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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
稽古しようぜ
しおりを挟む両想いのふたりの邪魔はしたくない。
そして他の人にも、殿下とサフィニア様の仲を邪魔して欲しくない。
まっすぐジョハン様を見つめた。
「父親に頼み王命で婚約しようとなさるのは、望ましくないと思いますよ、ジョハン様」
「……親に頼んで婚約して……親に頼んで良い成績をとった人がなに言ってんのよ……」
「ぇ……?」
一瞬何をボソッと呟かれたのか分からなかった。
少し遅れて言葉の意味が脳に届いて、信じられない思いでジョハン様の妹、イニアナ様の方を見る。
親に頼んで婚約……親に頼んで良い成績を……私が?
「ミーネ様、あなた兄の婚約話に首を突っ込んでいる場合ではないのでは?」
鼻でせせら笑うようにして、私に冷たい視線を向けたイニアナ様。
「知らないと思うから教えてあげる。ラッドレン殿下はあなたの父親の不正を調査するためアールガード領に何度も視察へ訪れているのよ。お父様がおっしゃっていたから間違いないわ」
殿下がアールガード領に何度も視察へ訪れていたのは、私の父の不正を調査するため……?
でも私の卒業試験の不正についてなら、わざわざ辺境まで行って調査する事なんて何も無いはず。
だけど……そういえばタジェロン様が言っていた。
私の噂の真偽を調査しているうちに、キナ臭い別の疑惑まで生じてきたと。
殿下はサフィニア様に会うためだけでなく、私の父に関する別の疑惑の調査でアールガード領を訪れていたの?
「きっと殿下は、あなたと離縁する理由を探すために動いていらっしゃるのよ」
ズキン、と胸が痛む。
そんな事、考えもしなかった。
殿下はサフィニア様を側室に迎えたいのだと。
そう、思っていたから。
だけど本当は、父を断罪し政略結婚を続ける必要性を無くして……。
私と離縁した後サフィニア様を正妃に迎えようとしていたの――?
チラ、とネイブルが私の方を見た。
きっといま私、泣きそうな顔をしている。
そんな顔を見られたくなくて、ネイブルから逸らした視線を下へと向けた。
地面を転がる石が視界に入るのとほぼ同時に、聞こえてきたのはネイブルの快活な声。
「ジョハン、剣の稽古に付き合ってくれよ」
「なっ……!? 私は剣術なんて、ほとんどした事が……」
二人の声に顔を上げると、ネイブルがジョハン様の肩にガシッと手を回していた。
「おかしなことを言う。留学生は武術が必修だったはずだ。グロウドリック王国は剣術が盛んだろ? そこに留学して剣術をしていないはずがない。さ、行こうぜ」
「ぃゃ、本当に……無理だ」
「なにも実際に剣を交えなくてもいいんだ。理論でいい。俺に留学の成果を教えてくれよ。ほらイニアナ嬢も、兄貴と一緒に来い」
「ぁ、ぃゃ、その……」
「ちょ、ちょっと待って。お兄様をどこへ連れて行くのよ」
ネイブルはジョハン様の肩を掴んだまま、それじゃまたな、と空いている方の手を振り私たちに背を向け訓練場の方へ行ってしまった。
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