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しおりを挟むゆっくりと身体をおろされ座らされる。膝から下がとても温かい。
「ついでに湯を浴びてしまおう」
ヴェルク様の声に目を開けると、そこは最初に連れてこられた露天風呂だった。
足湯のような感じで、ヴェルク様とふたり並んで座っている。
いつの間にか裸になっていたヴェルク様の腰にはタオルが巻かれ大事なところが見えなくなっていたけれど、程よく鍛えられた身体が眩しくて目のやり場に困ってしまう。
最初にお風呂に入った時と違い髪の短いヴェルク様は、なんだかより一層逞しく感じられる。変に意識してしまい心臓がドクドクドクドク忙しい。
私は……やだ、相変わらずの裸!
お風呂だから普通? でもこれはやっぱり恥ずかしいっっ
慌てて胸と股に手を当てたら、ヴェルク様にふ、と笑われてしまった。うう、恥ずかしい……。
身体には何も身につけていないけれど、いつの間に用意したのか座らされた時から私のお尻には柔らかなタオルが敷かれている。
岩が直接触れず痛くなくて嬉しい。用意したのヴェルク様かしら? 魔王が細かい気遣いのできる方なんて知ったら、普通の人間は驚くでしょうね。
まぁでも、服はくださらないのですが。
「すまなかった、リリィ」
ん? 謝られる心当たりがありませんが。
何に対しての謝罪でしょうか、ヴェルク様?
「アエルに裸を見られてしまったな。しかもアエルにはまだ額の眼があり魔力が暴走してしまう時期なのに、我の注意が足りず変なところへ転移して嫌な思いをさせてしまった」
アエルに裸を見られたのはまったく気にしていない。まだ3歳くらいだし。いえ実際は300年以上生きているのかもしれないけど。
「まだ額の眼が、という事は、いずれ消えるのでしょうか、アエルの額の眼は」
「ああ、魔力が落ち着く頃に自然に消える。髪で隠れていたかもしれないがアリアにもあるぞ」
前世の日本の蒙古斑、みたいなものでしょうか?
赤ちゃんの時にはみんなあるけど、だんだん消えていく、みたいな?
はぁ、とヴェルク様がため息をつく。
そんなに気になさらなくていいのに……
って、あら、もしかして……!?
「ヴェルク様、お身体の調子が悪いのでは?」
「いや、そんな事はない。大丈夫だ」
いえ、明らかに顔色が悪いのですが。
「ヴェルク様が困った時は私に頼ってくださいと申しあげたでしょう?」
少し強い声音で言うと、ヴェルク様はちょっと困ったように眉を寄せほんの少しだけ笑った。
「そうだったな、まぁ、ちょっと疲れただけだ。リリィとアエルがいなくなった後、異変を感じたのかレオンがクルーティス王国全体に強力な結界を張った。その前に森での事もあったから、警戒しているんだろうな。レオンの張った結界を無理やり行き来したから、さすがに少し疲れた」
疲れただけとおっしゃるけれど、ヴェルク様、本当につらそうな顔色。
金の魔王の結界を超えて移動するって、相当なことですよね。
どうしたら、早く元気になっていただけるのかしら。
栄養のあるものを食べてもらう? 人間と同じメニューで大丈夫でしょうか。
あとはこの後ゆっくりと寝てもらって、あとは……
――『そんなこと言って、自分が元気になりたいだけじゃないのぉ』
――『加護のある聖女の体液は粘度が高ければ舐めるだけでも体力が回復するってやつか。リリィのアソコも無理やりにでも一度舐めときゃよかったかもな。そうしたらテータの方が聖女としての力が強いと比べ……』
「あ、の、ヴェルク様……」
知識として知っているだけだから本当に効き目があるのかどうか、私にはわからない。
こんな事、言っていいのかしら……。
「ん? どうした、リリィ?」
つらさに蓋をしたヴェルク様の笑顔。
隠されたつらさを、せめてお身体のつらさをとってあげたい。
もし私の体液に、ヴェルク様のつらさを取り除く力があるのなら。
ああ、でも恥ずかしくて、ヴェルク様の顔を見て話せない。
「ヴェルク様……聖女の体液は、粘度が高いものだと舐めるだけで体力が回復すると言われております。もしお嫌でなければ、あの、……申し上げにくいのですが、体液が出る私の脚の付け根のところを、その、舐めていただければ、と」
一気に言葉を発して、チラ、とヴェルク様の顔を覗き見る。
ヴェルク様はこちらを見ていなかった。
頭痛がするかのように額を手で押さえて、俯いていらっしゃる。
お顔が、耳が、湯でのぼせたように真っ赤なのですが、大丈夫ですか、ヴェルク様?
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