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好みのタイプ

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 朝、目が覚めて、目の前の光景に目を疑った。

 まず目に飛び込んできたのは、創一郎さんの、はだけた胸。
 少し顔を起こして周りを見る。

 あれ? あれ? ここソファ?

 背中には、いつもソファで使っているブランケットがかけてある。

 昨日、ソファで寝ちゃった? 創一郎さんと?  

 ゆっくりと起き上がろうとしたら、頭がズキンと痛んだ。
 それに上手く起き上がれない、腰のあたりに何かが引っかかっている。

 ブランケットを捲ってみると、私の腰へと伸びている創一郎さんの腕。

 彼の腕の付け根から二の腕、肘の方へと順に目で辿ってブランケットをさらに捲りながら後ろを向く。
 創一郎さんの手首が手錠のようなブレスレットで拘束されていた。

 昨日の記憶がところどころ蘇ってくる。

 ぅうわわわわわーっっっ
 昨日のって、夢じゃなかったの!?

 慌てて彼のブレスレットを外し、身体をずらして、彼の股間を確認する。
 辛うじて、創一郎さんの下着は普通に穿けている状態だけれども、ベルトは外れ、ズボンのファスナーは開いていた。

 え? どこまで現実? どこから夢?



 目を覚ました創一郎さんに、「俺がそばにいない時には絶対にお酒を飲まない事」を強く約束させられた。

 「俺も、魔が差した。本当はもっと早く俺が止めるべきだったんだ」と何故か創一郎さんはちょっと辛そうな表情。

 シャワーを浴びてサッパリした様子の創一郎さんは、二日酔いっぽい症状がある私のために、ドリンク剤や食べられそうなものを探してくると言ってコンビニへと出かけて行った。



 創一郎さんが出かけて間もなく、来訪者を告げる呼び出し音が鳴った。
 いつも創一郎さんがいない時には出ないけれど、モニターに映っていたのは……勇太君。

 創一郎さんの秘書だし、勇太君なら、出た方がいいよね――

 ロビーへと続く入り口の鍵を解除する。
 続いて、エレベーターのロックを解除しながら、慌ててババババッと着替え、ローテーブルに散らかったままだったベビードールを箱に入れて蓋を閉めリビングの隅に置く。

 玄関の鍵を解除した時には、少し息切れしてしまった。

「これ、出張のお土産のプリン。創一郎君ここのお店の好きだから昨日買っておいたんだ。甘いものが好きなんて、意外だよね」
「……ありがとうございます」

 勇太君も、創一郎さんが甘いもの好きって知ってるんだ。
 そういえば、フランスにいたころからの知り合いだって言ってたもんね。
 ……創一郎さんのこと、スージーさんみたいに、色々知ってるのかな?

 紅茶を淹れてダイニングテーブルに置いたら「ソファに座ろうよ」と言って勇太君がリビングに運んでくれた。

「クッキーも買ってきたんだ。花ちゃんも座って、一緒に食べよう」

 勇太君がローテーブルに紅茶とクッキーをセッティングしてくれたので、隣に座って勧められるままにクッキーを口にする。
 バターの香りが口にフワッと広がって丁度いい甘さ。
 なんだか幸せな気分になる味。

 勇太君はいつものように、身の回りで起きた出来事を楽しく聞かせてくれた。
 今回は、昨日から泊まりで行った出張先での話。

 中でも興味深かったのは、ある会社の社長子息と社長令嬢の結婚話。
 なんでも、会社の後を継がずに漫画家になってしまった社長子息とその彼をずっと好きだった幼馴染の社長令嬢が、周囲の反対を押し切って結婚してしまったらしい。

「結婚した当初は色々揉めて大変だったって両方の社長が言ってたよ。でも、今は息子さんたちとも仲良くやってるみたい。そこまで人を好きになれるって、なんだか羨ましいねぇ」

 結婚したくなるほど、好きになる人、か……

「創一郎さんって、あの、ど、どんな女性が、好きなんですかね?」

 勇太君が、一瞬目を丸くしてから考えるように顎に指を添えた。

「そうだなぁ、創一郎君は純情可憐な子が好みであることは確かだね」

 純情可憐……清らかで、穢れがない愛おしい存在って感じかな?

 清らかで、穢れがない…………

 断片的に記憶に残っている、昨日の醜態が頭に浮かぶ。

 …………清らかで、穢れがない女性が好きってことは、昨日みたいに淫らで破廉恥な私だと嫌われちゃうってことだよね。
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