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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

『ダメですよ』

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 タジェロン様に続いて部屋へ入ってきたベルマリーが、私の方を見て目を大きく開いている。

「あらあら、本当ですね、顔が真っ赤。熱があるかもしれませんね」

 扉を閉めると応接用ソファのすぐそばに立ち、タジェロン様とベルマリーが話し始めた。

「ベルマリー嬢、他の仕事の方を調整して数日ミーネ嬢のそばで看病する事はできそうですか?」
「大丈夫です。ミーネ様の看病なら他の仕事はなんでも免除ですよ。あとで寝室へ簡易ベッドを運ぶように手配しますね」

 なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
 熱が無いのは、自分が一番よく分かっているから。

「ベルマリー、ベッドなんていらないよ。夜は俺がミーネのそばにいるから」

 殿下の言葉に、顔が再び熱くなる。
 夜の事を考えたら、本当に熱が出てしまいそう。

 ハァ、と大きなため息が聞こえた。
 おそらくタジェロン様の方から。
 ツカツカとこちらへ歩いてきて、ガシッと殿下の肩を掴んだタジェロン様。

「ダメですよ、殿下には仕事が山ほどあるのですから。あと一週間ほどでケリをつけたいとおっしゃっていたのは貴方でしょう?」

 そのまま有無を言わさぬ様子で殿下を扉の方へひっぱっていく。

「ミーネ嬢の熱がうつるものだったら大変です。少なくとも熱が下がって三日……いえ、他の者は三日でいいですが殿下は大事を取って五日にしましょう、五日が経過するまでは、寝食を別にしていただかないと」
「五日!? 正気かタジェロン!」
「もちろん正気ですよ。ちょうど私は殿下に頼まれた仕事で城に泊まり込みのため、宰相用の詰所を使わせてもらっています。殿下にもそちらで寝泊りしていただければ、遅くまで仕事もできるし一石二鳥ですね」

 殿下に代わってベルマリーが、私の方へとやってきた。

「ではベルマリー嬢、よろしくお願いしま……」

 不意にタジェロン様の言葉が止まった。
 窓際に立つ私とベルマリーの方を、ジッと見ている。

 そして自分のすぐそばにいる殿下を一度見てから、再びこちらを見た。
 ……でも、
 私とベルマリーを見ているというよりも、視線が少し低いような。

「……ベルマリー嬢、その机のクロスはもっと丈が短い物にした方が良さそうです。獰猛な野犬が城に紛れ込んで、潜んでいたら大変な事になりますから」

 では失礼します、と言ってタジェロン様は殿下を連れて出ていった。

 ぁ……
 下着、返してもらってない。





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