【R18】義姉さん、俺に恋を教えて~草食系ハイスペ『元』義弟に床ドン顎クイされてます?溺愛する相手、間違っていませんか~

弓はあと

文字の大きさ
上 下
3 / 17

3

しおりを挟む


 今まで曲げていた腰を伸ばし、目を閉じてグーッと伸びをした。
 農作業は腰を曲げている時間が多い。

 ゆっくりと瞼を開けると、視界に飛び込んでくるのは緑色の景色。

 しかも単純な緑じゃない。
 薄かったり濃かったり、黄色に近い緑もあれば、青っぽい緑もある。

 山に囲まれているこの土地から見える景色は、見事な風景画のよう。

 本当に、綺麗――
 ここに来て、よかった。

 早いものであれからもうすぐ四か月が経とうとしている。
 統哉さんと離婚してマンションを出た、あの日から。

 いま私が住んでいるのは、離婚前に統哉さんと暮らしていた都内のマンションから電車で二時間以上、さらにバスで40分かかる農村地帯。
 そのバスも、一時間に一本あるかないかという状況。

 空き家だった古民家を借り、ひとりで住んでいる。
 一人暮らしには大きすぎる家だけれど、格安で借りる事ができたのは本当にありがたい。

 家からそう遠くない所に畑も借りる事ができた。
 いつか農協や道の駅で、私の作った野菜が美味しいと言ってもらえるようになる事が、今の私の目標。
 まだまだ家庭菜園のレベルだけれど。

 突然移住してきた私に、村の人たちは意外なくらい親切にしてくれた。
 よそ者が来たと敬遠されるかと思っていたのに。
 若い人がどんどん減っているらしく、30歳の私の事も若者が来てよかったと大歓迎してくれて。
 特にお年寄りの方は野菜の植え方を教えてくれたり、農作物のお裾分けをしてくれたりと、毎日のように誰かが話しかけに来てくれる。

 私の両親は駆け落ち同然で結婚したらしく、祖父母の顔を見たことが無かったから初めて味わう孫の気分。
 なんだか少しくすぐったい。でも、嬉しい。

 そう感じるのは、私に家族や友達がいないからかな。

 私が小さい頃に父が亡くなり、母は苦労して私を育ててくれた。
 大人になったら母を楽にしてあげたいと、小さな頃からがむしゃらに勉強をがんばっていた私。

 友達と遊んだ記憶は、ほとんど無い。

 でもその甲斐あって最難関の国立大学に合格する事ができた。
 だけど母は、私の大学受験が終わるのとほぼ同時期に亡くなってしまって。

 頼れる親戚もいないから、塾でアルバイトをしながら大学に通う日々。
 大学の勉強は想像以上に大変で、遊ぶ時間は無かった。

 だけど大学を卒業したら、私はひとりで生活する必要があるから。
 遊ぶ時間は無くても、就職するための準備はしないといけない。

 将来の役に立つかもしれないと経営について学ぶサークルに入り、そこで統哉さんと出会い家族になれたのは奇跡だったと思う。

 統哉さんの事も仕事も大切にしたくて。
 自分なりに努力してきたつもりだった。
 だけど。
 統哉さんと離婚して、仕事も家族も同時に失ってしまった。



 ん……?

 じゃりじゃりじゃり……と舗装されていない道路を車が走る音。

 大きな麦わら帽子のつばを少し上げ、音のする方へ顔を向ける。
 白い軽トラックがこちらに向かって走ってくるのが見えた。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 

【お礼&お詫び】

 お気に入り登録のままお待ちくださった読者様、本当にありがとうございます。
 この小説エタるんじゃないか、とご心配をおかけして大変申し訳ありません。
 亀更新で恐縮ですが、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。





しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...