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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
頭では違うと分かっていても(ラッドレン視点・第二応接室に来る直前まで時間戻ります)
しおりを挟む階段を、二段飛ばしで駆け上がる。
陛下との話を終え、癒されたくて。
愛しい妻の顔を少しでもいいから見たいと思い厨房へ寄ったのに。
そこにミーネの姿は無かった。
すぐ近くにいた者に聞いたら、お茶の用意をして出ていく姿を見たという。
ミーネがお茶を出すといったら、ごく親しい相手だろう。
今日俺を訪ねてくるタジェロンのように。
気づいたら、廊下を走っていた。
タジェロンは人の妻に手を出すような男では無いと、頭ではもちろん分かっている。
でも感情は、頭のように冷静でいる事ができなくて。
男と二人きりでいるミーネの事が、心配でたまらない。
自分でも驚くくらい、バンッ、と勢いよく音を立てて応接室の扉を開けてしまった。
「ベルマリーも……いたのか……よかった……」
「そりゃいますよ、相手がタジェロン様とはいえミーネ様を男性と二人きりにさせる訳にはいかないですもの」
そうだよな、普通に考えたら、そうだ。
どうも俺は、ミーネに関する事だと冷静な判断ができなくなってしまう。
仕事に戻りますね失礼します、と頭を下げてベルマリーは部屋を出ていった。
「タジェロン、すまないがもう少し待っていてくれ、鞄を置いてくる」
タジェロンとソファで向かいあって座るミーネの手を取り、ソファから遠い会議用机の椅子へと座らせた。
ここなら隣の部屋からも見えるし、安心だから。
……頭では分かっている。
俺が隣の部屋へ行ったって、ミーネもタジェロンもお互いに触れ合ったりなんてしない。
だけどベルマリーがいなくなった今、俺の見えない所でタジェロンのそばにいてほしくなくて。
「隣の部屋に行くけど、ここにいて。俺から見えるように」
ミーネの姿が見えるように、ドアを開け放したまま隣の部屋へ行き鞄だけしまってすぐに戻る。
「まったく、全力疾走でもしてきたんですか。ベルマリー嬢を追いかけて冷たい水でも貰ってきますよ」
やれやれといった様子でソファから立ち上がると、部屋を出ていったタジェロン。
ミーネと二人きりになり、会議用の椅子に並んで座った。
俺の妻は、今日も可愛い。
二人きりだし、このままキスして、そして……と邪な考えも微かに浮かぶが、もちろん自制する。
けれどせめてどこかには触れていたくて、手を伸ばしミーネの頭をゆっくりと撫でた。
「ふたりきりでいるのかと思って心配した。ミーネ、これからも男とふたりだけになってはいけないよ」
「わかり、ました……」
了承の返事をしてくれたが、少し戸惑っているようなミーネの表情。
ぁ、もしかして……
束縛が、強すぎた?
体だけの関係の夫が行動を制限するような言い方をしたから、嫌な気分にさせてしまったのだろうか。
何かもっともらしい理由を……
「なかには噂好きの人もいるから。王太子妃として、そのあたりは気をつけて欲しい」
「……はい、承知いたしました」
よかった、納得してくれたようだ。
……ん?
「ミーネ……イヤリングが曲がっているよ」
ぁ、と何かを思い出したような顔をしたミーネ。
イヤリングの位置が左右で合っておらず、ズレている原因に思い当たることがあるのだろうか。
だが、朝の支度をする時はおそらくベルマリーがミーネのイヤリングをつけているはず。
ベルマリーがこんな風にイヤリングをつけるとは思えない。
まさか……イヤリングがズレるような出来事が、タジェロンとあった?
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