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メスフィルール嬢は俺の義理の娘で親友の妻(現騎士団長ラフィアン・スラッジマン視点)
しおりを挟む養女として迎え嫁に出した責任もあるし、メスフィルール嬢には幸せになってもらいたい。
「ゴーシュタインでも女性を気遣う事があるんだな。まぁ仲が良さそうで安心したよ。朝は奥方に見送ってもらったのか? 毎日いってきますのキスをするのはおすすめだぞ。そして、ただいまのキスもな。その習慣のおかげで俺は愛する妻とずっと仲良く過ごせている」
「俺が出る時メスフィはまだベッドの中だ。昨日は疲れただろうからな、起こさずに出てきた」
お、と興味がわいた。
まさかゴーシュタインの方から、そんな風に話をふってくるとは。
新婚で奥方が疲れて朝ベッドから出られないなんて、そんなに激しい初夜を過ごしたのか。
今まで騎士団でこういった話題になった時、ゴーシュタインはすぐに席を外してしまうから閨事の話なんて聞いたことがなかったけれど。
これはもう少し踏み込んで聞いてみても良いのだろうか。
「どうだったんだ昨晩ベッドでは、優しくしてあげられたのか?」
俺が房事の話を聞いたせいか、ゴーシュタインが意外そうに目を少し見開いた。
どうだろう、こんな質問をして気を悪くしたか?
黙ってしまうだろうかと思ったけれど、ゴーシュタインはボソッと呟くように話し始めた。
「痛い……と泣かせてしまったな」
「あー、男には分からない破瓜の痛みか。ゴーシュタインのは特別にデカいからなぁ、ま、昨日は初めてだから挿入時に痛い思いをさせてしまうのは仕方ないさ」
「挿入はしていない。最後まで口で奉仕はしてもらったが……ああでも、最終的には顔へかけた」
「「へ?」」
間抜けな声が出てしまった。
こちらの話を聞いていたのだろう、俺の声と重なって隣の机で食事をしている者からも声が上がる。
そりゃぁ驚くだろうさ。
初めてで痛いと泣いた新妻に口で奉仕させて顔射するって。
しかも相手は若い騎士たちに人気のあるメスフィルール嬢だ。
なんて扱いをするんだと、心の中で腹を立てている者も食堂内にたくさんいるだろう。
「させるばかりで、ゴーシュタインは何かしてあげなかったのか?」
「……尻を、叩いた。俺のものだという所有印として肌へ赤い痕をつけるために」
「は!? 尻を!?」
思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて声をひそめる。
ゴーシュタインは、なぜそんな態度をとられるのか分からない、という感じの表情をしていた。
もしやゴーシュタインにとっては、女性の尻を叩くことが普通なのだろうか。
しかも赤い痕をつけるくらいに強く。
「ゴーシュタインに叩かれたらとてつもなく痛いだろう。痕をつけるなら、キスマークでもよかったんじゃないか?」
「キスマーク?」
ゴーシュタインが不思議そうに眉を寄せている。
もしかして、キスマークを知らない?
「唇を肌に密着させて強く吸うと赤く痕ができる。叩くよりは痛くないから、もしまた痕をつけるならその方法にしてみたらどうだ?」
「わかった。他にも何か閨で気をつけるべき点はあるだろうか」
メスフィルール嬢は義理とはいえ娘だ。
例え親友の性癖だからといって、叩かれて痛い思いはして欲しくないし、泣いているところに顔射で嫌な思いもして欲しくない。
「自分がされて嫌な事はしない、人にしてもらってもう一度して欲しいと思えるような事なら自分も相手にしてあげるとか、そういった事は常に心掛けておいた方が良いと思うぞ」
俺の話を聞いていたゴーシュタインが、真剣な表情で頷いている。
どうやら俺たちの話は、食堂にいた多くの者たちに聞かれていたらしい。
ゴーシュタインがメスフィルール嬢へした仕打ちに憤ったのだろう。
その日の訓練でゴーシュタインと手合わせをした者たちは、彼に敵わないと分かっていても力の限り立ち向かい今までの訓練で最高に熱が入っていた。
こんなにも充実した訓練ができるなら、騎士団長の立場としては毎日でもゴーシュタインに来てもらいたいくらいだ。
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