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しおりを挟む「魔お……レオン様、ヴェルク様を止めてください」
お願いしたら、膝にのせられたまま身体をぎゅぅッと抱きしめられた。
「それは無理だよマミィ。闇が世界を覆うショーなんて、一生に一度見られるかどうか分からないんだ。こんなにゾクゾクするような楽しい事、やめさせられないよ」
「せ、世界が滅びたら、レオン様だって困るでしょう?」
「困らないさ。人間はしぶといからね、ほんの少しは生き延びるだろうし。魔物は雑魚が減っても関係ない。上級の魔族が減ったら魔界から連れてくればいい」
「魔界、から?」
びゅぉぉおおおお、と窓枠だけになった窓から風が吹き込んできた。
生暖かいかと思ったら、凍るように冷たくなったり、弱くなったかと思えば、突然強くなる、普通ではない、魔力の暴走を感じさせる風。
「そう、知らない? 山の上にある、魔界への扉。魔族は寿命が長いからね、あ、森とか海に住むような雑魚は短いけど。だからある程度の年齢に達すると、扉から魔界へ行って悠々自適の隠居生活」
雑魚? 魔の森や海に住む魔物が?
人間たちにとっては、恐怖でしかないのに?
隠居生活って、もしかして魔界には魔王たちの親とかもいたりするの?
「あーでも、好きでこの世界に残ってる変態亀は一匹いるか。ま、基本的にこっちの世界にいる魔族は若手だから、魔界にいる中から若めのに戻ってきてもらえば問題ない」
問題ないって……あるでしょう!?
どうしよう、どうしたら金の魔王は世界の滅亡を止めようと思ってくれる?
いったい、どうしたら……。
どんなことでもいいから、考えて、私。
「でも、でもでも、世界が滅びたら、約束したクッキーしばらく作れなくなりますよ」
はわぁぁあ、こんな事しか思い浮かばないなんてっ!
「あ、それは困るな」
え!? クッキーそんなに楽しみだったの!?
世界の滅亡ショーよりも??
思案するように金の魔王が視線を上にずらす。
私を抱きしめていた力が僅かに緩んだ。その隙に金の魔王の膝からおりて、燃えるような眼をして仁王立ちしたヴェルク様の方へと走る。
ヴェルク様の紅い瞳は何も見ておらず、体だけがここにあって心はその中から消えてしまったような、そんなお姿で。
「ファロス、ごめんなさい!」
「ギョォッッ!?」
ヴェルク様の横で翼をバタバタさせていたファロスの背中に飛び乗った。
そのままヴェルク様の首に腕をまわし、ギュッと抱きついて大声で叫ぶ。
「ヴェルク様!!」
近くで叫んでも、私の声は届いてないみたいで哀しい。
後ろを振り返るとガラスのない窓の外では、どんどん闇が広がっていて不気味な風も吹いている。
どうすれば、ヴェルク様を止められるの?
世界を滅ぼしたりしたら、魔王なのに心優しいヴェルク様は絶対に後悔してしまう。
ぎゅうぅぅぅ、とヴェルク様の首に顔をうずめて抱きしめる。すると微かに呼吸音が聞こえた。
顔を上げると、目の前に薄く開いたヴェルク様の唇。
私の存在に気づいてほしくて、唇を重ねた。
――お願い、ヴェルク様。私の声を聞いて
口内でヴェルク様の舌を探して、自分の舌を絡めてみる。
何度も何度も絡めて、ジュッと舌を吸ったらヴェルク様の肩がピクリと揺れた気がした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【お知らせ】
閲覧ありがとうございます。
このたび新たにエタニティの小説を投稿しました。
タイトルは
『【R18】お兄ちゃんと契約結婚!?~不感症でオタクなちょいぽちゃの私がスパダリ御曹司に溺愛されて恋愛フラグ争奪戦~』
になります。
また、以下の小説も連載中です。
(エタニティ作品) ※新たにバレンタインの話を投稿しました。本編は完結済みです。
『【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です』
(レジーナ作品)
『悪役令嬢は婚約破棄されて破滅フラグを回収したい~『お嬢様……そうはさせません』イケメンツンデレ執事はバッドエンドを許さない~』
もしお時間がありましたら、拙作ではありますが、物語の世界に遊びにいらしてください。
心よりお待ちしております。
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