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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

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「ミーネ様が妊娠しているという噂、何もしなければこうも早く広まりません。タジェロン様に協力をお願いしたんですよ」

「ぇ……知らなかったわ、どうして言ってくれなかったの? タジェロン様にそんな事をお願いするなんて、申し訳ないわ」

「ミーネ様に言うと、反対されるのは分かっていたので。でも噂を広めたいというお気持ちは強そうでしたし、タジェロン様にお力添えいただく方の選択をいたしました」

 そう言われて、ぐッと言葉に詰まってしまった。
 確かに事前に伝えられていたら、絶対にベルマリーを止めた。

「ベルマリー嬢から突拍子もない相談をされて驚きましたが……お二人には何かお考えがあるのだろうと思い、協力させていただきました」

「タジェロン様は情報操作とか、大きな声で人に言えない仕事が得意そうだとみて頼んだのですが、本当に巧妙で驚きましたよ」

「ベルマリー嬢……貴女は正直すぎる所が玉に瑕ですね」

 タジェロン様が苦笑している。
 学院で一緒だった生徒会メンバーは、身分関係なく意見を言い合う機会が多かったのでベルマリーはタジェロン様に対してもはっきり物を言う。

「ま、タジェロン様にこんな事を頼むなんて、酷かなとも思いましたが」

 眉をピクリと動かしたタジェロン様が、口の端を片方だけ上げ微かに笑った。

「本当に、ベルマリー嬢は人をよく見ていますね。その優れた観察眼は侍女にしておくには惜しい。私と一緒に父の元で働きませんか」
「いやですよタジェロン様と一緒に働くなんて。絶対にこき使われますもん」

 ククッとタジェロン様が笑う。

「確かにそうかもしれませんね、こき使うのは私ではなくラッドレン殿下ですが。こき使われている私はしばらく城に泊まり込むことになりそうです」

 軽く肩をすくめたタジェロン様。

「お忙しいのに私の噂のことでご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」

 頭を下げようとしたら、小さく片手を上げたタジェロン様に制された。

「そちらの噂の方はいいんです。いま私を悩ませているのは別の噂の件でして」
「別の……噂?」
「ミーネ嬢が学院の卒業試験で首位を取ったのは、当時『文科』部門を担当していた第二宰相……貴女の父であるケンバート公爵が不正を行ったからではないかという噂ですよ」

 胸がズキンと痛んだ。
 ギフティラ学院の卒業試験の結果は、その人のその後の評価にずっとついて回るくらい重要なもの。
 だから成果をあげようと皆が努力し、互いに切磋琢磨していた。
 私は不正をしていないし、父だって不正は行っていないと信じている。

 でも私が卒業した直後に父は第三宰相のキラエイ公爵と担当部門を変更された。現在は『武科』部門を担当している。
 後には2歳下の弟ウィムの入学試験を控えていた事もあり、父がこのまま『文科』部門を担当するのは望ましくないと判断されてしまったのだと思う。

 噂は怖いと知っていたのに。
 妊娠したと皆に思わせるために噂を利用しようとした自分は浅はかだったと、今さらながら猛省してしまう。

「その噂の真偽を調査しているうちに、キナ臭い別の疑惑まで生じてきましてね」

 別の疑惑……父に?

「これからしばらくは、陛下と殿下と父と私で、こんを詰めて話し合うことが多そうです」

 そういえば、今朝起きた時に殿下はもうベッドにいなくて。
 ……それは昨晩、殿下に目隠しされたうえに翻弄された私が寝坊してしまったというのもあるけれど。

 寝室に朝食を用意してくれたベルマリーに尋ねたら、殿下は陛下と会うと言っていたという。

「殿下がまだこちらにいらしてないのは、陛下とその件で話されているからでしょうか?」
「いえ、いま殿下が陛下と話しているのは、サフィニア嬢の婚約についてですよ」

 サフィニア様の、婚約について?
 殿下が??





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