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しおりを挟む――何か、聞こえた?
ふと目が覚めて、違和感を覚える。
見える景色が、いつもと違う。
クルーティス城のような豪奢な飾りは無く、落ち着いた雰囲気の部屋。
ああ、ここは黒の魔王城。
ぶるッと身体が震えた。
恐怖からではなく、ベッドにひとりで少し寒くて。
寝る時にあった幸せな温もりが、恋しい。
ヴェルク様、どこにいらっしゃるのかしら。
早く……
戻ってきてほしい、です。
――ふゃぁぁ――
猫の、鳴き声?
――ふぇぇん――
ん? 違う? 子どもの、泣き声??
そっとベッドを降りる。
カチリ、とドアを開け、顔だけ出して廊下を覗いた。
――ふぇぇえええ――
暗い廊下の奥から、聞こえてくる。
ちょっと、怖い。
でも、本当に子供の泣き声だったら?
前世でベビーシッターをしていた身としては、見逃せない。
虐待とかじゃないか、念のため確認しないと。
あ、でも私、裸だ!!
んーっと……
部屋を見渡してベッドに戻り、シーツを引き抜いてパレオのように身体に巻きキュッと首のうしろで縛る。
うん、とりあえずこれで大丈夫かな。
魔法で灯り……は、点けない方がいいかしら? もし魔物がいたら刺激してしまうかもしれないし。
灯りを嫌う魔物、興奮する魔物、どちらがいるか分からないから。
ガチャリ、キィーとドアを開け、暗闇の中を声のする方へゆっくりと歩き出した。
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