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モニターの商品
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いったい私はどうしちゃったの?
気付いたら男の人の耳を、な、な、舐めてるなんて???
「花……」
創一郎さんは壊れ物を包むように、触れるか触れないかの強さでふわりと私を抱きしめた。
耳元で優しく名前を呼ばれて、胸の奥が熱くなる。
その熱で心臓まで、とろりと溶けていきそう。
「創一郎さん……」
「俺のこと、安全な男かどうかこれ以上試そうとしないで」
? 試さなくても、創一郎さんが安全、というか安心できる人だとは分かっています。
どちらかというと、自分でも行動が意味不明で私の方が危険です。
……あなたの耳を、舐めたりするなんて。
「今度いたずらしたら……やり返すよ」
本当に……どうしてあんな事しちゃったんだろう。
でも今度……ということは、今回の私の変な行動は、あなたに許してもらえるのでしょうか。
創一郎さんは私の肩にもたれて、はぁぁ、と大きなため息をつく。
やっぱり、呆れさせちゃったのかなぁ。
せめて何か、お役に立てるとよいのですが……。
ふと視線を動かすと、まだ未開封で伝票がついたままの箱が目に入った。
「そ、創一郎、さん。あの箱、まだ開けてないです」
「ん? あぁ」
創一郎さんはゆっくりと顔を上げて、私の視線の先にある箱の方を見る。
「それなら、たぶん前にお願いしたモニターの商品だと思う。金曜日に着くように送るって言ってたから」
あ、役に立てること、あった。よかった、嬉しい。
創一郎さんの膝からおりて、箱を取りに行き、今度は膝の上ではなく隣に座る。
箱の宛名は『相澤 創一郎様 花様』と連名。
なんだか夫婦みたいで、ドキンとした。
中身は……なにやらエレガントな雰囲気の花の形をした薄ピンクのガラスの小瓶、そしてスティック状の、グロス? あとは日本語でも英語でもない言葉で書かれた紙が数枚。
「これ、何の商品ですかね?」
「俺も何が送られてくるのかは知らないから、これを見ないと分からない」
創一郎さんは、私には読めない紙を箱から取り出してヒラヒラと振った。
「それって、何語でしょう?」
「フランス語。この紙は商品の説明と報告項目のレポート用紙みたいだな」
なるほど、創一郎さんならこれを見れば商品の概要がわかるのか。フランス語ができるなんてすごい。
「日本人女性向けの依頼なのに、説明もレポートもフランス語なんですか?」
「フランス支社で扱う新商品を試して欲しいって言われて、俺が担当者にフランス語だけでいいって伝えた。花は一人だと真面目にがんばりすぎそうだから、俺も一緒に手伝う」
え……。それって創一郎さん忙しいのに大変では。
「このモニターの案件はまだプロジェクトの前段階で、フランスで担当してた奴が勝手に調査してるだけだからそんなに気負わなくていいよ。そいつも今は俺の秘書だし、報告は俺からしておく。だから花は俺に感想を教えてくれればいい」
なんだか私、すごく楽な気がするけど、いいのかな。あまり役に立ってない気が……。
シュン……とした気分になっていたら、創一郎さんに頭をポンポンとされた。
「花がいてくれないとできない事だから、感謝してる、ありがとう」
……エスパーかと思うくらい、創一郎さんはいつも欲しい言葉をくれる。
「今回は、香水、と口紅みたいなものかな」
創一郎さん、たぶんそれはグロスだと思います。
スティック状の入れ物のフタに棒がついていて、その先にチップがついているタイプ。
ガラスの中に入ったローズピンクのジェルは、ガラスをとおして見てもその潤いが分かるくらい艶めいている。
紙を見ながら、創一郎さんがガラスの小瓶を手にとった。
「少なくとも1週間は毎日使用してから報告。使用品はそのまま提供するため返却不要、だって。まずは香水から試してみるか」
気付いたら男の人の耳を、な、な、舐めてるなんて???
「花……」
創一郎さんは壊れ物を包むように、触れるか触れないかの強さでふわりと私を抱きしめた。
耳元で優しく名前を呼ばれて、胸の奥が熱くなる。
その熱で心臓まで、とろりと溶けていきそう。
「創一郎さん……」
「俺のこと、安全な男かどうかこれ以上試そうとしないで」
? 試さなくても、創一郎さんが安全、というか安心できる人だとは分かっています。
どちらかというと、自分でも行動が意味不明で私の方が危険です。
……あなたの耳を、舐めたりするなんて。
「今度いたずらしたら……やり返すよ」
本当に……どうしてあんな事しちゃったんだろう。
でも今度……ということは、今回の私の変な行動は、あなたに許してもらえるのでしょうか。
創一郎さんは私の肩にもたれて、はぁぁ、と大きなため息をつく。
やっぱり、呆れさせちゃったのかなぁ。
せめて何か、お役に立てるとよいのですが……。
ふと視線を動かすと、まだ未開封で伝票がついたままの箱が目に入った。
「そ、創一郎、さん。あの箱、まだ開けてないです」
「ん? あぁ」
創一郎さんはゆっくりと顔を上げて、私の視線の先にある箱の方を見る。
「それなら、たぶん前にお願いしたモニターの商品だと思う。金曜日に着くように送るって言ってたから」
あ、役に立てること、あった。よかった、嬉しい。
創一郎さんの膝からおりて、箱を取りに行き、今度は膝の上ではなく隣に座る。
箱の宛名は『相澤 創一郎様 花様』と連名。
なんだか夫婦みたいで、ドキンとした。
中身は……なにやらエレガントな雰囲気の花の形をした薄ピンクのガラスの小瓶、そしてスティック状の、グロス? あとは日本語でも英語でもない言葉で書かれた紙が数枚。
「これ、何の商品ですかね?」
「俺も何が送られてくるのかは知らないから、これを見ないと分からない」
創一郎さんは、私には読めない紙を箱から取り出してヒラヒラと振った。
「それって、何語でしょう?」
「フランス語。この紙は商品の説明と報告項目のレポート用紙みたいだな」
なるほど、創一郎さんならこれを見れば商品の概要がわかるのか。フランス語ができるなんてすごい。
「日本人女性向けの依頼なのに、説明もレポートもフランス語なんですか?」
「フランス支社で扱う新商品を試して欲しいって言われて、俺が担当者にフランス語だけでいいって伝えた。花は一人だと真面目にがんばりすぎそうだから、俺も一緒に手伝う」
え……。それって創一郎さん忙しいのに大変では。
「このモニターの案件はまだプロジェクトの前段階で、フランスで担当してた奴が勝手に調査してるだけだからそんなに気負わなくていいよ。そいつも今は俺の秘書だし、報告は俺からしておく。だから花は俺に感想を教えてくれればいい」
なんだか私、すごく楽な気がするけど、いいのかな。あまり役に立ってない気が……。
シュン……とした気分になっていたら、創一郎さんに頭をポンポンとされた。
「花がいてくれないとできない事だから、感謝してる、ありがとう」
……エスパーかと思うくらい、創一郎さんはいつも欲しい言葉をくれる。
「今回は、香水、と口紅みたいなものかな」
創一郎さん、たぶんそれはグロスだと思います。
スティック状の入れ物のフタに棒がついていて、その先にチップがついているタイプ。
ガラスの中に入ったローズピンクのジェルは、ガラスをとおして見てもその潤いが分かるくらい艶めいている。
紙を見ながら、創一郎さんがガラスの小瓶を手にとった。
「少なくとも1週間は毎日使用してから報告。使用品はそのまま提供するため返却不要、だって。まずは香水から試してみるか」
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