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しおりを挟む――初めての場所だからかしら
また、目が覚めてしまった。
でも、一度目の時のような寒さは感じない。
私の頭をのせてゆっくりと上下する黒狼のヴェルク様のお腹が心地よくて、自然と口元が綻ぶ。
ゆらゆらされて微睡んでいたら、眠りに落ちる前のことが頭に蘇ってきた。
つい意地悪な気持ちになってヴェルク様の尻尾の付け根を触ったら、仕返しとばかりに背中をヴェルク様に舐められて。
くすぐったくて、ゾクゾクして、ごめんなさい許してって言ったのに、なかなかやめてくださらなくて。
アエルとアリアが起きちゃいますよって言ったら、キスするように鼻で背中を軽く押してから「そうだな」と言ってようやく終えてくださった。
止めてくれて安心するところなのに、少し残念に感じてしまったのはヴェルク様には内緒。
ふふふ、ヴェルク様の身体、温かい。
あぁ、なんだか幸せ。
クルーティス王国での出来事が嘘のよう。
……あら?
ぼんやりと、ベッドの上で立ち上がっている小さな人影が見えた。
「アエル?」
返事は、ない。
でもこの人影は、たぶん、アエル。
「どうしたの? トイレ?」
起き上がり、ヴェルク様を踏まないように気をつけながらベッドを降りる。
ベッドの脇を歩き人影に近付いたところで異変に気づき、ビクッと身体が震えた。
人影のおでこあたりが、うっすらと光っていたから。
アエルの、第三の眼が、開いてる?
突然、ブワッッ!!と強い光に包まれた。
あ、この感じ、私、知ってる。
自分の身体が、今いる場所から離れていく感覚。
20年前にも、同じ事があった。
もしかして私、また違う世界へ連れて行かれるの!?
行きたくない! 行きたくない!
ヴェルク様のそばにいたい!!
尋常じゃない浮遊感の中で、頭に浮かぶのはヴェルク様のことばかり。
あぁ、お別れの前にせめて一言、ヴェルク様と言葉を交わしたかった――
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