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しおりを挟むどうしよう、口を塞ぐ手を舐めて、スリープの魔法をかけてみる? できる?
押さえられた口をなんとか動かして唇の隙間から舌先を出し、口を覆う手をチロ、と舐めた。
私の口を押さえる手が、微かにピクリと揺れる。
次の瞬間、うしろから裸の身体を拘束する腕に、グッと力が込められた。
早く呪文を唱えないと。
あぁもうッ、口を塞がれているから言葉がうまく出てこない。
――リリィ――
だめだわ、先に魔法をかけられてしまったかもしれない。
しかも臓器がトロリと溶かされる禁止魔法。
胸が、熱い。心臓が蕩けてしまいそう。
それとも、今の幻聴のせい?
ふに、と目尻のところにしっとりと柔らかな感触。
そしてそのまま目尻を、レロ……と生温かいもので撫でられる。
身体が悦びでゾクリと震えた。
この感触、私、知ってる。
見なくても何かわかる。
目尻への温もりが触れては離れをゆっくりと繰り返しながら、私の頬へとおりてくる。
口を塞いでいた手がゆっくりと外され、代わりに愛しい人の唇で塞がれた。
――ああ、ヴェルク様!
ヴェルク様の舌に誘われるまま、舌を委ねて絡ませる。
いつの間にか私の身体は、あぐらで座るヴェルク様の脚の上で向かい合わせになるように座らされていた。
先ほどまで私の口を塞いでいた手は背中にまわされ、ヴェルク様の纏うマントは私の身体も一緒に包み込んでいる。
『ねぇ? リリィ様とはどんなエッチしたのぉ? 私の方がいい?」
ピク、とヴェルク様の身体が僅かに揺れたような気がした。
『あー、リリィは髪だけじゃなくて中身も老婆みたいな女だったから、したことない』
『ひっどぉ、キャハハ』
『俺が夜中に部屋へ来いって誘ってやったのに、朝の祈りのために身体を休めないと、とか年寄みたいなこと言って断りやがって』
テータ様がしない分まで結界を守るために祈りを捧げていたんだもの、他にもハードなスケジュールの修行に王太子妃教育もあり、正直デセーオ殿下に割きたいと思える時間は無かった。
今は亡き聖女だった前王妃様も、国に聖女がひとりだった時は疲労がすごくて子を授かることができなかったくらい、聖女に与えられた役割は身体に負担がかかる。
私が7歳の時に聖女として城に来て二人体制になってから、ようやく第二王子となるセリウス殿下を身籠ることができた前王妃様。
もし前王妃様が早くに子を授かることができていれば、恐らく陛下は側室を娶ることはせずデセーオ殿下がお生まれになることは無かったでしょう。
『それに比べてテータは聖女の役目も務めながら俺の相手もちゃんとできるんだから、本当にいい女だよ』
唇を離し俯いた私の両頬に、そっと大きな手のひらが添えられる。
その拍子に身体を包んでいたマントがハラリと落ちたけれど、不思議と寒さは感じなかった。
コツン、と優しすぎる強さでヴェルク様のおでこが私のおでこに当たり離れていく。
目線だけチラ、と上げると、私の両頬を手で包んだまま甘やかすように微笑むヴェルク様。
『なあ、もう一回しようぜ。アソコ舐めてやるから脚、広げて。好きだろテータ、舐められるの』
『そんなこと言って、自分が元気になりたいだけじゃないのぉ』
『加護のある聖女の体液は粘度が高ければ舐めるだけでも体力が回復するってやつか。リリィのアソコも無理やりにでも一度舐めときゃよかったかもな。そうしたらテータの方が聖女としての力が強いと比べ……』
デセーオ殿下の言葉を遮るように、ヴェルク様の手のひらが私の頬を少し滑りシュボ、と指が両耳に挿し込まれた。
耳に入れられたヴェルク様の指が、穴のナカをくすぐるように時々細かく揺れる。
自分の耳のところでカシュカシュカシュカシュと聞こえる音が、外界の音も声も遮ってくれた。
残りの指は私の頬を優しく撫で、耳朶をクニクニと揉んでいたかと思うと耳の裏側をスリスリと擦り始める。
耳の裏側を擦られ、思わず口から声が漏れそうになるとヴェルク様の口で塞がれた。
耳と頬を優しく虐められながら舌を何度も吸われる。身体の奥の方がきゅぅと切なくなるような、不思議な感じがした。
「ぅわぁーんッ」
突然響き渡る子どもの泣き声。
『誰だッ!?』
慌てた様子のデセーオ殿下の声が響く。
ヴェルク様は座ったまま、私と泣いているアエルを脚の上にのせた。
そして私たちふたりを外界から隠すように、身体に纏ったマントをふわりと広げ、中に私たちふたりを閉じ込める。
次の瞬間、暗かったはずのマントの中が、転移魔法と思われる光で輝き始めた。
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