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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

嫌味……?

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 私と結婚してしまうと殿下に対する興味を失ったのか、一年前ウィムへ積極的に交際を迫りアプローチを始めたイニアナ様。

 困ったウィムは私の幼馴染であり自分にとっては兄のような存在のネイブルに相談した結果、交際をすることは無いから諦めて欲しい、と9か月前にイニアナ様へきっぱり断ったらしい。

 そうしたら、今度はウィムに対する嫌がらせが始まるようになった。
 学園で行われる嫌がらせは露骨なものではなく、周りの人には気づかれないようにされていて。
 心配をかけたくないからかウィムは私に話すことは無かったけれど、ネイブルには時々相談していたみたい。

 殿下とネイブルと私の三人で話していた時にウィムの話題になり、「可愛さ余って憎さ百倍って感じだな、あれは」と一度だけぼやいたネイブルを問いただして初めて知った。
 私が知っている事は、ウィムには内緒。
 ネイブルの信用にかかわるから。

「ま、会長に選ばれなかったのはウィム様ご自身にも理由があるんじゃないですか? ね、貴方もそう思うでしょ?」

 同意を求めるように、すぐ隣に立つココットル様の顔を覗き込むイニアナ様。

 ウィムと同じ学年のココットル様は学園でも学院の入学試験でも常に二位の成績を収めている方なので、学年の違う私でも顔と名前は知っている。

「いや……僕の口からは何とも……ただ、そうですね……学園の頃から彼の成績が毎回トップなのは、どうしてか不思議ですけど……」

 毎回トップなのは、どうしてか不思議――?

 そんなの、ウィムが勉強をがんばっているからに決まっているでしょう?
 結婚するまでは一緒に暮らしていたから、人の知らないところでウィムがどれだけ努力しているかを私は知っている。


「なーんか面白そうな話をしてるね。僕もまーぜて」


 いつの間に奥の部屋から出ていらしたのか、マーコット様の明るい声が響いた。
 マーコット様のうしろから、おとぎ話に出てくるお姫様のように麗しいサフィニア様が心配そうにこちらを見ている。

 突然現れたマーコット様に驚いたのか、ココットル様の瞳が戸惑うように揺れた。

「あなたは……?」
「マーコット・フォトウェル。商会があるけど、知らないかな?」

 フォトウェル商会を知らない者は、おそらくこの国にはいないでしょう。
 多方面の商売で成功し貴族で最も財を築いている商会だもの。
 力関係で言ったら、場合よっては公爵家よりも上かもしれない。

 けれど身分としては同じ伯爵家だからか、ココットル様の目から不安の色が消えていく。

「まぁ知ってても知らなくてもいいよ。キミの話の続きを聞かせて」
「……僕はしがない伯爵家の子どもですから、力のある親がいる人が羨ましいってだけの話です」

 横目でウィムの方をチラリと見たココットル様が軽く肩をすくめた。
 含みを持たせた言い方がなんだかひっかかる。

「そうね、親が力を振りかざせば王太子殿下とだって婚約ができるんだもの、羨ましいわぁ」

 イニアナ様が、気持ちのこもっていない表情で微笑んだ。





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