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しおりを挟む「なぜ我が、レオンに詫びなどせねばならぬのだ」
案内された応接間のソファに足を組んで座り、不機嫌な様子のヴェルク様。
「ギョーギョッギョッギョッギョッッ!! 詫びではなく報告ですぞヴェルク様! 昨晩は二度もクルーティス王国に侵入しましたからな! レオン殿に事情を説明せねばなりますまい!」
ここは、金の魔王城。
意外にも、と言ったら怒られるかしら、人間関係(それとも魔物関係?)を重んじるファロスが金の魔王の元へ昨日の弁明に行くことを主張して今に至る。
私はお留守番かな、と思っていたら「またアエルに飛ばされないか心配だから」と言われ、ヴェルク様とファロスとともに金の魔王城へ来ています。
ヴェルク様のお城の廊下の突きあたりで、カーテンを捲ると現れた1枚の大きな鏡。
こんなところでどうしたのかしら、と思ったらファロスが鏡の中へと入っていく。
びっくりしているとヴェルク様がふわりと抱き上げてくれて、一緒に鏡の中へ連れて行ってくれた。
不思議だけれど、鏡を越えたここはどうやら金の魔王城のようで。
鏡の前で出迎えてくれた魔物が、可愛らしい声で「よよよよようこそ。レレレレレオン様のお城へ」と言って出迎えてくれた。
鏡を出た私たちを迎えこの部屋まで案内してくれたのは、ピンク色をした、まるでうさぎの着ぐるみのような魔物。
前世の遊園地で風船を配ったりしたら、みんなが寄ってきそうな可愛い姿をしている。
「どどどどどうぞ、こここここちらでお待ちください」と、言葉もモフモフした身体もいやにプルプル震えていたのが気になったけど。
もちろん今日は私も服を着ています。
服と靴はサティ様に貸していただきました。
サティ様の部屋で見せていただいたのは、胸の谷間やお臍が見えるデザインだったりスリットが大きかったり生地が透けていたりとどれもセクシーな感じのお召し物。
服は夫の好みを優先しているの、とおっしゃるサティ様。
なるほど、この大胆なお洋服は、銀の魔王ゾマ様のご趣味なのですね。
ふぅ……と儚げにため息をつくサティ様。
双子だけあって、ヴェルク様とお顔がよく似ていらっしゃる。体格はまったく違うけれど。
身長は私くらいで、身体はほっそりとしているのに驚くほどふくよかな胸。
私は前世は貧乳……今世では胸がまあまあある方だと思うけれど、サティ様にはとても及ばない。
私の着る服を選ぶヴェルク様は、眉間に深い皺を寄せて長い間悩んでいらっしゃいました。
「サティ、もっと違う服はないのか? もっと、こう……リリィが着てレオンのところに行っても問題ないような」と尋ねるヴェルク様。
「ごめんなさい、ゾマが選ぶ服はどれも地味なのよね」とおっしゃるサティ様を、ヴェルク様は大層驚いた様子で見つめていました。
「あ、そういえば自分で選んだ服がケースに入っているわ。それならどうかしら?」
そう言ってサティ様が見せてくれた服は、今までの服をはるかに凌ぐ妖艶なデザイン。ヴェルク様は言葉を失っていらっしゃいました。
服の好みも、双子だけどだいぶ違うようです。
結局、今の私の格好はと言うと。
胸の大きく開いたAラインの黒い長袖ワンピース。
それにプラスして。
ワンピースの下に裾を何度も折ったヴェルク様の黒いズボンを穿いて、ベルト代わりにリボンでキュッと結び。
とても長い黒色のストールを頭から胸元までグルグル巻きにされている感じです。
周りから見たら、全身真っ黒で目だけが見えている状態なのではないでしょうか。
前世だったら、確実に職務質問されているでしょう。
「それにしても、レオンはいったいいつまで待たせるつもりだ」
確かに、この部屋に案内されてからだいぶ時間が経っているような。
手持ち無沙汰で、行儀が悪いと思いつつ、ついつい目線だけ動かして部屋の中を観察してしまいます。
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