32 / 70
31
しおりを挟む稲妻で貫かれたかのようにビリリッッと身体を衝撃が突き抜ける。
ヴェヴェヴェヴェヴェヴェルク様ッ!?
吸いました!? 吸いましたよね今!?
露天風呂の縁に座っている私の腰を左腕で支え、右手で私の左腿を持ち上げ秘所に顔をうずめているヴェルク様。
ちぅ、と一度だけ秘所を吸ったあと、固まったように動かない。
この状況、恥ずかしすぎるので早く顔をどけていただきたいのですがっっ。
「……苦ぃ……」
「え? 苦い??」
ようやく秘所から顔を離したヴェルク様は、何かに耐えるようにグッと眉を寄せなんともつらそうな表情。
え? 苦いの、ですか、私のアソコ??
もともと?? それともぷにちゃんのせい??
どちらにしても、ヴェルク様に申し訳ない。
せめて良薬は口に苦しで、体力が回復されていればよいのですが。
でも、相変わらずつらそうな表情です、ヴェルク様。
もしかしたら、前に甘いとおっしゃっていただいたキスの方がいいかしら。
唾液の粘度では、体力回復の効果が薄いかもしれないけれど。
トプン、と湯に入り、一瞬目を見開いたヴェルク様の頬に手を添え唇を重ねた。
そっと舌を絡ませる。
だけどすぐに違和感を覚え、唇を離してヴェルク様の顔を見た。
少し困ったように微笑むヴェルク様。
「キスも苦いな」
「……そうですね。今日は色々あって、疲れているからでしょうか」
予想はついている。たぶん、ぷにちゃんが原因だと思う。
ぷにちゃんの這う感触はゾクゾクして、自分の意思に反して快感をひろってしまいそうなくらいの刺激で。
ヴェルク様の目の前で、官能的に肌を撫でられるのが、すごく嫌だった。
その精神状態が、体液の苦さに反映されているのだと思う。
ヴェルク様はヒョイと私を膝の上に乗せ、よしよし、とするように私の頭を優しく撫でた。
「疲れていると言えば、今までクルーティス王国の結界は、聖女だったリリィが張っていたのか?」
「王国の結界? はい、結界を張るのは聖女の役目でしたので」
「そうか、ふむ、あれは見事だった。まれに弱まっている時もあったが」
さすが魔王様。遠いところの結界の気配まで、感じ取ることができるのですね。
「あれだけの結界を人間が維持するのはなかなか難儀なことだったろう。リリィはよくがんばっていたのだな」
褒めてくださるのですか、ヴェルク様。
結界を張るのは聖女の役割だから当然のことだと思っていました。
今まで誰にも、褒められたことなどありませんよ。
「もう、がんばらなくてよいぞ。我のそばにいるだけでいい」
ちゅ、ちゅ、とゆっくり時間をかけて味わうように、おでこ、目尻、頬、と降ってくるヴェルク様のキス。
口へキスを落とされた時に唇をチロ、と舌先で舐められたので、ぎゅっと口を結んだ。
宥めるようにヴェルク様が私の頭を撫でる。
「リリィ、口を開けてくれないか」
「ダメです。苦い思いをさせてしまいますから」
「苦くても、我はかまわない。リリィが嫌なら、無理強いはできないが」
切なそうな声音で悲しげに微笑まないでくださいヴェルク様。
そんな表情をされたら、どんなお願いでも叶えてあげたくなってしまいます。
「ダメか?」
首を少し傾げたヴェルク様にジッと見つめられ、胸がキュンッと音をたてて射抜かれた。
そんな風に言われて、ダメなんて言えません。
もうっ、苦くても知りませんよ。
「ダメでは……ない、です」
後頭部を支えられ、もう一方の手が頬に添えられるとヴェルク様の唇がゆっくりと重ねられた。
口を薄く開けてヴェルク様の舌を受け入れる。クチュ……と舌が絡まる音が耳に届いた。
「ふ、ぅ……ぁ、ムんン」
ヴェルク様のキスは、優しいのに激しくて。その矛盾が、私の脳を混乱させる。
舌を絡ませていると頭がフワフワした。なのに次の瞬間には舌を強く吸われ、脳が痺れて。
時折り息継ぎをするようにヴェルク様の唇がほんの少し離れ、「リリィ」と小さく囁いたかと思うとまたすぐに唇を塞がれた。
唇を重ねるたびに、口の中がとろりとした甘さで満たされてくる。
あぁ、もう、甘すぎて蕩けてしまいそう。
………………
……甘い? あれ??
いつの間にか、キスが、甘くなってる??
11
お気に入りに追加
1,027
あなたにおすすめの小説


【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」


この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる