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ディナーの時間

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 ダイニングテーブルには、スージーさんが持ってきてくれたパエリアと生ハムのサラダ、ミートローフとオニオンリングが並んでいる。

「創一郎のためにワインは辛めのを買ってきたわよ。花ちゃんの好みも聞いておけばよかったわ。花ちゃんには甘めのカクテルにしちゃった。お口に合うといいんだけど」

 創一郎さんは辛めのお酒が好きなんだ……そういえば、お酒を飲んでいるところなんて見たことない。

「あと、食後に食べようと思って、生チョコ。このお店の美味しいの。創一郎、甘いもの好きでしょ」

 ほぉ、創一郎さん、甘いものが好きなんて意外……それも、知らなかった。
 知らない事、いっぱいあるなぁ……そうだよね、彼女でもなんでもないんだもん。

 三人で乾杯をして食べ始めようとした時、創一郎さんのスマホが鳴った。

「勇太か。今日は急にすまなかったな。……天王寺社長と藤堂院社長についてか……前に名刺をもらった時に何かメモしたかもしれない。確認する」

 話しながら創一郎さんは廊下に出て行く。

「スージーさんは創一郎さんのこと、好みとか、よく知ってるんですね」
「そうね、一緒に暮らしていたこともあるから、創一郎の知らなくてもいいことまで知ってるかもしれない」

 一緒に暮らしてた……。
 そっか、私の他にも、一緒に暮らしてたことのある女性、いるんだ。
 スージーさんの他にもいるのかな……その人はどんな人?

 いったい何人くらいの女性が、一糸纏わぬ姿で創一郎さんに抱きしめられたことがあるんだろう。
 創一郎さんのこと知りたい。知りたくないけど……知りたい。

「……スージーさんは……、創一郎さんと、お付き合いされているんですか?」
「やだ花ちゃん。私と創一郎はそんな関係じゃないわよ」

 でも……一緒に暮らしていたことがあるんですよね?
 今……は、恋人同士ではないということですか。

「創一郎さんって、今まで、どんな女性と……それに何人くらいの方とお付き合いされてたんでしょうか」
「花ちゃん、男と女の事って、知らなくてもいいこともあるから」

 そんなにたくさんの人と付き合ってきたの?
 つらい思いとか、スージーさんはしたことあるのかな。

「スージーさんは、私が創一郎さんと一緒に暮らしているの、イヤじゃないんですか?」
「ふふ、気にならないと言ったら嘘になるわね。だって好きな人が異性と暮らしてるんだもの」

 好きな人……スージーさん、今でも創一郎さんのことが好きなんだ。
 創一郎さんはどうなんだろう。
 スージーさん、素敵な人だもの。
 好きにならない男性なんて……いないと思う。

「先に食べててよかったのに」

 電話を終えた創一郎さんが戻ってきた。

 食事を食べながら、創一郎さんとスージーさんはワインを、私はカクテルを飲む。
 初めて飲むお酒。ドキドキしながら飲んだら、甘くて美味しかった。
 一口飲ませて、と言って口にした創一郎さんは「あっま」と一言。
 苺の味がする。その後ふわっと匂う、少し頭がとろん、とするような不思議な香り。

「花、飲みやすいけどアルコール度数は高いから飲み過ぎないように気を付けて。それとも冷蔵庫にジュースあるから、そっち飲むか?」

 もうッ、子ども扱いしないでください。私22才ですよ。

 食後はリビングに移動して、みんなでお酒を片手に生チョコをひとつずつ食べた。

「花、あぁもう、ココアがこぼれてるぞ。口にもついてるし」

 創一郎さんは、なぜか嬉しそうに親指で私の唇を拭う。
 
 くぅ、さっきから子ども扱いばっかりして。

「ふふ、花ちゃん可愛い」

 スージーさんが優雅に微笑みながら、私がローテーブルにこぼしたココアを拭いてくれる。

 拭いているその姿も優雅。
 大人の女性って雰囲気がする。

 スージーさんはテーブルを拭き終わると、持ってきていたモニターの商品の箱を開けた。
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