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しおりを挟む稲妻で貫かれたかのようにビリリッッと身体を衝撃が突き抜ける。
ヴェヴェヴェヴェヴェヴェルク様ッ!?
吸いました!? 吸いましたよね今!?
露天風呂の縁に座っている私の腰を左腕で支え、右手で私の左腿を持ち上げ秘所に顔をうずめているヴェルク様。
ちぅ、と一度だけ秘所を吸ったあと、固まったように動かない。
この状況、恥ずかしすぎるので早く顔をどけていただきたいのですがっっ。
「……苦ぃ……」
「え? 苦い??」
ようやく秘所から顔を離したヴェルク様は、何かに耐えるようにグッと眉を寄せなんともつらそうな表情。
え? 苦いの、ですか、私のアソコ??
もともと?? それともぷにちゃんのせい??
どちらにしても、ヴェルク様に申し訳ない。
せめて良薬は口に苦しで、体力が回復されていればよいのですが。
でも、相変わらずつらそうな表情です、ヴェルク様。
もしかしたら、前に甘いとおっしゃっていただいたキスの方がいいかしら。
唾液の粘度では、体力回復の効果が薄いかもしれないけれど。
トプン、と湯に入り、一瞬目を見開いたヴェルク様の頬に手を添え唇を重ねた。
そっと舌を絡ませる。
だけどすぐに違和感を覚え、唇を離してヴェルク様の顔を見た。
少し困ったように微笑むヴェルク様。
「キスも苦いな」
「……そうですね。今日は色々あって、疲れているからでしょうか」
予想はついている。たぶん、ぷにちゃんが原因だと思う。
ぷにちゃんの這う感触はゾクゾクして、自分の意思に反して快感をひろってしまいそうなくらいの刺激で。
ヴェルク様の目の前で、官能的に肌を撫でられるのが、すごく嫌だった。
その精神状態が、体液の苦さに反映されているのだと思う。
ヴェルク様はヒョイと私を膝の上に乗せ、よしよし、とするように私の頭を優しく撫でた。
「疲れていると言えば、今までクルーティス王国の結界は、聖女だったリリィが張っていたのか?」
「王国の結界? はい、結界を張るのは聖女の役目でしたので」
「そうか、ふむ、あれは見事だった。まれに弱まっている時もあったが」
さすが魔王様。遠いところの結界の気配まで、感じ取ることができるのですね。
「あれだけの結界を人間が維持するのはなかなか難儀なことだったろう。リリィはよくがんばっていたのだな」
褒めてくださるのですか、ヴェルク様。
結界を張るのは聖女の役割だから当然のことだと思っていました。
今まで誰にも、褒められたことなどありませんよ。
「もう、がんばらなくてよいぞ。我のそばにいるだけでいい」
ちゅ、ちゅ、とゆっくり時間をかけて味わうように、おでこ、目尻、頬、と降ってくるヴェルク様のキス。
口へキスを落とされた時に唇をチロ、と舌先で舐められたので、ぎゅっと口を結んだ。
宥めるようにヴェルク様が私の頭を撫でる。
「リリィ、口を開けてくれないか」
「ダメです。苦い思いをさせてしまいますから」
「苦くても、我はかまわない。リリィが嫌なら、無理強いはできないが」
切なそうな声音で悲しげに微笑まないでくださいヴェルク様。
そんな表情をされたら、どんなお願いでも叶えてあげたくなってしまいます。
「ダメか?」
首を少し傾げたヴェルク様にジッと見つめられ、胸がキュンッと音をたてて射抜かれた。
そんな風に言われて、ダメなんて言えません。
もうっ、苦くても知りませんよ。
「ダメでは……ない、です」
後頭部を支えられ、もう一方の手が頬に添えられるとヴェルク様の唇がゆっくりと重ねられた。
口を薄く開けてヴェルク様の舌を受け入れる。クチュ……と舌が絡まる音が耳に届いた。
「ふ、ぅ……ぁ、ムんン」
ヴェルク様のキスは、優しいのに激しくて。その矛盾が、私の脳を混乱させる。
舌を絡ませていると頭がフワフワした。なのに次の瞬間には舌を強く吸われ、脳が痺れて。
時折り息継ぎをするようにヴェルク様の唇がほんの少し離れ、「リリィ」と小さく囁いたかと思うとまたすぐに唇を塞がれた。
唇を重ねるたびに、口の中がとろりとした甘さで満たされてくる。
あぁ、もう、甘すぎて蕩けてしまいそう。
………………
……甘い? あれ??
いつの間にか、キスが、甘くなってる??
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