【R18】婚約破棄された転生聖女は魔の森に捨てられる~ヤンデレ黒の魔王が溺愛してくるけどどうしたらいいですかッ!?~

弓はあと

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 つまり――

 私は今、非常に貞操の危機に晒されているということですよね!?



 男ふたりに襲われて純潔が散るのももちろん嫌だけど、集団のゴリゴンが初めての相手なんて、そんなの絶対に無理ッ!!

 私の血の匂いに寄ってきたのかしら。魔物は血の匂いが好きだから。

 たくさんのゴリゴンを傷つけてしまったら、それこそ血の匂いに誘われて他の魔物が大量に寄ってきてしまうかもしれない。



 それなら――

 逃げるが、勝ちってことでしょう!!



 手の甲に口づけをして、魔物除けの守護魔法の詠唱を始め――





 ――こ、ども!?





 遠目ではあるけれど、ゴリゴンの後ろに、人間の子どものような姿が見える。



 ――助けないと!!



 気付いたら、その子に向かって走りだしていた。



 走りながら手の甲に口づけをして、魔物除けの守護魔法を詠唱する。



 まだ、3歳くらい?
 どうして、こんなところに??



 頭の中に疑問符がたくさん浮かぶけれど、今やるべきことはひとつ!



 あの子をゴリゴンから助ける!!



 守護魔法を唱える時間が短かったけれど、あの子を抱きあげて少し逃げるくらいまでは効き目があるはず。



 魔法に怯えるゴリゴンの脇を走り抜けて、そのうしろにいた子を抱っこしてさらに走る。



 ――だ、抱っこしながらドレスで走るの、キツィ……



 足はズキズキ痛くて、胸の傷もヒリヒリしてつらい。



 走りながら、手に口づけて呪文を詠唱し、竜巻をうしろに投げる。



 シュゴー!! という声がいくつか重なって聞こえた。



 もう一度、走りながら竜巻を起こす。



 ――だいぶ逃げてこられた、かな?



 抱えている子が、きゅぅ、としがみついてきたので、足を止めてその子の顔を見た。



 男の子かな? サラリと短い薄い色の髪。
 暗くてよく分からないけど白? じゃなさそう、銀色、の髪?



 私を見上げると、にこっと笑った。

 うわ、可愛いッ!



 近くで顔を見て、気が付いた。
 この子の額に、見覚えのある十字の傷。

 この十字の傷、絶対に見たことある、間違いない。

 ん? あれ? 私、この子に会った事があるってこと??

 いつ? どこで??

 しかも、この子の目――

 右目は前世の私と同じ、黒い瞳。
 でも左目は……色が、薄い。
 金……色?

 この目も覚えてる。
 左目は視力が悪いのかな、と思ったのよ、あの時。

 でもあの時って、どの時?



 ピク、とその子の耳が動いた。
 つられて耳をすませると、近付いてくる足音と、シュゴーという呼吸音。

 慌てて腕の中の子の頬にキスをして、守護魔法を唱える。



 あれ? 消えた?



 慌ててたから間違えたのかも、もう一度唱える。



 また、消えた――



 魔法を習い始めたばかりの頃、失敗すると魔法が煙のように消えたことがある。

 その時みたいな感じ。

 え? え? どうして!?

 守護魔法は、お守りを作る時にも使うし、今までで一番唱えてきた魔法なのに。

 別の守護魔法を詠唱する。もう少し初心者向けの守護魔法。
 魔除けの持続時間は短いけれど、ないよりはずっといい。
 頻繁に唱えればいいだけ。



 消え、た……。



 こめかみからツーッと嫌な汗が流れていくのがわかった。



 次の瞬間、ザンッッと背中に衝撃が走る。



 振り返ると、自分の血しぶきが微かに見えた。



 すぐ後ろにいるゴリゴンの爪先が、赤くなっている。



 ゴフッッ……



 咳き込んだら血の味がした。
 噛んで口の中を切ったのか、吐いた血なのかは分らないけれど。



 視界の端にゴリゴンの爪が振り下ろされるのが見えて、咄嗟に腕の中の子を地面に押し倒すようにしてその体に覆い被さる。

「動かないでッ! 私の腕の中にいてッ!!」



 子どもに覆い被さってうずくまる私の背中に、切り裂かれるような激痛が走った。
 続けざまに二度、三度と。



 なのに、致命傷を与えられることは無く。
 ゴリゴンは自分の力を知らしめて、抵抗する力を奪うように私を嬲り続ける。



 痛みと恐怖で悲鳴をあげることすらできない。
 いっそのこと、殺された方が楽なのかもしれないとさえ思う。



 でも、それならこの子を助けてから……



 腕の中の子の頬にキスをして、魔物除けの呪文を詠唱する。

 ――なんで、消えちゃうの……

 どうすれば――

 私が囮になって走れば、その間に逃げられる?
 でも、こんなに小さな子が、魔の森にひとりで大丈夫?



 ひゅぅ、と下半身に冷たい風を感じた。



 風を感じた方に顔を向けると、ドレスを捲られて剥き出しになった私の足と、毛に覆われたゴリゴンの姿。

 ゴリゴンの脚の付け根には獰猛にそそり立った赤黒い物体あり、その先端からはポタポタと不気味な色をした液体が垂れていた。



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