

 ここのところ宰相会議に関する話ばかりしていたが、久しぶりにタジェロンが違う話題を振ってきた。

「殿下……今日、街へ出かけるご予定はありますか?」
「明日は宰相会議だろう。何かあってもすぐ対応できるよう、今日は城内にいるつもりだ」
「そうですよね……」

 タジェロンにしては珍しく歯切れが悪い。

「何かあったのか?」
「今朝、御者に確認されたのです。ミーネ妃殿下の名前が乗車予定者名簿に記載されているけれど、ラッドレン殿下の名前が書かれていないのは記載漏れかと聞かれました。ミーネ妃殿下が出かけるのなら、当然ラッドレン殿下もご一緒だと考えたのでしょう」
「ミーネの名前が、乗車予定者名簿に?」
「はい、このように記載されていました」

 タジェロンがメモを取り出した。
 乗車予定者は、ミーネとベルマリーと……マーコット。
 行き先はフォトウェル商会になっている。

 フォトウェル商会……確か今日の花祭りは、その近くで開催されていたはずだ。

「タジェロン、それについてはキャンセルしてもらって構わない。もし馬車を使わなければならない状況になったら、予備の馬車もあるし」
「わかりました、取り消しの手続きをしておきます。……殿下」

 いつもより少し低い声で、タジェロンに呼ばれた。

「どうした?」
「……今回は『武科』担当の宰相としてお声かけいただいておりますが、機会があれば『文科』を担当してみたいと思っています。学園や学院の必修科目については、改革が必要です」
「そうか……わかった、タジェロンの希望は陛下にも伝えておく」
「ありがとうございます」

 マーコットとの約束の時間までまだ余裕があったので、タジェロンは馬車の手続きをしにいった。
 
 俺は厨房へと向かう。
 朝の散歩の時に、ミーネがクッキーを焼く予定だと言っていたから。
 馬車の件を、聞いておきたいと思って。

 だが、そこにミーネの姿はなかった。
 すぐ近くに料理長がいたので尋ねたら、ミーネは既に作業を終えて厨房を出て行ったという。

 打ち合わせをするための部屋へ戻ると、タジェロンよりも先にマーコットがやってきた。

 いつもどおりサフィニア嬢には隣室で待ってもらっている。
 そちらには護衛を兼ねてネイブルが一緒にいるはずだ。

 俺はマーコットにソファへ座るよう促した。

「マーコット、今日はこの後どこかへ出かけたりするのか? たとえば……花祭り、とか」
「花祭り? ああ、今日だったね。商会の他の者が出店していて、僕は担当じゃないんだ。この後は商談が入っているから出かけるのは難しいかなぁ。時間があったら見に行くかもしれないけど」
「そうか……」
「花祭りといえば、最近学生の間ではサプライズでイベント当日デートに誘うのが流行っているらしいよ。時間のある学生ならではだよね。その流行に商機があるんじゃないかなって考えているんだ。会話のきっかけにするための小さなギフトを販売するとかね。それで先日は香り玉を仕入れてみたんだけど、殿下も何か思いついたら教えてほしいな」
「……わかった、考えてみるよ」

 よろしくー、と太陽のような笑顔を俺に向けたマーコット。
 花祭りへ行く予定が無いのは、おそらく本当だろう。

 ではなぜ馬車の手配がされていた?
 ベルマリーが勝手にするはずは、無い。

『サプライズでイベント当日デートに誘うのが流行っているらしいよ』

 ……ミーネに、聞いてみなければ。





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