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『俺の童貞をもらってほしい』!?


 何よそれ!? 
 私がもらうものじゃなくて、私があげる物を聞いてるの! 


「拓……斗……? それって、どういうこと? もし私の処女がほしいって話なら、私はもう処女じゃないからあげられないわよ?」


 ッて、違う違うッ! 拓斗につられて私まで混乱しちゃったじゃないの。
 童貞とか処女とか、そういう事を言ってるんじゃなくて。
 今は卒業祝いの話。ネクタイとか、時計とか、なんならプラモデルでもかまわないし、そういう欲しい物を教えてほしいの。


「うん、知ってる。
 さゆねえが処女を失った日の事も、
 痛くて痛くてそれからエッチができなくなった事も、
 それが原因で浮気されたと思ったら実はずっと前から浮気されてた事も、
 俺が別れた方がいいよって言ったのにずるずる付き合ってて先月やっと別れた事も、
 別れたと思ったら合コンに誘われて来週の金曜日に行こうとしていることも、
 さゆねえから聞いてるから、全部知ってる」


 ふぁぁぁ、話しました、確かに話しました私。
 つらつらと述べられて、罪悪感と恥ずかしさが込み上げてくる。

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、純真無垢な拓斗にそんな下世話な話をして。
 だって痛くてエッチができないうえにずっと浮気されてたなんて情けない話、拓斗にしか話せなかったから。
 拓斗って私の話、どんな話でもちゃんと聞いてくれるんだもの。

 大学三年生になってすぐの春に告白されて、初めて付き合った同い年の彼氏。
 付き合った当初から体の関係をそれとなく求められてきたけれど、拓斗に相談したらもう少し待った方がいいと言われて大学卒業するまでは清い交際だった。
 2年も付き合っててセックスしていない事に、まわりの女友達は信じられないと驚いていたけれど。

 社会人になって、さすがに体を許してもいいかなーと思ったのよ。
 もう大人だし拓斗に相談せずに、人生で初めての事後報告。
 その時の拓斗が、青ざめた顔で呆然としていたのは今でも覚えている。
 事前に相談してもらえなかったことが、拓斗にとってそんなにショックだったのかとびっくりした。



「俺には合コンに行っちゃダメって、いつも言ってたのに」

 そりゃそうよ、合コンに行く女子は、ハイスペック男子が大好物なの。
 これから就職する会社だって、私が入社した年に開発されたアプリが爆発的にヒットして今や優良企業。
 それに加えて拓斗みたいに顔良しスタイル良し頭良しおまけに性格良しの男なんて、真っ先に狙われちゃうんだから。



「さゆねえ、本当に合コン、行くの?」

 力強く、首を縦に振った。

 4月になったらすぐ私は25才になる。
 良い縁があれば将来結婚もしてみたい。
 かといって自分の性格上、よく相手を知ってからでないと結婚には踏み切れないような気がするし。
 4年近く付き合った彼氏と別れた今、次の出会いを探し始めないといけないのかなぁ、と考えてしまう自分がいて。



 ハァ、と拓斗がため息をついた。
 そんな憂いを帯びた姿さえ、絵になるから美丈夫は羨ましい。



「それなら、さ」
「何よ」
「心配だから、合コンの練習、しよ」
「……は?」

 なんだそれ!?
 今日の拓斗は何か変なモノでも食べたのだろうか。
 それとも実は熱があるとか?
 どうしちゃったのよ、大丈夫!?

「さゆねえ合コン行くの初めてだろ、チョロいからすぐにお持ち帰りされそう」
「なによそれ、そんなことないわよ」

 拓斗のくせに生意気な口きいて! 遅い反抗期か!!

「俺にチョロくないってところ見せられたら合コンに行ってもいいよ。ま、無理だと思うけど」

 片方だけ口角をあげて拓斗が笑う。
 なんか、いじわるな顔! ケンカ売るなら買うわよ!

「おいで、さゆねえ。コップ持ってここに座って」

 拓斗が自分の座っているすぐ隣をポンポンと軽く叩く。
 飲みかけのジュースが入ったコップを持って拓斗の隣へ行き、ぽすん、とベッドに座った。



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