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甘く淫らなラブロマンスの長編版(※短編の続きではありません)
愛していると、抱きたくなるの……?
しおりを挟む暗さにも、だいぶ目が慣れてきた気がする。
あら……?
よく見ると、男性っぽいシルエットの腰のあたりが激しく動いているような……
その動きに合わせるように、ぱちゅぱちゅぱちゅと聞こえてくる微かな水音。
??????
………………
………………
………………
………………
……………… !
ひぁ!?
これって……
もしかしてもしかしたら……
ラッドレン王太子殿下と王宮内の庭を散歩していた時に見かけた、うさぎの姿を思い出した。
少し小さな白いうさぎの背中に、大きな茶色のうさぎが覆い被さるようにしていて。
今、目の前で行われているように、カクカクカクと体を揺らしていた。
後ろから体を押さえつけられている白うさぎが可哀想で、殿下に声をかけたの。
「離してあげた方がいいですよね」と。
殿下が少し困ったように微笑んで「そっとしておいてあげよう」と言った時のうさぎの様子にそっくり。
散歩のあとで侍女のベルマリーに「殿下がうさぎの苛めを放っておく方だったなんて……」と思わず愚痴ってしまったわ。
ため息をついたベルマリーに、きっとそれはうさぎの交尾だったのでしょう、と教えられ顔から火が出るかと思った。
ゆらゆら揺れる人影は、あの日のうさぎと同じ行為をしているのでは。
顔がカーッと熱くなる。
いいえ、顔だけじゃない。
身体まで火照ったように熱い。
涼むために外へ出てきたはずなのに。
「ぁ……こんな、ところで……」
女性の声が聞こえてくる。
そう、こんなところで何をしていらっしゃるの、あなた達は!?
少しは我慢なさったらどうですか!!
「好きだから、我慢できない」
えっ……
思わず息をヒュッと呑み込んでしまった。
ケホ、とむせそうになり慌てて口を押さえる。
「愛している。いくら抱いても抱き足りない」
好きだから、我慢できないの……?
愛していると、抱きたくなるの……?
それなら、私は……
結婚してから1年経つのに、一度も夫に抱かれたことのない私は……
夫から、愛されていないのでしょうか……
目を逸らしていた現実を、突きつけられたような気がした。
結婚して1年、夫と閨を共にしたことは無い。結婚初夜の時でさえも。
でも結婚当初はそれも仕方のないことだと思っていた。
この国の王太子であるラッドレン殿下と公爵令嬢の私は政略結婚で結ばれた仲だもの。
少し時間が必要なだけだと……そう思い込もうとしていた。
だけど……違うのかもしれない。
気持ちを落ち着かせるため、ゆっくりと息を吐いてから、大きく吸った。
するとふわりと鼻をくすぐる柑橘系の爽やかな匂い。
香水の……香り……?
あのふたりの匂いじゃ、無い。
さすがにここまで香水の匂いは届かないもの。
すぐそばに、いる!?
ふたりのシルエットの動きに気をとられ過ぎて、自分のまわりの変化に対して疎かになっていたのかもしれない。
ふ、と突然暗くなった視界。
愛し合う男女の姿を見ていたはずなのに、目の前からふたりの姿が消えた。
え、手!?
一瞬遅れて、ふたりの姿が消えたわけではないと気づく。
視界を遮るように目の前に現れた大きな手が――
私の口を、塞いだ。
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