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治療
しおりを挟む肌が触れているのが恥ずかしくて殿下の目を見る事ができない。
首の傷だけに視線を集中させて、患部をそっと撫でる。
でも、殿下の首をジッと見つめたのは間違いだったかもしれない。
――男性の喉仏って、こんなに色っぽいの!?
殿下の喉が、ゴクリと動いた瞬間を見てしまった。
ただ、それだけの事なのに……
なぜか分からないけれど身体の奥がジュクジュク疼いてくる。
それになんだか、顔がすごく熱い。
ああ、早く治療を終えないと、自分の体調が悪くなりそう。
撫でていた首の傷が消え、ホッと息を吐く。
「殿下、首の傷が治りました」
「ありがとう、首の傷だけでも治って楽になったよ」
「ぇ……?」
首の傷、だけ、でも??
顔を上げ、殿下の顔を見つめる。
「他に痛い所が……あるのですか?」
「……ぃゃ、大丈夫だよ」
柔らかい表情で殿下が微笑んだ。
でも好きな人のことだから分かる。
……殿下、痛いのを我慢していますよね。
「どこですか、痛い場所?」
「…………無いよ」
「ど、こ、で、す、か、」
顔をグイッと近付けたら、殿下の頬がうっすらと赤くなった。
フッと視線を逸らされる。
「……胸が、少し」
「わかりました」
「エービス!?」
驚いたような声を無視して殿下のシャツのボタンを上から順に外していく。
下まで外し終えてシャツを左右にバッと開いた。
鍛え上げられた胸板が目の前に現れ、自分でしたことなのに今さらながらドキドキしてしまう。
――これは治療これは治療これは治療……
殿下は胸の先端付近を集中的に掻きむしったらしい。
そこに引っ掻いたような傷がいくつかある。
殿下の両胸に手のひらを当て、スリスリと撫でると殿下の身体がビクッと揺れた。
「ご、ごめんなさいっ、痛かったですか?」
「ぃゃ、不思議な感じがしただけだ。驚かせてすまない」
「痛くないようでしたら……続けますね?」
すりすりスリスリ……
撫でていたら殿下の胸の先端が、ちょっとだけ硬くなってきたような。
「ッ……エービス……」
「殿下……?」
僅かに掠れた感じの、殿下の声。
「す、少しだけ先端を引っ掻いてもらえないだろうか……?」
「?? 引っ掻いたら痛いですよ?」
「すまない、少し、だけ……」
言われた通り、爪で胸の先端を軽くカリカリ引っ掻いてみる。
上を向くように殿下が喉を少し反らして小さく呻いた。
慌ててパッと手を離す。
「ゃ、やっぱり痛かったですよねっ」
「いや、いい……すごくよかった……ありがとう」
「ぇ、どういたしまして……?」
爪を立てるのは止め、再び殿下の胸を撫でる。
時々切なそうに吐き出される殿下の吐息が気になったけれど、胸の傷は消えた。
「これでもう、痛い所は他に無いですか?」
お顔を見つめると、殿下の瞳がほんの一瞬だけ揺れた。
「……無い、もう大丈夫だ」
――あるわね。
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