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初めてのキス
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私が身体を起こしてソファに座ると、右隣の空いたスペースに創一郎さんが座った。
……どうしてだろう、なんだか、創一郎さんに包まれたい。
彼の太腿をツンツンとつつくと、創一郎さんは少し驚いたように目を見開いたあと、ちょっと困ったように笑いながら両手を広げて「おいで」と言ってくれた。
こんなに人の膝に座りたいと思うなんて、やっぱり私、今まで人に甘えてこなかった反動がきてるのだろうか?
たぶん創一郎さんも、私のこと甘えたがりな子どもみたいだと思ってるんだろうなぁ。
膝にかけたブランケットと一緒に、創一郎さんのもとに潜り込んで座る。
創一郎さんが左腕で私の背中を軽く支えるような位置で体育座り。
これで彼の右腕が私の膝の裏を抱えたらお姫様抱っこだなぁ、なんて考えてしまいちょっと顔が熱くなった。
創一郎さんが、2枚目の書類を手にして目を通す。
「次は口紅、かな」
「創一郎さん、それグロスじゃないですか?」
「へえ、口紅とは違うんだ。その辺は説明を見てもあんまりよく分からないな」
創一郎さんの持つ書類に、他の字とは違う書体で書かれた、ひときわ目立つ一文があるのに気がついた。
「これ、キャッチフレーズとかですか? なんて書いてあるんでしょう?」
「『キスしたくなる唇』だって」
……き、きすしたくなる? そんな唇、あるの!?
私の下唇を親指でスッと撫でながら、いつになく真剣な表情で創一郎さんがこちらを見つめてくる。
「花は、キスしたこと、あるの?」
「キス……したこと……ない、です」
真剣な目に圧倒されて冗談で返事することもできず、思わす正直に答えると、創一郎さんはなんだか嬉しそうに微笑んだ。
うぅ、どうせ予想が当たったって、子ども扱いしてるんでしょう。
でも『キスしたくなる』かぁ……。
初めてのキスは、好きな人と……したい。
どうしても、好きな人とが、いい。
キュッと彼のシャツの襟を掴む。
「創一郎さん、本当にキスしたくなるのか……試してみません、か?」
創一郎さんは右手で私の髪を撫でた。
ドキドキするけど安心する、大好きな包まれる感じ。
「無理しなくて、いいよ」
違うの、無理してなんかない。
好きだから、あなたにして欲しいの。
でも……好きだなんて言ったら……それは、あなたを困らせちゃうだけだって……分かってる。
軽く私の頭をポンポンとして、彼の手は離れていった。
あ……離れちゃった。
くっついた分だけ、寂しさが湧いてくる。
「まあでも、試さない訳にはいかないか」
そう言って、彼はグロスのキャップを開けて右手に持つと、左手を私の左手に重ねて持ち上げた。
私の左人差し指にスーッとグロスを塗る。
あ、いい匂い。
さっきの香水と同じベリー系。
そしてあとからくる、不思議な香り。
「これ、味も甘いらしいよ」
創一郎さんはそう言いながら、二人の左手を重ねたまま口元に近づけた。
そのまま私の指に、フッと触れるだけのキスをして唇を離す。
「これだけじゃ、キスの味が分からないや。もう少ししてもいい?」
私が頷くと、彼は照れたように笑って、再び指に優しくキスをした。
今度はそのまま離れずに、ちぅ……と私の指を吸う。
「ひぁ?」
不思議な感覚に、お腹のあたりがムズムズした。
「大丈夫?」
チラ、と創一郎さんがこちらを見たりするから、その視線にまたムズムズしてしまったけれど、大丈夫ですというようにコクコクと頷く。
その様子を見て、創一郎さんはゆっくりと指に唇を重ねた。
指に重ねた唇をちゅくちゅくと動かしたあと、舌先でペロペロと擽るように舐める。
「ふッ」
私が息を呑むと、指を咥えたまま創一郎さんがチラと見たので、とりあえずコクコクと頷いてみる。
本当はお腹がジュクジュクしてきて、全然大丈夫じゃなかったけれど。
今度は私の人差し指が、指先から少しずつ、消えていくように創一郎さんの口の中へ入っていく。
指先が、ざらりとした彼の舌奥に触れた。
彼は私の指を軽く吸いながら、指に絡めるように舌を動かす。
「……ぁ……」
うわぁ、創一郎さんの舌……こんなにねっとりと動くなんて。
なんだか、不思議な気分に……なる。
指の付け根に、レロレロと舌を這わされた。
「ィ、ゃ……」
私の言葉に反応するように、創一郎さんがそっと唇を離す。
そして彼のシャツの裾で、自分の唾液をぬぐうように、私の指を優しく拭いてくれた。
あ……終わっちゃうの、かな。
寂しいと思っている、自分がいる。
「花、大丈夫? 嫌だった?」
そう聞かれて、嫌じゃないですと言いながら頭を横に振ると、創一郎さんは少し安心したような表情をした。
創一郎さんがローテーブルに置いたグロスを、今度は私が手に取って見つめる。
ガラスを通して見ても、その中身は瑞々しく艶めいているのが分かった。
「創一郎さん、このグロス、唇に塗ったところ、見てみたいです」
「リビングに鏡ないんだよな。そもそも鏡自体がほとんどないや。洗面所行ってつけてくる?」
創一郎さんの顎を左手で軽く押さえて、彼の目を見つめる。
「ううん、鏡が無くても、この唇に塗るから大丈夫です」
「……え?」
驚いて口を薄く開けた彼の下唇に、スーッとグロスをひいた。
ふわりと漂う甘い香り。
彼の薄くて美しい形の唇が、しっとりと濡れて艶めいている。
――キスしたくなる唇。
吸い込まれるように、彼の唇に自分の唇を重ねた。
あぁ、今、キスしてる……。
そんな感覚があとから追いかけてきた。
そっと唇を離すと、創一郎さんの熱っぽくほんの少し潤んだ瞳が、ちょっとだけ私を責めるように切ない感じで見つめてくる。
「今度いたずらしたら、やり返すって、俺、言ったよね」
逃れられないくらいにぎゅぅっと力を込めて、抱き締められた。
……どうしてだろう、なんだか、創一郎さんに包まれたい。
彼の太腿をツンツンとつつくと、創一郎さんは少し驚いたように目を見開いたあと、ちょっと困ったように笑いながら両手を広げて「おいで」と言ってくれた。
こんなに人の膝に座りたいと思うなんて、やっぱり私、今まで人に甘えてこなかった反動がきてるのだろうか?
たぶん創一郎さんも、私のこと甘えたがりな子どもみたいだと思ってるんだろうなぁ。
膝にかけたブランケットと一緒に、創一郎さんのもとに潜り込んで座る。
創一郎さんが左腕で私の背中を軽く支えるような位置で体育座り。
これで彼の右腕が私の膝の裏を抱えたらお姫様抱っこだなぁ、なんて考えてしまいちょっと顔が熱くなった。
創一郎さんが、2枚目の書類を手にして目を通す。
「次は口紅、かな」
「創一郎さん、それグロスじゃないですか?」
「へえ、口紅とは違うんだ。その辺は説明を見てもあんまりよく分からないな」
創一郎さんの持つ書類に、他の字とは違う書体で書かれた、ひときわ目立つ一文があるのに気がついた。
「これ、キャッチフレーズとかですか? なんて書いてあるんでしょう?」
「『キスしたくなる唇』だって」
……き、きすしたくなる? そんな唇、あるの!?
私の下唇を親指でスッと撫でながら、いつになく真剣な表情で創一郎さんがこちらを見つめてくる。
「花は、キスしたこと、あるの?」
「キス……したこと……ない、です」
真剣な目に圧倒されて冗談で返事することもできず、思わす正直に答えると、創一郎さんはなんだか嬉しそうに微笑んだ。
うぅ、どうせ予想が当たったって、子ども扱いしてるんでしょう。
でも『キスしたくなる』かぁ……。
初めてのキスは、好きな人と……したい。
どうしても、好きな人とが、いい。
キュッと彼のシャツの襟を掴む。
「創一郎さん、本当にキスしたくなるのか……試してみません、か?」
創一郎さんは右手で私の髪を撫でた。
ドキドキするけど安心する、大好きな包まれる感じ。
「無理しなくて、いいよ」
違うの、無理してなんかない。
好きだから、あなたにして欲しいの。
でも……好きだなんて言ったら……それは、あなたを困らせちゃうだけだって……分かってる。
軽く私の頭をポンポンとして、彼の手は離れていった。
あ……離れちゃった。
くっついた分だけ、寂しさが湧いてくる。
「まあでも、試さない訳にはいかないか」
そう言って、彼はグロスのキャップを開けて右手に持つと、左手を私の左手に重ねて持ち上げた。
私の左人差し指にスーッとグロスを塗る。
あ、いい匂い。
さっきの香水と同じベリー系。
そしてあとからくる、不思議な香り。
「これ、味も甘いらしいよ」
創一郎さんはそう言いながら、二人の左手を重ねたまま口元に近づけた。
そのまま私の指に、フッと触れるだけのキスをして唇を離す。
「これだけじゃ、キスの味が分からないや。もう少ししてもいい?」
私が頷くと、彼は照れたように笑って、再び指に優しくキスをした。
今度はそのまま離れずに、ちぅ……と私の指を吸う。
「ひぁ?」
不思議な感覚に、お腹のあたりがムズムズした。
「大丈夫?」
チラ、と創一郎さんがこちらを見たりするから、その視線にまたムズムズしてしまったけれど、大丈夫ですというようにコクコクと頷く。
その様子を見て、創一郎さんはゆっくりと指に唇を重ねた。
指に重ねた唇をちゅくちゅくと動かしたあと、舌先でペロペロと擽るように舐める。
「ふッ」
私が息を呑むと、指を咥えたまま創一郎さんがチラと見たので、とりあえずコクコクと頷いてみる。
本当はお腹がジュクジュクしてきて、全然大丈夫じゃなかったけれど。
今度は私の人差し指が、指先から少しずつ、消えていくように創一郎さんの口の中へ入っていく。
指先が、ざらりとした彼の舌奥に触れた。
彼は私の指を軽く吸いながら、指に絡めるように舌を動かす。
「……ぁ……」
うわぁ、創一郎さんの舌……こんなにねっとりと動くなんて。
なんだか、不思議な気分に……なる。
指の付け根に、レロレロと舌を這わされた。
「ィ、ゃ……」
私の言葉に反応するように、創一郎さんがそっと唇を離す。
そして彼のシャツの裾で、自分の唾液をぬぐうように、私の指を優しく拭いてくれた。
あ……終わっちゃうの、かな。
寂しいと思っている、自分がいる。
「花、大丈夫? 嫌だった?」
そう聞かれて、嫌じゃないですと言いながら頭を横に振ると、創一郎さんは少し安心したような表情をした。
創一郎さんがローテーブルに置いたグロスを、今度は私が手に取って見つめる。
ガラスを通して見ても、その中身は瑞々しく艶めいているのが分かった。
「創一郎さん、このグロス、唇に塗ったところ、見てみたいです」
「リビングに鏡ないんだよな。そもそも鏡自体がほとんどないや。洗面所行ってつけてくる?」
創一郎さんの顎を左手で軽く押さえて、彼の目を見つめる。
「ううん、鏡が無くても、この唇に塗るから大丈夫です」
「……え?」
驚いて口を薄く開けた彼の下唇に、スーッとグロスをひいた。
ふわりと漂う甘い香り。
彼の薄くて美しい形の唇が、しっとりと濡れて艶めいている。
――キスしたくなる唇。
吸い込まれるように、彼の唇に自分の唇を重ねた。
あぁ、今、キスしてる……。
そんな感覚があとから追いかけてきた。
そっと唇を離すと、創一郎さんの熱っぽくほんの少し潤んだ瞳が、ちょっとだけ私を責めるように切ない感じで見つめてくる。
「今度いたずらしたら、やり返すって、俺、言ったよね」
逃れられないくらいにぎゅぅっと力を込めて、抱き締められた。
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