【R18】白い結婚が申し訳なくて~私との子を授かれば側室を持てる殿下のために妊娠したフリをしたら、溺愛されていたことを知りました~

弓はあと

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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

特例(ラッドレン視点)

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『妃に妊娠の兆候がある時は、母体の安寧を優先するため、宰相の審議により妃は実家にて長期静養することが可能』

 こんな特例、もっと早く廃止しておくべきだったんだ。
 俺たちが結婚する前になくしておけば、ミーネは俺から離れようなんて考えられなかったのに。


 スヤスヤと眠るミーネの目尻に、そっと口づける。


 痛い思いをさせてしまった。
 泣かせて、ごめん。


 謝って済むことでは無いけれど。
 心の中で、何度も謝り続ける。

 勝手に婚約して無理やり結婚させてしまったうえに、身体の相手まで嫌々させて純潔を奪ってしまうのは忍びなかったから。
 俺の事を好きになってくれるまでは、と初夜はもちろん今までずっと手を出さずに我慢して待っていたのに。

 本当に、俺は……

 取り返しのつかない事をしてしまった。
 ミーネの初めてを、こんなに惨い形で奪ってしまうなんて。

 本来なら時間をかけて、優しく丁寧に、どうしてほしいかミーネの望みを聞きながら、身体を重ねる大切な行為。

 けれどミーネは、好きでもない相手と子をなす行為をしてもよいのでしょうか、と戸惑っていて。
 触らないで、と望んでいた。

 俺はミーネの身体に触れてはダメなのか? 俺は挿入して子種さえ提供すればいい存在なのか? 誰ならミーネに触っていいんだ、本当は誰と妊娠に至る行為をしたかったんだ、と嫉妬する自分を止められなくて。

 結果的に、願いを叶えたいというミーネの心を利用してしまったんだ、俺は。
 ミーネは好きでもない俺なんかと、子をなす行為なんてしたくなかっただろうに。

 付き合っている男はいないとミーネは言ったが、あの様子だときっと好きな男くらいいるのだろう。
 実家ならば少なくとも城にいるよりは自由があるし、好きな男と会う機会を作れる可能性がある。

 やはりそれが理由だろうか?

 妊娠するために好きでもない男に抱かれる苦痛に耐えてまで、特例を使って実家に戻りたいと願う理由は。


 ミーネが好きな相手は、誰なんだ……?


 パッと思いつくのは、学院時代に生徒会で共に活動し仲のいいネイブルにタジェロン、マーコットだが。


 ……相手が、誰であろうと……
 まだ男女の関係……身体の関係に無い事だけは確かだった。


 ふわふわで柔らかな亜麻色の髪を一房、そっと手に掬って唇を寄せる。

「……好きだよ、ミーネ。愛している」

 ミーネが起きていたら言えない言葉を囁く。
 本当は起きている時に伝えたい。

 だが王太子から愛してるなんて言われたらミーネは義務的に、私も愛していると答えてしまうだろう。
 俺が先に好きだと言ったら、好きだという返事を強制させる。だから、言えない。


 だけど伝えていたら、何かが変わっただろうか――。


 そう考えて、虚しくなってしまった。
 俺とは体だけの関係だと、ミーネが何度も言っていたのを思い出したから。

 ……それなら体だけでも、俺に繋ぎとめておきたい。
 心が手に入らないなら、せめて体だけは。

 たとえミーネの心が他の男へ向けられていても、妊娠させるという大義名分がある間、俺はミーネに触れることができるのだから。

 そして、できることなら……
 体からの始まりでもいい……快楽を教え込むような形でもいい……妊娠するまでの間で好きな男の事を忘れさせ、俺から離れられないようにさせたい。

 そのためにも、明日の朝起きたら今夜のミーネの記憶を上書きしなければ。

 自分勝手な考えだと分かっている。
 でもこのまま何もしないでいたら、もう二度とミーネを手に入れることができない。

 それでも、無理だったら……俺の子を妊娠しても、好きな男の事を忘れられないようなら……その時は、ミーネを実家に帰らせてあげよう。

 周りの目や諸々発生する問題に関しては俺の方で何とかするから。
 実家の公爵邸で恋人との逢瀬を楽しもうが、ミーネの自由だ。
 俺との間に生まれた子を見てミーネがつらい思いをしないように出産後は子どもを引き取り、産後の肥立ちが悪いからと療養の名目でそのまま実家にいさせてあげればいい。 

 ミーネとの子ども、か。
 この世に生まれてきてくれるだけで、尊く愛おしい存在。
 できる限り一緒にいる時間を設けて、大切に、大切に育てていこう。



 起こさないよう、そっとミーネの隣で横になる。
 結婚してから、初めてひとつのベッドに並んで眠る夜。

 俺よりも少し甘い香水の香りを感じて、涙が出そうになった。

 あまりにもミーネの事を考えながら眠りについたからだろうか。
 ミーネを好きだと意識した日の出来事が、夢に出てきた。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 


 【お知らせ】

 いつも閲覧してくださり、本当にありがとうございます。

 このたび以下の短編小説を投稿させていただきました。
『【BL-R18】可愛い義弟が嫁に来た!?~平凡モブキャラ汚部屋住まいの俺だけど、家事万能な美形の義弟に甘やかされてその溺愛で溺れそう~』

 長編が亀更新でしょ新作投稿しちゃメッ、とお叱りを受けそうなお知らせになってしまい申し訳ありません……
 もし、BL小説も試しに読んでみようかな~、という読者様がいらっしゃいましたらご一読いただければ幸いです。
 長編小説の方も引き続き更新していきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。 





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