【R18】白い結婚が申し訳なくて~私との子を授かれば側室を持てる殿下のために妊娠したフリをしたら、溺愛されていたことを知りました~

弓はあと

文字の大きさ
上 下
15 / 98
甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)

愛していると、抱きたくなるの……?

しおりを挟む


 暗さにも、だいぶ目が慣れてきた気がする。

 あら……?
 よく見ると、男性っぽいシルエットの腰のあたりが激しく動いているような……

 その動きに合わせるように、ぱちゅぱちゅぱちゅと聞こえてくる微かな水音。

 ??????
 ………………
 ………………
 ………………
 ………………
 ……………… !
 ひぁ!?
 これって……
 もしかしてもしかしたら……

 ラッドレン王太子殿下と王宮内の庭を散歩していた時に見かけた、うさぎの姿を思い出した。
 少し小さな白いうさぎの背中に、大きな茶色のうさぎが覆い被さるようにしていて。
 今、目の前で行われているように、カクカクカクと体を揺らしていた。

 後ろから体を押さえつけられている白うさぎが可哀想で、殿下に声をかけたの。
 「離してあげた方がいいですよね」と。
 殿下が少し困ったように微笑んで「そっとしておいてあげよう」と言った時のうさぎの様子にそっくり。

 散歩のあとで侍女のベルマリーに「殿下がうさぎの苛めを放っておく方だったなんて……」と思わず愚痴ってしまったわ。
 ため息をついたベルマリーに、きっとそれはうさぎの交尾だったのでしょう、と教えられ顔から火が出るかと思った。

 ゆらゆら揺れる人影は、あの日のうさぎと同じ行為をしているのでは。

 顔がカーッと熱くなる。
 いいえ、顔だけじゃない。
 身体まで火照ったように熱い。
 涼むために外へ出てきたはずなのに。

「ぁ……こんな、ところで……」

 女性の声が聞こえてくる。

 そう、こんなところで何をしていらっしゃるの、あなた達は!?
 少しは我慢なさったらどうですか!!

「好きだから、我慢できない」

 えっ……
 思わず息をヒュッと呑み込んでしまった。
 ケホ、とむせそうになり慌てて口を押さえる。

「愛している。いくら抱いても抱き足りない」

 好きだから、我慢できないの……?
 愛していると、抱きたくなるの……?

 それなら、私は……
 結婚してから1年経つのに、一度も夫に抱かれたことのない私は……

 夫から、愛されていないのでしょうか……

 目を逸らしていた現実を、突きつけられたような気がした。
 結婚して1年、夫と閨を共にしたことは無い。結婚初夜の時でさえも。

 でも結婚当初はそれも仕方のないことだと思っていた。
 この国の王太子であるラッドレン殿下と公爵令嬢の私は政略結婚で結ばれた仲だもの。

 少し時間が必要なだけだと……そう思い込もうとしていた。
 だけど……違うのかもしれない。

 気持ちを落ち着かせるため、ゆっくりと息を吐いてから、大きく吸った。
 するとふわりと鼻をくすぐる柑橘系の爽やかな匂い。

 香水の……香り……?

 あのふたりの匂いじゃ、無い。
 さすがにここまで香水の匂いは届かないもの。

 すぐそばに、いる!?

 ふたりのシルエットの動きに気をとられ過ぎて、自分のまわりの変化に対して疎かになっていたのかもしれない。

 ふ、と突然暗くなった視界。
 愛し合う男女の姿を見ていたはずなのに、目の前からふたりの姿が消えた。

 え、手!?

 一瞬遅れて、ふたりの姿が消えたわけではないと気づく。


 視界を遮るように目の前に現れた大きな手が――


 私の口を、塞いだ。





しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...