56 / 98
甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
『ダメですよ』
しおりを挟むタジェロン様に続いて部屋へ入ってきたベルマリーが、私の方を見て目を大きく開いている。
「あらあら、本当ですね、顔が真っ赤。熱があるかもしれませんね」
扉を閉めると応接用ソファのすぐそばに立ち、タジェロン様とベルマリーが話し始めた。
「ベルマリー嬢、他の仕事の方を調整して数日ミーネ嬢のそばで看病する事はできそうですか?」
「大丈夫です。ミーネ様の看病なら他の仕事はなんでも免除ですよ。あとで寝室へ簡易ベッドを運ぶように手配しますね」
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
熱が無いのは、自分が一番よく分かっているから。
「ベルマリー、ベッドなんていらないよ。夜は俺がミーネのそばにいるから」
殿下の言葉に、顔が再び熱くなる。
夜の事を考えたら、本当に熱が出てしまいそう。
ハァ、と大きなため息が聞こえた。
おそらくタジェロン様の方から。
ツカツカとこちらへ歩いてきて、ガシッと殿下の肩を掴んだタジェロン様。
「ダメですよ、殿下には仕事が山ほどあるのですから。あと一週間ほどでケリをつけたいとおっしゃっていたのは貴方でしょう?」
そのまま有無を言わさぬ様子で殿下を扉の方へひっぱっていく。
「ミーネ嬢の熱がうつるものだったら大変です。少なくとも熱が下がって三日……いえ、他の者は三日でいいですが殿下は大事を取って五日にしましょう、五日が経過するまでは、寝食を別にしていただかないと」
「五日!? 正気かタジェロン!」
「もちろん正気ですよ。ちょうど私は殿下に頼まれた仕事で城に泊まり込みのため、宰相用の詰所を使わせてもらっています。殿下にもそちらで寝泊りしていただければ、遅くまで仕事もできるし一石二鳥ですね」
殿下に代わってベルマリーが、私の方へとやってきた。
「ではベルマリー嬢、よろしくお願いしま……」
不意にタジェロン様の言葉が止まった。
窓際に立つ私とベルマリーの方を、ジッと見ている。
そして自分のすぐそばにいる殿下を一度見てから、再びこちらを見た。
……でも、
私とベルマリーを見ているというよりも、視線が少し低いような。
「……ベルマリー嬢、その机のクロスはもっと丈が短い物にした方が良さそうです。獰猛な野犬が城に紛れ込んで、潜んでいたら大変な事になりますから」
では失礼します、と言ってタジェロン様は殿下を連れて出ていった。
ぁ……
下着、返してもらってない。
0
お気に入りに追加
7,440
あなたにおすすめの小説
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる